第72話 お留守番を回避するまで!
今回はいろいろあって遅れてすみません!
「というわけで私のアルシノエ王国行きへ同行していただきたいのですが」
ルークとガブリエルの騒動のあと、昼過ぎ、俺たちは城内の皇帝陛下の部屋に呼ばれた。
なんだかんだ俺、初めて城の中に入ったし、皇帝陛下めちゃくちゃ可愛いし。
そんなくだらないこと(くだらなくない!)を考えつつ皇帝陛下、レイラの話を聞く。
ちなみにルナとはあの後、イヴの仲裁もあってなんとか誤解を解き仲直りをした。
「アルシノエ王国への皇帝陛下の護衛ですか? ですが、それなら私たちより近衛騎士団でも良いのではないのですか?」
ティアラはレイラに聞く。
確かに俺らよりも信頼がある近衛騎士団の方がいいように思える。
「ナタ達近衛騎士団には皇都の復興と治安維持の方に専念して欲しいのです。 そこで、この度大臣の悪事から皇都を守っていただいたあなた方にお願いしたいと思ったのですよ」
「ですが、皇帝陛下…」
「それとまだ慣れてないから昔のまま『レイちゃん』でいいのよ。 いえ、『レイちゃん』でお願い」
ティアラが何か再び言い返そうとするとレイラはティアラの元へ駆け寄り手をぎゅっと握り、俯いてそういう。
ティアラはレイラの思いを察し、わかったよ、レイちゃんと返し、レイラを抱き寄せる。
後からルナから聞いた話では二人は幼馴染みで大の親友らしい。
これも後から聞いた話なのだが、今回の事件でお父さんとお兄さんを亡くし、お母さんは無事だったのだが、心的ダメージが酷くレイラ一人が頑張らなくてはいけないという状況らしい。
俺らで役に立つなら協力してあげよう。
「ルナさん、イヴさん、そしてソウタさん。 この件に関してどうかお願いします」
レイラは俺たちに向き直り頭をさげる。
もちろん俺たちに断る理由はない。
「わかりました! 協力させていただきます!」
俺は快くレイラからの依頼に答える。
ルナもイヴも異存無さそうだ。
しかし、これに対して異議を唱える者がいた。
「待ってください、皇帝陛下! ティアラ殿、ルナ殿、イヴ殿が、同行するのは承知しました。 しかし、この男までついていくというのに私は反対です。 この男については役に立つとは思いません!」
ナタはレイラにそういう。
そういえば俺、この人からの評価やたらに低かったんだっけ?
「あの、ソウタさんはティアラ達のパーティのリーダーなのではないのですか? だったら…」
レイラが俺にオロオロと聞く。
しかし俺が答える前にナタが先に言う。
「この男はそのパーティの仲間のピンチにのんきに寝てるような男ですよ!? そのようなこと信用なりません」
「いや、あの時はいろいろあって…」
と慌ててティアラがフォローに入る。
なんだかんだ言い争いになり、最終的には
「それではソウタさんとナタで模擬戦を行い、ソウタさんが勝ったら私に同行、ナタが勝ったらソウタさんはお留守番これでどうでしょうか」
というレイラのシンプルな提案で解決した。
「なんなら降参してもいいんだぞ。 怪我をさせるのも忍びないからな」
俺らはこの国の騎士たちが使っている屋内道場に案内された。
めちゃくちゃなめられてるようなのでここいらで無能者とかいうのを撤回しないとな。
これ以上パーティのみんなに迷惑をかけるわけにはいかない!
「降参はしないですよ。 準備できました。 いつでもどうぞ」
「それでは模擬戦を開始します。 ルールはどちらか一方が降参するか戦闘不能になるまで。 剣は安全のため木の剣を使用。 また、相手に危害を加える魔法は使用不可です。 それではいいですか? 模擬戦、始め!」
レイラが審判をつとめることになった。
レイラはルールの確認をし、開始の合図をする。
俺は開始の合図とともに遠慮なしに先制攻撃を仕掛ける。
もちろん、ナタはそんな奇襲まがいの攻撃に対して動揺することなくそれを受ける。
俺は攻撃の手を休めることなく一撃、二撃と剣撃を加える。
「ソウタさん、すごいですね。 ナタとあそこまで互角に戦えるなんて」
レイラは二人の引いては押しての攻防に簡単の声をもらす。
「私も驚いています。 確か近衛騎士になるためにはかなりの実力がなくてはだめでしたよね」
「ええ、中でもナタは群を抜いて成績がよく、異例の若さで副団長になったくらいだから」
ティアラもソウタの急激な成長には驚かされていた。
互角のまま勝負が続くかと思われたが、やはりここ最近急激に伸びたソウタと幼い頃から地道に鍛練を重ねてきたナタとでは地力が違った。
一見ソウタが押してるように見えるのだが、ナタはいたって冷静な顔でソウタの剣撃をさばいている。 そして、ソウタの隙をつき的確に攻撃をするまさに無駄のない戦い方であった。 それに比べソウタの方はほとんど余裕はなさそうに見えた。
「はぁはぁ・・・」
「思ったより粘ったな。 誉めてやろう。 だが、お前の敗けだ」
あいつどんな体力してるんだ? こっちとら体力の限界だっていうのに!
試合のペースはだんだんとナタの方にいき、今度はこちらが防戦一方となる。
そういえば前にもこんなのあったな。
あのときは根性論で乗りきったけど、今回もそれか!?
だが、そうもいかず、ついに、
「あ!?」
ついに俺の木刀が弾かれ、俺の後ろ5メートルほどに落ちる。
俺は急いで拾いにいこうとするが、
『火炎玉』
ナタが魔法で作った火の玉で落ちてた俺の木刀を燃やしてしまう。
「『魔法で相手に危害を加えられない』だったな。 だが、今私が攻撃したのは落ちてた木刀だ。 これならルール違反じゃないだろ?」
こいつ性格最悪かよ!
俺はナタに背を向けた状態で立ち尽くす。
「勝負あったな。 大人しく降参・・・ な!?」
驚いたのはナタだけではない。 その場にいたルナたちやレイラも驚いていた。
トドメを刺すためにゆっくりと近づいてきたナタに対し俺は一気に懐に飛び込んだ。 木の短剣を手に!
そして鳩尾にそれを突き立てる。
「がはっ!!」
ナタは苦しそうな顔をして木刀を持っていた手が緩む。 俺はそれを逃さずサーニャ直伝の蹴りでそれを遠くへ飛ばす。
「逆に勝負あったな」
俺は短剣を持つ方と逆の手で今度は木刀を創り出し、手をつきむせこむナタに突き立てる。
「『相手に危害を加える魔法は使ってはならない』だったな。 だが、今俺がしたのは木刀を創り出すことだ。 これならルール違反じゃないだろ?」
俺は先ほどのナタの口調を真似していった。
ナタは悔しそうな表情を浮かべ、私の負けだと降参する。
「そこまで!」
審判であるレイラの声をかけ、試合が終了する。
どうやら1人お留守番という事態は回避したらしい。




