第65話 再びチャンスを得るまで!
「え? 死んだら戻れないの?」
キリに死んだと言われてもあまり驚かなかった。
自分の死んだとこは詳しくは覚えてはないが、徐々に意識を失ってく感覚からああ、死ぬんだなとは思ったからだ。
だが、こういうのって
おお、死んでしまうとは情けない。
と言いつつも何だかんだ生き返らせてくれるパターンのやつじゃないの!?
死んだら終わりってあんまりじゃありませんか?
「当たり前じゃろ。 どこの世界に死んでももう一度生き返るなんて人間がおるんじゃ? 死んだら終わりそんなものどこの世界も共通じゃ」
「聞いてないぞ! キリが『ゲームみたい世界に行ける』って言うからまぁ俺も面白半分できたよ? まさかの死んだら終わりな世界かよ!」
俺は頭を抱える。
「『ヒーローになれる』とは言ったが、別に『ゲームみたいな世界』とは言ってないぞ? その前に話していたモンクエに少年が勝手に引きずられたんじゃろ?」
と軽い感じで受け答えするキリ。
最初に確認しなかった俺も悪いが、何だか無情に腹が立つ。
「まぁ安心せい。 天国へ行けるのは確実じゃ。 私が推薦状書いておいたからの。 で、天国に行ったら私の権限ですぐにあの世界に転生させるから」
「はぁ? 何だよ結局生き返れるオチじゃねーか」
「まぁ赤ん坊からやり直しだがの。 日本風に言うなら少年は死んだけど来世でまたあの世界に生まれ変わって、赤ん坊からコツコツ修行し直して平和のために働いてもらうからの」
はぁ?
赤ん坊からやり直し?
「おいおい、どうせ生き返らせるなら、別に赤ん坊じゃなくてもいいだろ。 何でそこまで戻ってやり直さなくちゃいけないんだよ」
「だから、死んでる人間は生き返らせないと言ってるであろうが! 生まれ変わりじゃ。 それとも何か? 少年はそのままの状態で母親から生まれてくるのか?」
そのまま生き返らせろ!
赤ん坊からじゃないと無理!
という2人して平行線の言い合いが始まる。
終いには取っ組み合いの喧嘩が始まり、
「ぜぇ、はぁ、くそ、俺あれから強くなってるはずなんだけどなー」
「甘いな、少年。 私にたてつこうなど100万年早いわ!」
結果俺の完敗だった。
俺、そんな弱くはないと思うんだけどなー。
何だかんだこの世界に来てからの俺の女性に対する勝率が著しく悪い。
まぁ勝ったからなんだということなのだが、負けるのも悲しい。
「ともかくじゃ。 今天国行きの許可もらいに行ってるから大人しく赤ん坊からやり直せ」
「大人しくってもなぁー」
「男なら男らしくシャキッと… 何じゃ?」
キリが説教をするようにダラダラと言っていると古代ローマっぽい服装の男の人がゲートから出てきた。 そして何やら耳打ちする。
「なっ! それは本当か!? 」
と急に大声を上げるキリ。 古代ローマ風の男はそれに頷き肯定の意を示す。
「 わかった。 ご苦労じゃったな」
キリがそう声をかけると再びゲートを使いどこかへ行ってしまった。
俺は気になったのでキリに何の話をしていたのか聞く。
「さっき驚いていたみたいだけど何の話だったんだ?」
「ふむ。 少年、 どうやら天国へ行かなくてもよくなったぞ」
なんと!
本当は死んでなかったということなのか!?
それとも特例で生き返らせてくれるとかいうオチなのか!?
「え? マジで!? じゃあ生き返らせてくれるの!?」
「いや、代わりに地獄行きが決定した」
はぁ?
地獄?
「地獄ってなに! 俺なんだかんだ怖気づいたりしたけど真面目に世界救ってきたよ? そりゃあ殺生したら地獄行きってのは言うけど魔物はノーカンじゃない!? 勇者の扱いひどすぎるだろ!!」
「これが少年の異世界の物語の起承転結の結ならぬ起承転落の落ってな」
「ぶっとばすぞ!!!!」
ぶっとばされてしまった。
「こればっかりは私のせいではない! 私とてここまでシャレにならない嫌がらせはせんわ!」
今まで嫌がらせしてたっていう自覚はあったのか。
というか今はそこじゃない!
「 俺が地獄に落ちる原因とか聞いてないのかよ。 やっぱ魔物殺しまくったことが原因?」
俺はさっきよりボロボロになった満身創痍の身体でキリに聞いた。
「いや、魔物を殺したところで地獄にはいかない。 少年が天国に行けない理由は少年が人間じゃないから、らしい」
「そりゃあそうだろ。 俺は元々この世界の人間じゃないんだし。 でもそれが理由?」
「だから、私が推薦状を出したのじゃろ? 彼が異世界の人間で世界平和を手伝ってもらってますと。 しかしな、驚くなよ? 天界は少年を人間ではなく魔物だからダメと言ってきたのじゃ。 確かにどんな理由があれ魔物は天国には行くことができん」
「それじゃ何か? お前の手違いで実は俺はこの世界に魔物として連れてこられたってことか?」
「それはない。 そういう少年の方にここに来てから魔物になるようなことがあったとか心当たりは無いのか? 私とて四六時中、少年を監視してるわけではないからの」
「魔物になるなんて心当たりあるわけ…」
あ、そういえば魔物になったかどうかはわからないけどあれはどうなんだろう。
俺はふと思った。
心当たりがないわけではないが、俺は魔王幹部であるフーカと師弟関係にあるのだ。
もしかしたらそれで魔物認定されてしまったのかもしれない。
俺はそれをキリに話してみる。
「少年、正気か?なんで倒すべき魔王の仲間の下についているんじゃ? バカなのか?」
それを聞いてキリは呆れたようにいう。
「俺でもおかしいなとは思ってるよ! でもフーカや一応口悪いけどサーニャもなんだかんだ敵である俺の面倒見てくれたし、悪い奴らじゃないと思うんだよ」
「まぁなんでも良い。 究極的にはあの世界から争いごとが多発することがなくなれば良いのじゃからその結果が得られれば過程はどうでも良い。 しかし、それにしても、それだけじゃ魔物認定されないとおもうのじゃがの」
うーんと再び考え込んでしまう。
神さまらしいのかなんなのか魔王を倒せと送り出しておいて今は平和になればなんでもいいという。
心が広いのかただそれらの対応が面倒くさいのか…
明らかに後者だな。
「まぁしょうがない。 少年こちらへ来い」
と手招きをして俺をベッドに座るキリの隣に来るように呼んだ。
誘われるがまま、横に座る。
するとキリは目を閉じ、顔を近づけてきた。
「なっ! なにやってんだよ!!」
俺は慌てて飛び去る。
「なにを顔を真っ赤にしておる。 少年の想像するようなことではない。 額を貸せ。 今から少年の記憶を覗くのに額と額をくっつけるから」
と再び隣に座るように言い、俺はそれに従い隣に座る。
そして再び顔を近づける。
キリは性格はともかく見た目はめちゃくちゃ美人に入る部類だ。
そんな女性が吐息も感じれるほど顔を近づけると人格うんぬん関係なく緊張する。
やっぱ男って単純だなー
額と額をくっつけてしばらくしたら、キリは俺の額から離れ、はぁとため息をつく。
「な、なんだよ。 その反応」
声は少し上ずったが俺はキリに聞いた。
「なるほどの。 いろいろとおかしいなと思ったところがあったのじゃが、それが一気に解決したわ。 まぁ贅沢を言えばなんとか回避して欲しかったとは思うが、こればっかりは少年を責められんしの」
と1人納得したように腕組みをしながらそう呟く。
「だからなんなんだよ。 教えてくれてもいいだろ?」
「ふむ。 じゃあ良い方と悪い方どちらから聞きたい?」
なぜかハリウッド映画にありがちなセリフで聞いてくるキリ。
「どっちでもいいよ」
「それじゃあいい方から言うぞ。 少年、お前はまだ死んではおらん。 いや、正確には一旦死んだが復活したと言った方が良いかの」
「どういうこと? 誰かが復活の呪文でもかけたのか? あ、でもさっきなかなか酷いやられ方したみたいなこと言ってたからそれはないのか? ん? さっぱりわからん」
「少年は胸に10センチくらいの風穴あけられたからの。 まぁ心臓を完全にはかいされたからのー。 蘇生魔法でも無理であろう。 だが、そうじゃない。 これは悪い話の方にも関わるんじゃが、少年、お前は魔物、というか吸血鬼になってるぞ」
吸血鬼!?
いや、いつそんなの!
全く心当たりがない…
いや、思い出した。
俺はこの世界に来たばっかりの頃に吸血鬼にあっている。
最強の吸血鬼であるルークに。
「いやいや! 俺、普通にニンニク料理とか食べてるし日光とか浴びてるよ? それに吸血衝動に駆られたことはないし! それにどのタイミングで吸血鬼にされたんだよ!」
「思いだせんか? 別れる前に噛まれただろう? あの時じゃ。 まぁいわゆる眷族というやつだろうが、少年の場合は何かあった時の保険というやつだろうな。 吸血鬼の不死身性を与えられておる。 とは言っても中途半端に眷族にしたから万能ではなしに、回復量を上げるだけのようだが、その前に吸収した植物の魔力の性質のおかげで、少年の身体が勝手に自己修復を始めたようじゃの。 まぁ偶然行った行動が奇跡的に組み合わさったということかの」
と今俺がどうなってるのかキリは説明してくれる。
よくわからないが、たまたま魔力切れたから植物の魔物の残骸から魔力を吸い取ったらそれが吸血鬼の能力に呼応して死んでるところからの超回復を成し遂げた、とそういうことらしい。
なんだかはいまいちわかんないが、あの変態吸血鬼と植物使いに感謝だな。
「まぁなにはともあれ今回は運が良かったがもう死ぬようなことがないようにな。 そうだ。 行く前に上の服を脱げ」
と俺にいうキリ。
またなんてことを言うんだと思ったが、抵抗したところでどうせ強制的に脱がされると思うので大人しく従った。
そしてキリは俺の背中に手を当てなにやら魔法を唱えた。
「もう服を着てもいいぞ。 少年」
「なにしたんだよ?」
「ここの世界に来る時に少年に施しておいた魔法を再び掛けただけだよ。 少年が死にそうになった時、ここに強制的に飛ばされるような魔法をの。 だが、あの魔王のとこの大食いの小娘が少年に教えた『魔力喰い』とかいう技で喰いやがった。 だから、お主は今回は死んでしまったわけなのだがの。 だからもう一度かけ直しておいた。 死ぬないよう気をつけろとは言ったが、そうもいかない時が来る時があるじゃろう。 だから、その時が来たら勇者らしく死ぬ気でやってこい」
そう言ってキリはゲートを開く。
「おう!」
俺はキリにそう答えゲートに飛び込んだ。




