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第63話 大臣を倒すまで!

相手はツタのお化け。 なんというんだろうか一言で表すならば少し古いが某有名な怪獣映画に出てくる植物の敵のようなと言えばわかりやすいだろうか、 唯一の違う点と言えば一番上のところに大きな花を咲かせているところくらいか。ともあれ、そんなラスボスクラスの敵と戦わなければいけなくなってしまった。


魔力はガブリエルから奪い取ったのである程度回復している。 だが、俺の持つ魔法でこいつは倒せないだろう。 つまり否が応でも接近戦で戦うしかないのだが、



「クッソ! ツタが邪魔して近づけない!」



ツタのお化けが操る触手のようなツタの腕が襲い来るのを切り落とすだけで一向にダメージを与えられないのである。 それに腕は切ったとしてもふたたび新しいのが生えてきてしまうのでなんの意味もない。



「ふふふ、あっはははははは、どうしたの私を倒すんじゃなかったの? ほらほらどんどん数が増えるわよ!」



ミリアが魔力を込めるとツタのお化けは咆哮を上げる。 そしてツタの数が先ほどの倍になった。 どうやらこの化け物魔力をずっと供給してないといけないみたいだな。 それを証拠にミリアは魔法陣に手を置いた状態のままだ。



俺は数の増えた向かいくる触手の腕をなんとか切り落としていくがだんだんと追いつかなくなってくる。



「ぐぁぁっ!」



ついには触手の先についている鋭い牙を持つ口に噛み付かれてしまった。




「なっ! こいつ!!」



俺は急いで噛み付いてきた触手を切り落とす。

今のは感覚でわかった。 この触手、俺の魔力を喰いやがった!



「気づいた? さぁあなたはどれくらいで乾涸びるのかしらね?」



と楽しそうにミリアがいう。 しかしその額には玉のように汗をかいている。

どうやらこいつを操るにも相当な魔力を使うみたいだ。

ということは別にこの化け物を倒さずともミリアの魔力切れを狙えば俺にも勝機がある。

勝ち方ではスマートではないが、俺の体力と魔力がそこを尽きるのが先か、ミリアの魔力が切れるのが先か、根比べである。

根性対決ならやってやら!

日本人舐めんなよ!







時間はどれくらい経っただろうか? 感覚としては小一時間経ったように感じる。

相変わらず触手による攻撃は激しいものだが、徐々に切られた部分の回復速度が落ちていることがわかる。 ミリアの方も息を切らし、限界寸前だ。 だが、俺の方もすでに筋肉は悲鳴をあげ、ちょっとの風で身体が吹き飛ばされてしまいそうなくらいだ。 頭では戦おうとしているが身体が言うことを聞かない。 すでに両者とも極限が近い。






が、突然ツタのお化けはグォォォォォっと言う咆哮を上げ、グチュグチュと腐り落ちるように崩れ去っていく。

みると、ミリアがうつ伏せに倒れていた。

どうやら先に限界を迎えたのはミリアの方であった。




「へへ、 俺の勝ち… だ…」




俺もここまでが限界であった。

刀を杖代わりにしないと経っていられないほどだ。



「とりあえずこいつをこの建物の警備の人に渡さないと。 そういえばこの建物の中の人あれだけ騒いだのに誰1人として出てこないんだが」




俺は崩れてドロドロになったツタの化け物のに手を突っ込む。 そして『魔力喰い』を発動させ、残っていた魔力を吸い取り歩ける程度に体力を回復させる。 ミリアの方は放っておいても魔力は切れてるし危険はないだろう。 そう思い、今いる建物のエントランスから人を呼ぶため建物の中へと進む。



「確かガブリエルが言うには、この建物には世界中の王様が集まって、会議をしてるんだったか? その割にはがらんとしてるな」




建物の中を少し見て回ったが人の影が見当たらない。

そして最後になった大会議室。 おそらくここで会議が諸王たちで会議が行わられているのだろう。

開けるのを少し躊躇ったが、緊急事態だし、勝手に入っても事情を説明すれば許してもらえるだろう。 俺はそう思い大きな両開きの扉を開く。

すると中は地獄絵図であった。






「なっ… なんだ、これ!?」





部屋は血の海とかしていた。

すでに事切れた警備の兵や諸王たちが転がる中、その血の海立つ少女がいるのである。

綺麗な長い金色の髪に透き通るような翡翠色の目、この特徴である程度その少女についてどんな人物か想像できたのだが、一番決定的だったのが、人のものとは明らかに違う長く、尖った耳。



「エルフ… だと… おい、これお前がやったのか!?」



少女は黙ったままだ。



「おい! 答えろよ! なんでこんなことを!!」



「…うるさい」




何が起こったか一瞬分からなかった。

気づいた時には俺の胸に穴が空いていたのだ。

少女はこちらへ指を刺すような仕草をしている。

なんだかは分からなかったが、おそらく魔法で攻撃したんだろうということは薄れゆく意識で理解した。

俺はそのまま床に倒れるが痛みも何も感じない。

そして目の前が真っ暗になった。






































「不覚です! まさかあの大臣がダミーだったなんて!」



ティアラはレイラのいる部屋を目指していた。

大臣室でティアラはこの皇都を恐怖へ叩き落としたミノタウルスの事件の黒幕だと突き止め、大臣を追い詰めたのだがそれはダミーで倒した途端、植物の塊となってしまったのだ。

そして、大臣の狙いがレイラだと気付き慌てて飛び出してきたのだ。









全力で走って、レイラの部屋いく。

すると、ティアラの目の前で部屋の扉が吹き飛ばされる。 そして一緒に吹き飛ばされ、よろよろと立ち上がるイヴの姿も見えた。




「イヴさん、大丈夫ですか!?」



「はい。 多少の損傷はありますが問題ありません」




「ティアラ殿も間に合ったか。 だが、今更1人増えたところで私は止められない」



ティアラは大臣の姿をみて驚愕した。

身体は一回り大きくなり、隆々とした筋肉に頭からはツノが生えている。

まるでその姿は今皇都を暴れまわっているミノタウルスのようであった。



「なんですか… あれは…」




「はい。 おそらく遺伝子操作の薬物の類です。 彼は自身の身体にミノタウルスの遺伝子情報を持った薬物を打ち込んであの姿になったのでしょう」



イヴは、再び構えつつ、ティアラに説明する。




「いでんし? なんですか、それ?」



「簡単に説明するのであれば、薬物を使って新たな生物に変化したということです。 おそらくあれは人工的に牛の化け物… ミノタウルスの遺伝子情報の因子を取り込んだ結果でしょう」




「さすがだな。 その通り、私はミノタウルスの因子を取り込んで最強の兵士となったのだ。 本来であれば量産化して、各国へ兵器として売るつもりだったのだが、高い確率で拒絶反応で打った人間は死ぬので、とても売れるようなものではなかったがな」



その言葉にティアラは静かにいう。



「そのために… どれだけ多くの人を犠牲にしたんですか…」



「知らないな。 死んだモルモットのことなど」



「あなたという人は命をなんだと思ってるんですか!!」



ティアラは怒りに任せてそう怒鳴り、大臣に向かっていく。




「はぁぁぁぁぁっ!」



一撃、一撃と大臣に打ち込んでいく。

一見ティアラの方が押してるように見えるが、強化された大臣にはあまりダメージを負わせられてなかった。



「はっはっはっは、その程度では通じぬわ!」



丸太のような大きな腕を振るい、ティアラを薙ぎ倒そうとするが、ギィィィィィンとその腕をイヴが止める。



「小賢しい!!」



大臣が、両手を床に着くと波状に衝撃はのようなものが2人を襲い、吹っ飛ばされてしまう。



「素晴らしい力だ! お主らも何をやっても私に勝てないことがわかっただろう。 どうだ? 今なら降参を認めてやるぞ? 認めたらたっぷりとモルモットとして可愛がってやろう。 ふっはっはっはっは」




「…お断りです」



ティアラはゆっくりと立ち上がり、大臣に向かって言う。



「あなたのような、人の命をなんとも思わない人は政治家として… いえ、人として最悪です! 私はあなたのような人を絶対に許しません!!」



「お前らのような虫けら何匹集まろうと蹴散らしてくれるわ!」




大臣は大きな金棒を出現させ、2人に襲いかかろうとする。



「イヴさん、お願いします。 少しだけ時間稼げますか?」



「後の行動を考慮しないのであれば3分ほどなら可能です」



そう言ってイヴは大臣の攻撃を受け止める。 そして全身にありったけの魔力を込める。 すると、イヴの身体は神々しく輝き、元から戦闘モードで生えていた羽根に加えてもう一対の羽根が生える。 その状態のイヴは先ほどのように大臣の攻撃を受けても軽々とは飛ばされなかった。 むしろ、金棒を弾き大臣をよろけさせる。



「ふはは、まだそんな力を隠し持っていたのか」



「私の魔力、および身体能力にかけられている安全運用のための制限(リミッター)を外しました。 この状態であれば、あなたのパワーと互角に張りあえます。 この状態に名称はありませんが、言うなれば『制限解除(リミット・ブレイク)』と名付けるものかもしれません』」




「なるほど。 しかしそんな状態で、とても君の身体が持つとは思えないが? 廃棄処分(スクラップ)になりたいのかね?」



再び大臣がありったけのパワーを込め、イヴに向かってくる。 それをイヴは受け止め、激しい攻防を繰り広げている。



「この状態では3分も活動できないでしょう。 それを超えて活動すれば私の身体に重大なエラーが生じるでしょう。 しかし今現在それを考慮する必要はありません」



「それは3分もあれば私が十分だからです」



イヴの後ろ、大臣の意識から外れていたティアラの声であった。

ティアラは左手を前に出し、剣を矢のように、まるで弓を射るような構えをしている。



「『雀蜂流星(メテオ・ホーネット)』」



その技は一瞬だった。

気づいた時にはティアラの剣は大臣の心臓を貫いていた。



「ぐはっ! ばっバカな…」



「リューン家に伝わる奥義です。 精神を統一させ、ただ一点を突く。 この技なら女である私でもあなたの硬い皮膚を貫けます」



大臣はドサッとその場に崩れ落ちる。



「うっ!」



と、ティアラは痛みに肩を抑える。




「ティアラ様? 大丈夫ですか?」



「はい、 私は未熟なのであの高速での突きは身体に反動があるんです。 それに精神統一もするのも時間がかかりますし。 すみません。 イヴさんも私が遅いばかりに無理をかけてしまって」



「いえ、魔力残量はほぼなく、戦闘は不可能ですが、平時の自律行動には問題ありません」



「そうですか。 あ! レイちゃ… じゃありませんでした。 レイラ様のご無事を確認しないと!」



ティアラが気づいたように声を出し、部屋を出ようとするがその前に部屋の扉が開かれる。



「ふふ、昔のようにレイちゃんでもいいのに」



扉を開けて現れたのはそのレイラ本人であった。 さらにその後ろにはナタの姿がある。



「それは子どもの時の… それよりナタさん無事だったんですか!」



ティアラは羞恥で顔を真っ赤にするが、その後ろにいるナタに気付き、話を逸らす意味も込めてそう言った。



「ええ、不甲斐ない話でありますが、地下牢に閉じ込められ皇女殿下に助けてもらいました。 大臣はお二人が?」



「はい、 本当は生きて罪を償わせるのがいいと思ったのですが…」



とティアラは大臣の亡骸の方に目をやる。



「それは仕方ありません。 それよりお二人が無事でよかった。 さぁ、皇都の混乱の方も対応しないといけませんね。 ナタ? 大臣の件と皇都の件、お任せしてもいいですか?」



はっ!

とナタは複数の近衛兵を連れ、部屋の中の大臣はの亡骸を調べるための準備をし始める。



「さぁお二人は医務室へ案内します」



レイラはニコッと笑って2人を案内するのだった。













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