第62話 植物使いを追い詰めるまで!
「ようやく追いついたぜ! 」
俺は逃げた植物使いの女追い、ようやく追いついたのだった。女は大きなホールのような建物に逃げ込んだ。
「ねぇ? ここは見逃してくれないかしら。 私もここから大切な用があるの」
「どうせくだらないこと企んでるんだろ? 何を企んでいるんだ」
「ふふっ、 教えてあげたら見逃してくれるかしら? この建物には今世界各国の諸王が集まって会議をしてるのよ。 本当はそこにあの皇国のドラゴンを送り込んで『皇国が世界に宣戦布告した』と言う既成事実を作るつもりだったのだけど、飛んだ邪魔が入って計画は台無しだわ。 だから、代わりに私が皇国の使者になりすまし、代わりに宣戦布告してあげるわ」
こいつ、『戦争屋』の人間だったのか!
本当こいつら世界のあちこちでなんかやってるな。
「それを聞いたらますます逃すわけには行けないな!」
俺は剣を抜き、先手必勝、こちらから仕掛ける。
『戦争屋』の女は種をいくつか蒔く、すると蔓のようなものが生え、人型に纏まる。
そして、人型植物はブチっと根元から離れ、俺の攻撃を受け止めた。
「私をやるにはそいつらをどうにかしないといけないわよ?」
「せぇぁぁぁぁぁ!!!」
俺を囲うように襲いかかってきた人型植物をよくゲームとかで見る回転斬りで蹴散らす。 これも装備とフーカとの修行で上がった基礎力の賜物だ。
「悪いな、こっちも修羅場を何個もくぐってるんだ。 そのくらい余裕だぜ」
「あらあら、魔王軍の小娘どもやあのふざけた天使相手じゃないから楽かと思ったけど、あなたもやるのね。 名前聞いてもいいかしら?」
「ハヤカワソウタだ。 覚悟はいいか? 殺しはしないが少し痛い目見てもらうぞ」
「ハヤカワ… ソウタ… あなたが… ふふふ、あっはっはっはっはっは。 なるほど、どおりで強いはずだわ。 それなら私も本気を出さなきゃいけないわね」
と俺の名を聞いた『戦争屋』の女性が高笑いする。
なんか俺、人間側からはそんなじゃないけど、人間の敵からはよっぽど有名人らしい。
あんま嬉しくないなー。
そして、彼女は再び10体ほど人型植物を出し、襲わせる。
「だから、効かないって、言ってるだろう!」
俺は襲いかかってくる人型植物をバッサバッサ切っていく。
「私の名前はミリア。 『予言の異世界人』であるあなたをここで葬る者の名よ。 全ては我が主人の野望のため! 『腐敗した花園』」
両手をバンッと床に着くと魔法陣が現れ、大きな蔓のが勢いよく生えてきた。
先ほどの人形植物目くらましと時間稼ぎのもので、ミリアと名乗る女はいつの間にやら魔法陣と詠唱を終わらせていた。
一番上のところに大きな赤い花を咲かせ、その下には化け物らしい顔があり、そして無数の蔓をうねらせている。 それに蔓の先には恐ろしく鋭い牙を持った口が付いている。
どう考えてもラスボスクラスの魔物である。
要するに俺1人じゃどうにもならないであるということを即座に理解したということである。
街は騒然としていた。
突如現れた牛の化け物によって大混乱だった。 おそらくこれが皇都で噂になっている例の怪物だろう。 この街の兵士やギルドの冒険者立ちは化け物とあちらこちらで応戦しているが、皆苦戦しているようだ。
かくいうルナも現在交戦中である。
ちなみにルナはすでに他の冒険者たちと協力して2体倒しており、街の人の避難も誘導しつつ、傷ついた兵士や冒険者を治療しつつと八面六臂の活躍だった。 だが、いくら戦闘センスや魔法のセンスがあるルナでもすでにスタミナと魔力はそこをつきかけていた。
それにもかかわらず、敵の数は依然として多いままだ。
「ハァハァ… 本当、どれだけいるの、こいつら?」
「ルナさん、 ギルドが臨時の冒険者たちの作戦本部と治療所になってますのでそこで一回休んだ方がいいですよ」
ルナと一緒に戦っている冒険者がそういう。 という彼も疲労がたまっているように見える。
「ここをある程度片付けたら、そうさせてもらうよ。 それよりこの近辺にまだ逃げ遅れた人がいないか探さないと。 ロイ、手伝ってくれる?」
ロイと呼ばれた冒険者はわかりました! と走り出していった。
「本当にやばくなったら、最悪…」
とルナは自分の鞄を触る。
「ルナさん! きてください!!」
先ほど駆け出していったばかりのロイの叫ぶ声が聞こえ、ルナはそちらの方に駆け寄る。
みると小さな男の子がいたのである。
「この子は逃げ遅れた子ね? 1人だけ?」
ルナの問いにロイは首を振る。
「わかりません」
「そっか。 とりあえず、この子をギルドまで連れて行こう。 あと他にもここらへんに逃げ遅れた人がいるかもしれないから探索するのに増援を呼ばないと」
「そうですね。 では一度ギルドに戻りましょう!」
ルナは男の子の手を引いてロイのあとに続こうとするが逆に男の子に手を引っ張られる。
「? どうしたの? ここは危ないからおねーちゃんたちと逃げよ?」
ルナは優しく声をかける。
すると男の子は今にも泣きそうな顔で震えた声で答える。
「あのね、 しすたーが、 みんなが、 牛の化け物に襲われて、 ぼく、 だれか助けを呼びにきたの、 みんな、教会の地下に隠れてるから、たすけてって」
「教会? ここら辺の教会ってどこかしってる?」
ルナはロイに聞くと
「あ、はい。 現在いるのが中央区の隣の東区の住宅街なのですが、ここからもう少し道なりに行ったところに小さな教会があって、確か孤児院も併設されていたはずです。 おそらくこの子はそこの子かと」
ロイは持っていた地図を広げ、説明する。
ルナはギュとルナの手を握る男の子に目線を合わせるようにしゃがみ語りかけるようにいう。
「大丈夫、おねーちゃんがみんな助けに行くから。 だから今はこのおにーちゃんついていって」
「え、 まさか、 ルナさん!?」
「それじゃあロイはこの子を連れてギルドまで連れて行って。 あとここに増援の要請を」
「1人では危険すぎます! 今のルナさんは体力も魔力も限界近いんですよ?」
そう、本気で心配するロイにルナはニコッと笑いかける。
「大丈夫だよ。 それに一刻も早く助けを待ってる孤児院の子達を安心させない。 それにうちのリーダーなら間違いなくこういう状況で駆け出して行くからね。 私も同じパーティーのメンバーとして見捨てるわけにはいかないし。 それじゃあその子よろしくね」
と行ってルナは駆け出していってしまった。
「まさかこちらに先回りされてるとはね」
剣を持つ大臣の前にイヴが立ちはだかる。
「敵の思考、およびそこからいたる行動を推測すれば簡単なことです」
大臣とイヴは今レイラの部屋にいた。
「なるほど、皇女殿下を逃し、自分は囮として残る… さすがベルンの街の技術の結晶、間抜けな罠に引っかかる田舎者の次期当主はわけが違うというわけか」
イヴは両手を剣に変え、戦闘モードとなる。
「油断はしません。 全力で排除します」
大臣はそれを聞くとニヤリと笑い、自分の腕に注射を打った。




