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第59話 それぞれで証拠を見つけるまで!

「今日は何か成果があればいいんですが」



ティアラは城の資料館に来ていた。 そこで大臣の部屋に行く前にここ最近の大臣の行動を調べようというのだ。

この国の高官はその行動を書類にまとめて国に提出する義務がある。 なのでその資料が収められている資料館の閲覧禁止のところに行けば読めるのだ。

ただ、その閲覧禁止の部屋に入れるのは皇族から許可をもらった一部の人間しか入れないのだが、ティアラは忘れがちだが、一つの地方を預かる領主の娘で、その領の次期当主候補である。 なのでレイラの口添えと己の身分さえあれば、言葉通り赤子の手をひねるようなのだ。




「うーん、やっぱ国に報告することですから怪しいことは書いてませんね…。 本人に聞くのが一番なんでしょうけど、もし悪いことしていたら正直に話すわけもありませんし、悪いことをしていなければ不用意に不違ったりしたらお父様に迷惑を掛けかねないですし… 難しいところですね。 ん? これは…」



書類を元の棚に戻そうとした時、隣にあった資料に目が止まる。

この国に来てからティアラたちが(ソウタは除いてだが)いろいろ世話になっているナタのものであった。



「そういえば、ナタさんも近衛騎士団の副団長という身分でしたね。 勝手に見るのも気が引けますが…」



その資料を手に取り、目を通す。




「えっ! これは!!」



ティアラはその資料を食い入るようにみた。

そして、何か確信したような表情になり、



「そうでしたか… しかし、この日付からするとナタさんはもう実行に移したんでしょうけど、今朝から城の様子は変わりなかった…。 あまり想像をしたくないですが、行きましょう。 近衛騎士団の詰所へ」





























ティアラが資料館で資料を漁っているその頃、イヴは事件の対処をした兵士たちの元を訪れていた。



「なんだ、また嬢ちゃんたちかい? 何度きても、話せることなんてないよ」




と、厄介者のような扱いを受ける。

しかし、イヴは今日は一歩も引かない。




「いいえ、あなた方は知っています。 ただ話すのを躊躇っているだけです。 私は皇女殿下の命令でこの調査をしています。 私に隠し事をして情報の提供を拒絶すると言うならば、あなた方はこの国の法律の皇族への虚偽申告罪、また、怪物の件を隠しているので場合によっては国家転覆罪そうでなくても国家転覆共謀罪に当たる可能性があります。 ここであなた方が情報の開示を拒否するメリットはないと思われます。 それと私には人間の嘘は通用しません」



無機質に、まるで裁判官が犯罪者に罪を言うような口調で自分より何倍もある兵士たちに告げる。

兵士たちはお互いの顔を見合わせる。

その顔は明らかに動揺しており、そして何かに怯えているようにも見える。

そんな様子にイヴは再び口を開く。



「無論、ここで聞いたことは内密にしますし、誰が話したなどの情報の流通もしません。 それでもなお、情報の開示を拒否しますか?」




「ああ、わかったよ。 でも黙っていたことは皇女殿下には言わないでくれよ」




「承知しました」




兵士たちはついに折れて、怪物の件を話してくれた。 さらには最近の近衛騎士団の動きまで教えてくれた。




「ご協力感謝します」



そう言ってイヴは兵士たちの詰所を後にする。



「やはり、あの人が黒幕で間違いありませんね。 しかし、近衛騎士団がすでに先に動いていたとは予想外でした。 ですが、今朝城中は平常通りであったので恐らく失敗したのでしょう。 ここは私だけでは判断しかねますね。 ここはひとまず…」



イヴはケータイを取り出し、王宮にいるティアラへ連絡を取る。




「そちらの様子はどうですか? はい、近衛騎士の詰所ですか。 私も向かおうとしていました。 はい、そうです。 わかりました、私も大臣のところへ直接向かいます。 はい、では、後ほど」




と言ってケータイを切った。

そして、イヴは北の門の兵士の詰所から急いで城へ戻るのであった。





















「さてと、今日も今日とていっちょがんばりましょうかねっ」




ルナはそうつぶやいて、うーんっ、と背伸びをする。

ティアラとイヴの2人が合流しようと話し合っている頃、ルナは中央区の繁華街から少し路地に入ったところにある魔法道具屋に来ていた。



「これ、本当に使えるのかなー?」



ルナの手には何やら文字がたくさん書かれたハリセンを持っていた。

なぜこんなところでこんなものを持っているかというと今日の朝まで遡ることになる。














ルナは城を出る前、相手に使われた魔法を特定できる方法がないかベルンの街にいるミーナに連絡を取って聞いた。



『相手になんらかの魔法が使われていてそれを調べる方法かい?』




『そうそう! ミーナさん何かいい方法ないですか?』



『そうだねー。 それじゃあ『メアリーの魔法道具屋』てところへ行くといいよ。 皇都にある僕の行きつけの魔法道具屋なんだけど、珍しいものがいろいろ揃ってるんだ。 ちょっと道がわかりにくいところにあるけども今から説明するから何かメモするものあるかい?』




『ああ、ちょっと待ってください!』











ミーナから教えてもらった地図を頼りに、ルナはその『メアリーの魔法道具屋』を目指した。 中央区のメインストリートから路地に入り、右に左にまるで迷路のように進んでいくと路地の突き当たりにこじんまりとしたお店があった。




「ここかな…」




よく見るとドアには『Mary's Magic Shop』と書かれて小さな看板が吊るされていた。



「やっぱここか。 よし! すいませーん」



ルナは意を決してドアを開いて店の中に入っていった。

店の中はいろいろなものがごちゃごちゃしてお店というよりむしろ倉庫といった感じだ。

ルナが店に入ると奥から店主らしき人が出てくる。

格好は以下にも魔女やってます!っといった感じの紺色のローブを着ており、歳は20代半ばといった感じの女性だった。



「ルナちゃんね? 待ってたわよ。 私の名前は。 ようこそ、メアリーの魔法道具屋へ」



と笑顔で迎えてくれた。









「え!? なんで私のこと…」



「ふふふ、お店の経営がてら占いもやっていてね、私には近い未来のことはだいたいわかるのよ。 ルナちゃんはミーナの紹介で相手にかけられた魔法を解く道具を買いに来たんでしょ?」



メアリーはクスクスっと笑いながらルナの疑問に答える。



そして、カウンターの下から、ハリセンのようなものとなにやら薬のような液体が入った小さなビンを出す。




「ルナちゃんが欲しがってたものを用意しておいたわ。 このハリセンで頭を叩けば相手にかかった魔法は解けるわ。 それとこの魔法液はプレゼント」



「これ、なんの魔法液なんですか?」



「それはね、相手に悪意を持ってかけられた魔法を見抜けるようになる魔法を覚えられる魔法液よ。 今回もそうだけど、この先きっと役に立つと思うわ。 あと、これも何かあったらここに連絡して貰えばいいから」



となにやら文字と数字の組み合わされた紙を渡される。




「これ『ケータイ』のですか!? なんでメアリーさんが!?」



「このお店にも遺跡から発掘された通信機があるのよ。 もちろんルナちゃんの持ってるような小さいものじゃなくておっきなやつだけどね。 最初はただのガラクタかと思ったんだけど、前にミーナに使い方を聞いてね、私も自分なりに調整して使えるようにしたのよ。 私もミーナほどじゃないけど、魔法科学の知識は多少あるから」



メアリーはルナにそう答えにっこりと笑う。

ルナはハリセンのお代を払ってお礼を言う。そしてルナのケータイの番号を紙に書き、メアリーに渡し、店を出たのだった。















そして時は戻ってルナは路地を抜けメインストリートに出ていた。

ここから商人達の滞在しているところまでは歩いてすぐだ。




「それにしても… お金ほとんどなくなっちゃった…。 下世話な話だけどこれ終わったらレイラ様から報酬でないかな。 っと… ついたついた」




そんなことを考えているうちにルナは目的の宿にたどり着いた。

すると、中には荷支度をしている商隊の人たちの姿があった。




「ああ、あなたは昨日の。 すいませんね、お役に立てなくて。 これですか? 私たちは明日の船で次の街に出発しようと思ってるんですよ。 ところで今日はなんの御用ですかな?」



ルナは小声で魔法液を飲んで習得した魔法を早速使う。



悪魔探し(エクソシスト・アイ)




すると、商人の背後には何か濃紫色のもやがかかっているように見えた。

(やっぱり、この人たち悪い魔法をかけられてる)




「あの… えーっと… ごめんなさい!」



ルナはハリセンを振りかぶり、メアリーから教えてもらった相手にかかった魔法を解く呪文とともに商人の頭にハリセンを叩き込む。




『なんでやねん!』




パシーンッといい音がなり、商人の頭からは小さな種のようなものが転がり落ちた。



「あ、あれ? 私は一体…」



商人の人はなにが起こったかわかっていなかったが、そんな商人は置いておいてルナは種の方を踏み潰す。

するとサラサラっと黒い砂状になり消えてしまった。



「事情は後で説明します! 皆さんもお覚悟!!」



ルナは逃げ回る商隊の人たちに次々に『なんでやねん!』とハリセンを叩き込む。














「…なるほど。 そういうことだったんですか。 いや、私たちも何か心に突っかかるものがあるなとは思っていたんですが、ようやく思い出しました。 ありがとうございます。 私たちはこの街に来てから冒険者に助けてもらってばかりだ」




と、商隊の人たちはルナに礼をいい、怪物の件を話してくれた。




「なるほど。 あなた達は大臣が魔物の件を聞きたいと言ったので大臣の所へ行ったけど、そこで記憶をなくした、と。 その先の記憶は残ってないですか?」




「面目ない。 そこから先は思い出せそうにありません」



「そうですか… ありがとうございます。 参考になりました!」




ルナはそう言って商隊の人達が滞在している宿を後にする。




「これで怪物の件は前進したね。 一応、証拠として種も一個とっておいたし、とりあえず城に戻ってみんなと合流しようか。 あ、その前に」



とケータイを取り出し、電話をかける。




「あ、ソウタ? 今、皇都で騒ぎになってるデッカい牛みたいな巨人みたいな怪物倒したんだって? なんでもっと早く言ってくれなかったのよ!」




『ま、待て、ルナ! 事情は後で話すから! 今それどこじゃ、 あっぶね! 』



と、どうやらソウタの方は何か取り込み中のようだ。




「なに? また例の怪物と戦ってるの? あまり無茶は…」




『そんな甘いもんじゃねーよ! ドラゴンだ、 ドラゴン! クッソ、むちゃくちゃじゃねーか、あのブレス! ええ? 今切るってば! そう怒るなよ。 てなわけでこっちは取り込み中だから、切るぞ!』




と、一方的に切られてしまった。



「なんなよ、もう。 でも、なんか危なそうだったし、ソウタ探して助けに行かなきゃ」



すると再びルナのケータイが着信を知らせる。



『私よ。 メアリーよ。 ルナちゃん、すぐにお城に戻った方がいいわ。 あっちが大変なことになってるみたい』



「え! あ、でも…」




『大丈夫、ボーイフレンドの方は大丈夫だからルナちゃんはお城へ向かった方がいいわ』




「ぼ、ボーイフレンドまだじゃないですし!」



『ふふ、可愛い。 それじゃ無事を祈ってるわ』




そう言い残すと電話は切れてしまう。





「あーっ! もう!」





ルナは顔を真っ赤にしつつ、急いで城へ戻るのであった。









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