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第58話 フーカの仲間を知るまで!

「おい! どこへ行く!!」



サーニャの声を背中に俺とフーカは悲鳴の聞こえた方へ全力で走る。

すると、そこには、





グォォォォォ!!!




なんとこないだ倒したはずのミノタウルスが目をギラギラと輝かせながらいたのだ。




「なっ!? なんで、また!?」




「それはどうでもいい。 クロエが危ない」




フーカは手を前にかざし、何もない空間に薙刀を出現させる。

俺も訓練だが、一応持ってきていた勇者の剣を抜きミノタウルスへ向かう。

そして遅れてきたサーニャに



「サーニャ、悪いんだが、そこの女の人を頼む!」



「おい! なぜ私が人間の女を助けないと… ハヤカワソウタ! ちょっと待て!!」



俺とフーカは前と同じようにミノタウルスの金棒を避けながら相手に攻撃を与える。

さすがに2度目なので前よりは苦戦せず戦うことができたのだが、 相手は傷を負うとその傷口から炎がでて傷が一瞬でふさがってしまう。



「なんだ、こいつ? 前は氷使いだったよな? なんで今度は火なんだよ! しかも傷がみるみる回復してるし!」




「匂いでわかる。 こいつは前と同じやつ。 多分たくさん作られた中の一体」




たくさん作られた? そもそも作られたってなんだ?



「2人ともどけ!」




サーニャの声を後ろから聞いた俺たちはミノタウルスからバッと離れる。

すると、次の瞬間には目の前にサーニャの姿があり、ミノタウルスは木々をなぎ倒し吹っ飛ばされていた。




俺は何が起こったのかわからなかった。 そう、瞬きをする一瞬のうちにミノタウルスは吹っ飛ばされ、サーニャが俺たちの目の前にいるのだから…




「あれ? 全力じゃないの?」



とフーカは特に驚きもせずに、サーニャにきく。

するとサーニャはふぅと息を吐き、当たり前だろう、とフーカのデコにこつんと拳を当てる。




「え? 何今の? どうやって?」



俺がまだ驚いた様子でいると、フーカが説明してくれる。




「さっきのはサーニャの得意技。 ミノタウルスを殴っただけ。 サーニャは電撃魔法使いでその魔法を使ってものすごく早く動ける」




「ば、バカ者! 敵に味方の技を説明するやつがあるか!」



とフーカはサーニャに怒られた。

何一つはっきりとしないのだが、言いたいことはなんとなくわかった。 要するにフーカの『限りない食欲』みたいなことか。

それよりも




「フーカ、そのさっき言ってた作られたってなんなんだ?」




「誰の仕業か知らないけど、あいつは作られたやつ。 あんな魔物自然にいない」




誰かに作られた?

魔物って作れるものなのか?

と疑問に思っていると、なんと意外にもサーニャが説明を加えてくれる。



「貴様も覚えがあるだろう。 『人造天使』と要は一緒だ。 何者がなんの目的かわからないが、あの牛を魔法で作ったんだろうな。 だから同じような個体がいくらでもいる」




マジかよ…

あんなのがたくさんいるとか皇都おっかねっ!

ただ、誰がなんの目的であんなの作ってるんだろうか?

やはりベルンの街の時と同じような感じなんだろうか?

ベルンの街では一部の科学者たちがベルンの街とその領主に仕掛けたクーデターだったのだが、この皇都でも同じように考える人間がいるのかもしれない。

ということはルナたちが電話で皇女殿下から何か頼みごとをされたとか言ってたのはおそらくそっち絡みのことなんだろう。

俺も一応、勇者として働きたいとは思うが相手が相手である。 おとなしく知らないふりしてもいいだろう。 こんなの首突っ込むはいいが完全にやぶ蛇もいいとこである。




「いやー、危なっかしいものを作るやつもいるんだな。 でももう2体倒したんだし、俺たちも十分皇都の治安に貢献しただろう。 さぁあんな牛のことは忘れて、修行! 修行!」




俺は話の流れを変えるべく、わざとらしく声を大きくしていう。

しかし、ここで意に沿わぬというか、俺が持って行きたくはない方向に話を戻す人間がいた。

クロエである。




「聞けば聞くほど恐ろしい話です。 あの怪物がたくさん作られてるってことはどこかにミノタウルスの巣といか工場があるっていうことですよね。 私思い出したんですけど、ギルドで見かけた依頼書の中に確か皇国の方から怪物退治と同時にその怪物の巣や住処の発見、制圧もありました。 報酬は100万ゴルド。」



クロエは何も悪気はないんだろう。

しかし、この報酬100万ゴルド、日本円にして1億円という大金。

それにフーカが目の色を変えた。



「クロエ、 そのお金があればもっとご飯作れる?」



「え? あ、うん。 それはもう、食べれないくらい作れますよ」




その言葉に考え込むフーカ。

やばい、やな予感しかしない!



「ソウタ、次の修行決まった。 ミノタウルスの巣を駆除する」




思った通りの展開!!




「いやいやいやいや、フーカ、どう考えたって無理でしょ! だって俺たち2人ががりで苦戦してたじゃん! あんなのがうじゃうじゃいるとこなんて死にに行くようなもんだよ?」



「強い敵を倒してこそ、強くなる。 それにクロエだってミノタウルスいなくなった方がいいよね?」




「ええ、私は生まれも育ちも皇都なのでこの街が平和になってくれたら嬉しいですけど…」




嬉しいでしょうね!

でも、それ誰がやんの!?

答えは俺!

俺に死ねってか!?



もちろん、クロエは本当に自分の街の平和を願って行ったのだろう。

ただ、その結果それをこの場で言ったらどうなるか考えていないのだろう。

不幸の連鎖はコロコロどころか、ゴロゴロととんでもない方向に転がっており、完全に止められない。

そう思ってた時、この俺がフーカとミノタウルスの巣を強襲するという流れをサーニャが止めに入ってくれた。



「待て待て、この男が死ぬのは別にいいが、フーカは自分の仕事があるだろう。 そっちを優先すべきだ」



死んでもいいって…

まぁ魔王の幹部だし、その発言も当たり前ったら当たり前っだけども…

するとフーカは一歩も引かずにサーニャにたてつく。



「ご飯の他に優先すべきことはない。 それにフーカの友達のクロエが困ってる。 友達が困ってるならフーカは助ける。 それは今も昔も変わらない」



「フーカさん…!」




だきっと2人は熱い抱擁を交わす。 いや、フーカの目的はどう考えたってクロエの作るご飯だろ…

その言葉に反対するだろうと思ったサーニャなのだが、何か思うところがあるんだろうか、黙り込んでしまう。

そして、その沈黙の後、発する言葉にはこちらのあずかり知らぬ感情が詰まっているように感じた。




「今も昔もか…。 だが、お前もその先に私たちが行き着いた結果を味わっただろう。 それでもまだなお変わらないというのか?」




フーカはいつもの間延びした口調ではなく、強い意志のこもった口調でサーニャに答える。




「変わらない。 フーカの信じる『正義』はかわらない。 だから『笛』の力を使うのは間違ってる。 それはフーカたちが望んだ『世界』じゃない」



「それは『私たち』と… いや、『あの人』と敵対することになってもか?」



「それは嫌だ。 だけどフーカはフーカの『正義』を貫く。 それが『あの人』との約束だから」



その言葉にサーニャは再び黙り込んでしまう。 しかし、フーカの強い意志のこもった瞳から何か感じ取ったのか、 そうか、と息を漏らすようにいう。




「…正義を貫くか…。 フーカの意思はわかった。 今回は特別だ、私も協力する。 ただし、帰ったら死ぬほど働いてもらうからな! 行くぞ、ハヤカワソウタ!」




全く俺の意思は反映される余地はなく、それどころか完全に断ることのできない空気を作り出した3人。

ていうか、なんのことはさっぱりだったが、今のフーカカッコよかったな。

なんならこいつが勇者でいいんじゃないのかな?

俺はそう思いつつ、フーカの鼻を頼りに奴らの巣を探すのであった。


























時は遡り、ルナたちがお風呂で盛り上がっている頃、ランプの灯りのもとロベルタは自分の部屋で仕事の資料に目を通していた。

すると、コンコンと部屋のドアがノックされる。

彼は読んでいた資料を机に置き、ドアを叩いた相手に返事をする。



「入りたまえ」



「失礼します」




入ってきたのは自分の一回りも二回りも若い、女性騎士である。




「それで、話とはなんなのだ、 副団長?」




副団長と呼ばれた女性、近衛騎士のナタはピシッとした態度のまま男の問いに答える。




「ロベルタ卿、あなたのここ最近の行動を調べさせてもらいました。 そしてこの部屋にはこれを仕掛けさせてもらいました」




そう言って大臣室に飾られているツボの中からサザエの貝殻のようなものを取り出す。




「それは、『蓄音貝』か。 一定時間周りの音を残すことができるという… そんなものを私の部屋にしかけてタダで済むと思ってるのかね?」




「確かに1兵士の自分の身分でこんなことをしたら極刑も免れないでしょう。 しかし、昨日の兵士への聞き込み、そしてこの蓄音貝に残された音声、これを公表すればあなたもタダではいられなくなる」




バッと先ほどナタが入ってきた扉が開かれ、近衛騎士の面々が数人部屋に押し入ってきた。

そして皆、腰の剣にに手をかけている。




「ロベルタ卿、あなたを国家転覆罪の罪で拘束します!」



「ほぉう」





ロベルタはナタのその言葉に薄く笑うのであった。





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