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第52話 薬草を探しに行くまで!

「ええ!? いいいい、いんですか? あれですよ? 報酬本当に3ゴルドですよ!?」



「ああ、実は俺、今日しばらく特にやることなくてな。 その薬草探しとかいうの日帰りで帰ってこれるんだろ? だったら行ってやるよ。 なんか君見てたらかわいそうになってきたし」



「あ、ありがとうございます! は、はい、暗くなる前には帰ろうと思ってますので日帰りで帰ってこれます。 あ、私、クロエと申します。 お願いします!」



見た目は同い年くらいで、赤髪の女の子はクロエと名乗った。



「ソウタだ。よろしくクロエ」



「このまま行きたいところなのですが、私、準備し忘れてきちゃったので、一旦戻ります。 先にこの街の北の門のところ集合で!」




と、走ってギルドを出て行ったのだが、



「いった! あああ、 ごめんなさい! ごめんなさい!」



前を見ていなかったためかガタイの良い冒険者のおっさんにぶつかってしまい、平謝りしている。

俺はなんとも慌ただしいクロエの様子を見つつ、あることを思いだした。



「あ、北の門とかいうところにいく行き方聞くの忘れた」


















このミタリアの街は皇国の首都だけあってそこらの都市よりはるかにでかい。 街の端から端まで歩いただけでも丸一日以上かかってしまうのだ。 なのでこの街では街の特定の場所に移送用の魔法陣がありそこを使って町中を移動する。




ということをギルドの受付のお姉さんに教えてもらった。 ちなみにこのギルドは港の近くにあり、港にある転移魔法陣(トランスゲート)を使ってまず、中央駅(セントラルターミナル)というところに行き、そこから北の門へ転移魔法陣を使っていけるらしい。 ちなみにこの転移魔法陣というかワープ装置は国税で賄われているため使うのは無料だという。



「ありがとうございます。 それじゃあ」



「ええ、頑張ってね」



なんだろう? さっきの憐れみの目を向けられたんだろう…





とりあえず俺はお姉さんのいうとおり、まず港の方へ行き、ワープ装置がある建物にとりあえず向かう。

そこから中央駅(セントラルターミナル)を目指すのだが、転移魔法って確か着地に気をつけなきゃいけないんだっけ?



「それでは次の組の方お願いします」



何カ所かある転移魔法陣のところに並んで… というかわかりやすい例えで言うとエレベーターに乗るような感じで何人かで1組となり転送される。



俺の番が来て案内の人に従い魔法陣の中に立つ。

着地をしっかり、着地をしっかりっと心の中で唱えていると



「すみません、 次の転送が来るのでそこから早く退いてください」



と案内の人に注意される。

よく見てみるとそこは先ほどいた建物とは別の場所だった。




たくさんの人が行き交い、案内板でどこ行きの転移魔法陣がどこにあるのか矢印で示されておりさながら大きなターミナル駅のような感じだ。



つーか、ほんと一瞬で移動できるんだな。 それに着地も失敗しないし。 てか、さっきの田舎者丸出しだったなー




今更ながら羞恥の感情が込み上げてくるが、そんなことに構ってられない。 とりあえず北の門行きの転移魔法陣を探さないと

しかし、探すにしてもたくさんありすぎてどこに乗ったらいいのかわからない。 なので、俺は素直にその辺の係員の人を捕まえ、どれに乗ったらいいのか聞くことにした。



「すみません。 北の門へ行くにはどの転移魔法陣を使ったらいいですか?」




「北の門ですか? 14番ゲートになります」



俺は係りの人に礼を言って14番ゲートへ行き、そこから再び転送魔法陣で北の門へ飛んだ。












「さすがにもう失敗はしなかったな。 クロエはもう到着してるかな?」



俺は北の門の転移魔法陣がある建物から出て辺りを探してみる。 北の門は皇都の端っこだけあって港付近や中央部よりも人が閑散としている。



あの目立つ赤髪だだったらすぐに見つかると思うんだけどなー。

何か準備するとか言ってたし、もう少しかかるのかな。

俺はそう思いとりあえず建物の前でクロエを待ってみることにした。














「ご、ごめんなさい! 転移魔法陣で迷子になってしまって!」



そのあと結局1時間ほど経ってからクロエは来た。 なにやら大きなリュックを背負っており先ほどまでしてなかったメガネまでしている。



「まぁ、俺もあれはよくわかんないから仕方ない。 それじゃあ行こうか?」



最初は怒ってやろうかとも思ったが、頭ボサボサで涙目プラス上目遣いで見られたらそんな気にはなれなかった。 我ながら甘いなとは思ったが多分ガチで迷子になったんだな。 先ほどのギルドでの行動やギルドの人たちの反応を見るにおそらくこの娘は…




「そういえば、メガネさっきしてなかったな。 リュックはわかるんだが、それも薬草探しに必要な特別な者なのか?」




「え? ああ、い、いえ! 先ほどは、その、メガネを忘れてしまっていただけで、正直何もかもボヤけて見えるほどでした。 それにしてもいやー、助かりました。 ソウタさんが来るまで1週間くらいは通いつめてましたからね」




間違いない。 あえて言葉を濁して言うなら天然とかドジっ子、 そして率直に言うなら…




「でも、こうして薬草探しに行けて本当に良かったです! ん? どうしたんですか? 私の足元ばかり見… あ! 靴下左右で違うやつ履いてきちゃった!」



バカなのかもしれない…。





















「薬草探しに護衛が欲しいとか言っていたけどそんなに危険なの?」



俺とクロエは出発前なんだかんだゴタゴタしていたが、なんとか北の門をくぐり、皇都の外にある今回の目当ての薬草が取れる森を目指していた。



「そこまで危険というほどでもないんですが、ちょっと最近皇都の周りがその、物騒なので」



「魔物とか山賊が多いのか?」



「いえ、確かに多いんですが、なんというか、逆といいますか、最近魔物や山賊の変死体が多いんです。 国からも最近急増したので調査団を出したりしたんですが、結局成果なしで」



クロエは落ちかけたメガネをクイっとやって答える。

魔物や山賊の変死体?

実を言うとこの世界で魔物や山賊の死体というのは頻繁に見るようではないのだが、そこまで珍しい者でもない。 その辺はあまり外に出ないと言っていたクロエも分かってるらしいのだが、ふむ、そんな化け物出てきたところで俺にどうこうできるのだろうか。

なんだかだんだん不安になってきた。



とりあえずその得体の知れない化け物が出てこないことを祈りつつ、途中魔物に遭遇するもなんとか切り抜け、俺たちは目的の薬草が自生する場所へきた。



「ああ、これです! これ! ビクニソウ!」



その草は魚の尾のような形をしており、暗がりに置くと淡く白色に発光しているように見えた。

クロエは足元にあるその草を興奮したように摘み取ろうとするのだが、下を向いた途端、リュックが開いていたのかドバドバと中の者がいろいろ出てきてしまう。



「あわわわ! すいません! 手伝ってもらって!」



もちろんなんとなく予想できてた俺はすかさず拾うのを手伝った。

こういう風に何事も慣れて行くのか…

慣れって怖いな。



「この草そんなに珍しいのか?」



俺は話題を変える意味も込めてクロエに俺は聞いてみる。

荷物をしまい終えたクロエはポリポリと頬をかきながら答えてくれる。


「あ、はい。 でもまぁ、ここ最近はと言いますか。 このビクニソウは他の薬草と違って栽培が難しいんですよ。 だからいつもは行商の人に売ってもらうんですが、ここのところの怪事件のせいで誰も取りに行けずに市場に出回らなくて。 この薬草は結構万能でいろんな薬になるので結構必要なんですけどね」



「へぇー、そういえばクロエは普段なにやってるんだ? なんか薬草とか薬とかに詳しそうだけど」



「あ、私ですか? 私は宮廷専属の薬師をやっています」



マジか! 全然イメージわかねー!

先ほどまでの行動からは全く想像できねー!




「あ! 信じてませんね、その顔!? た、確かにミスは多いですけど薬の知識に関しては誰にも負けないんですから!」



どうやら一点特化型のバカだったらしい。



雑談はこんな感じに俺はクロエの薬草取りを手伝うことにし、手分けをして摘み取ることにした。

ちなみにクロエはその他にも薬になるキノコや花、木の実なども一緒に詰んでるみたいだが、俺にはさっぱりなのでそのビクニソウとかいうのだけを摘んでいった。







持っていたカゴいっぱいにビクニソウが溜まったのでそろそろクロエと合流しようかとふと辺りを見渡した時、木々の向こうの少し開けた場所に人が倒れてるのを見つけた。


















「おい! 大丈夫か!? 返事しろって!」



倒れていたのはピンク色の髪をしたイヴと同じくらいの女の子だった。

女の子は返事もしないと思ったら、




ギュルギュルギュル〜




と大きなお腹の音がなった。



「ソウタさん、大声あげてどうした… ひっ! 死体!」



「いや、クロエ。 こいつは死んでない」



驚くクロエに俺は呆れ顔でそういう。



「え?」




「おーい、起きろー。 大丈夫かー?」




俺は先ほどより緊張のない声で女の子に声をかける。



しばらく無言だったが、むくりと起き上がって少女は口を開いた。



「…お腹が空いた」



「うん、わかってる」



俺はそう腹ペコ少女に答えた。








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