第45話 次の目的地が決まるまで!
「いや、 3日ぶりだね。 話はわかったよ。 とりあえず座りなよ。 イヴ、お客様にお茶を私はいつものでいいから」
俺らは次の日、ベルン領立魔法開発局に来ていた。
なんでそんな気難しいそうな場所に来ているかというと、
「ミーナさん、久しぶりです!」
「ルナの方は確かに久しぶりだな。 この前はソウタから話を聞く程度だったからなー。 それよりもソウタとはあの後も特に何もないそうじゃないか。 早くしないとイヴに奪われるぞ?」
「ミーナさん!!」
とルナとミーナは久しぶりの再会に話に花を咲かせている。
イヴはミーナの指示通り人数分の飲み物を取りにいった。
「あの人がミーナ・ウィルキンス… あの天才、『奇跡の錬金術士』の愛娘ですか」
「なかなか懐かしい 名前を知ってるもんだね。 次期当主さん」
ミーナの親父さん、そんな名前で呼ばれてたのか。
やってたことはブラックだが、すごい人だったんだろうな。
「まぁ本当はもっとゆっくり話てたいところだが、今の僕は各方面で引っ張りだこでね、それじゃあ早速本題に入ろうか? とその前になんで僕の師匠の話を聞きたいか聞こうじゃないか?」
そう、電話の時はあった時話すといったので話を聞きたい訳を話す。
というか電話の時に驚いたのだが、よく電話の使い方わかってたな。
この世界にはないはずなんだけど?
「なるほど話はわかったよ。 つまり、このままだとお荷物になりかねない君らのパーティのリーダーを冒険者の『師弟制度』を使って一気に強くなりたいと。 で、同じように師匠に魔法を教わった私のところにきたと。 なるほどなるほど」
ミーナは回る椅子に座りクルクルと回りながらそういう。
…途中からこいつ話に飽きてなかったか?
「だから、いろいろ教えてほしいだけどダメか?」
「いや、構わないさ。 あの適当な男のことくらい好きなだけ教えてあげるよ。 確かに僕もアザゼルと『師弟制度』を使ったしね」
「ミーナさんの師匠ってどんな人なの?」
「ものすごい変わり者でね。 元天使だっていうのに冒険者やってて、魔術士としての腕は一級品だけど、適当な男さ。 で知ってどうするんだ? 言っておくが僕は今アザゼルがどこにいるのか知らないよ? 本当に適当なやつだよ」
そう言って椅子をクルクルするのをやめてイヴにオレンジジュースのおかわりを頼む。
「別にお前のお師匠を紹介してくれとは言わないよ。 ただレベル100以上の冒険者がどこかにいるって話を知らないか?」
「レベル100以上の冒険者ねー。 君はここに来て日が浅いみたいだから知らないと思うが、5年くらいまえに魔王軍と大規模な戦争があったんだよ。 そこの2人は知ってるだろ? 一応皇国の発表では勝ったとはいってるが、結果はそうだろうが、戦略的には大敗と言ってもいいくらい多くの精鋭が戦死したんだよ。 レベル100以上の冒険者も含めてね。 だからいるとしても相当少ないだろうと思うよ」
イヴがおかわりのオレンジジュースを持ってきてそれを飲みながらいう。
そうだったのか。
やっぱり地道にレベル上げしてくしかないのかな。
「お役に立てなくて申し訳ないね。 ただ皇都に行けばもしかしたらいるかもね」
とミーナはいう。
「皇都? でも確か船は出せないって…」
ルナがミーナにそういう。
確かに前にスイーンの街を訪れた時そう告げられたのだ。
だから陸路で皇都を目指していたのが最初の目的。 まぁ今はまた違うものになってるけど…
でも、この国の首都に行けば『戦争屋』の情報も何かつかめるかもしれないからいいか。
「キーナから連絡が入ったのさ。 海路の問題は解決したんだって」
ミーナは部屋の隅に置かれている大きな機械を指差しながらそういう。
「君の持つ『すまほ』だったかな。 と連絡を取っていたのはこれだよ。 遺跡から掘り出してきたものを改造して使ってる。 もちろんこれはスイーンの私の街にもあるんだよ」
なるほど。だが、なんか昔の戦隊物に出てきそうな大きな機械だな。そもそもなんでこんなものが遺跡に?
ちなみにルナはその機械に張り付いている。
そんなの張り付くように見て楽しいのかね?
「それでは次は皇都を目指すのですか? それでもここから皇都を目指すには山越えの方が早いのでは?」
「ああ、そうなのか? じゃあ一旦ランダスに戻って山を越えたほうがいいのか?」
俺とティアラがこれからどうするか話しているとミーナがポンッと自分の胸を叩き、
「ソウタは楽がしたいんだろ? 任せてよ、とっておきを用意してあるから」
と俺たちを別の部屋へ案内する。
「これって、転移魔法陣ですか?!?」
「そうだよ。 ティアラ・アルダウル・リューン。 僕は一応『奇跡の錬金術士』の娘で天使を師にもつ人間だ。 ゲートの魔法のようにポンポン打てるわけではないがこれくらいのことはできるさ」
俺らは同じ研究所内にあるなにやら大きな魔法陣の描かれた部屋に案内された。 どうやらこれが転送用の魔法陣らしい。
ティアラは相当驚いているようだが、そんなに珍しいものなのか?
「ミーナさん、すごいよ! 転送魔法なんて超上級魔法じゃん! あれ? でもこれあれば皇都まで行けるんじゃない?」
ルナが言うのも最もだ。
するとここに来てあまり喋ってなかったイヴが解説してくれる。
「いいえ。 これはスイーンの街とベルンの街をつなぐ専用の術式です。 皇都に行くにはまたそれ専用の魔法陣が必要となり、それを作るのにかなりの時間を要してしまいます」
「というわけだ。 まぁみんな準備があるだろ? 明日は忙しいから時間とれないけど明後日の夜なら時間が取れる。 その時にもう一度おいで」
「わかった! サンキューなミーナ!」
こうして俺らは研究所を後にし、明後日に備えて街で買い物することにした。
「礼儀を知らん小娘の次は貴様か。 『笛』ならないぞ。 シスター・セリアにも聞いたがこの街にあったことには間違いないがかれこれ300年前のことらしい」
「それがほんとだという証拠は?」
「お前も気配でわかるだろ。 そんなものがあったら我がこの街に来ていた時にとっくに処分してる。 麗しい女性を消されるわけには行けないからな」
「はぁ… 全くなんでお前みたいなんが元魔王なんや? もっと貫禄あるようにしよう! とか思わへんの?」
「思わんな。全くと言っていいほど」
ポルタの町外れの寂れた墓場、その墓場にある秘密部屋に元魔王で現在は変態紳士として勤しんでいるルークとおかしな言語を話す魔王軍幹部のエスタの姿があった。
肩書きだけを見ればこの街1つ滅ぼすのに十分すぎる戦力がいるのだが、2人からはそんな気配は微塵も感じられない。
「それにしても訪ねてくるにももう少しやりようがあるだろうが。 魔力を抑えないで来るとは他の人間が死んでもおかしくないぞ?」
「うちは魔物やからな。 別に人が何人死のうが関係あらへんよ。 なんやここまで出張って空振りかー。 ほんま面倒な仕事押し付けてくれたわ」
やれやれと頭をボリボリとかくエスタ。
ルークもめんどくさそうに、
「用がないならさっさと帰ったらどうだ? お前の魔力が漏れ出さないように結界張ってるのも面倒なのだが」
「はいはい、そうさせてもらうわ。 あ、そういえばベルンの街であんたが贔屓にしてる少年にもおーたわ」
「知っている。 あの図体のデカい堅物天使に聞いた。 あいつも『笛』を探してたぞ」
はぁ、とエスタはため息をつきほんま面倒なことになったわーとつぶやいた。
「わかった。 教えてくれてありがとーな。 ほな」
と言ってゲートを開けエスタはいってしまった。
取り残されたルークはエスタが完全にいなくなったのを確認してから魔力が漏れ出さないようにしていた結界を解く。
そしてしばし考えたうち何かを思い立ったような顔をする。
「あの『笛』を元天界の天使や魔王軍が必死に探し回っているか… 仕方があるまい、世の麗しい女性のためだ。 久しぶりに働くとするか」
そうつぶやいてルークは街の方へ戻っていった。




