第38話 笛の場所を聞き出すまで!
「まぁおおまかにはこんなかんじかな。何か質問はあるかい?」
ガブリエルはそう聞いてくる。
とりあえずくわしいことはわからんがやることが増えたことだけはわかった。
まったく、派遣だからってこき使いすぎじゃね?
「その質問は僕からでもいいかい?」
とミーナが横からガブリエルにきく。
「もっちろん!ミーナちゃんでも全然かまわないよ!」
ガブリエルは楽しそうに答える。
「ならきくのだが、カマエルはなんで『戦争屋』なんかにいるんだい? 本人はその辺答えてくれなかったけど、彼はそもそも盲信者なんだろ? だったら天界を離れ単独行動してまでそいつらに協力するとは思えないんだけど」
とミーナはガブリエルに聞く。
盲信者?
なんでミーナはそんなことを知ってるんだ?
ここに来る前のルナやティアラは天使の存在はしらない、いや、実在せず空想のものだと思っていた。
それがこの世界の常識だとしたらミーナはどこでそんなはなしを…
「ああ、アザゼルから聞いたんだね。そうだよ。カマエルは神さまラブ♡だったんだよ。だから神さまが変わった頃に天界を出て行っちゃったんだー。 カマエルがなんで『戦争屋』にいるかは、うーん…ごめんね、、わかんないな」
ガブリエルはそう答えてくれる。
そもそもアザゼルって誰だ?
「アザゼルって誰みたいな顔してるねソウタ君。 アザゼルっていうのはね、 自由奔放で仕事もサボってばかりだったから天界から追放された天使なの」
「かつ僕の魔法や科学知識の師である人だよ。 だから僕はその怠け者から天使のことをいろいろ聞いていたから天使を見てもそこまで驚かなかったんだ」
ガブリエルの説明に付け加えるミーナ。
なるほど。 だから天使のこともある程度知っていたのか。
「そうか、理由はわからず仕舞いか。 ありがとう、ガブリエル」
ミーナはガブリエルに礼を言うとガブリエルはえへへと笑い、
「どういたしまして! それじゃあ伝言も伝えたし私は帰るね! ソウタ君、ミーナちゃん、まったね〜」
といいゲートを開いて帰ってしまった。
「さて上に戻ろうか」
とミーナはイヴをよっこらせとおんぶする。
「おい、ここでしかイヴを治すことができないんじゃなかったのかよ」
俺は上に向かおうとするミーナを呼び止める。
「ここはお前たちが派手に暴れたせいでボロボロだから使い物にならないよ。 だから、この街の郊外にある僕が昔使っていた研究施設を使うよ」
「ああ、あの廃墟か…」
と俺が知っているように言うとミーナは意外そうな顔をして、
「知っているのか? あそこを」
「実はここに来る前さっきの魔王幹部のベンケイと一悶着あってな、『逃走』で脱出したんだよ。で、偶然飛ばされたのがその施設でそこでイヴとあったんだ」
俺はここに来るまでの経緯をミーナに話す。
するとミーナは
「なるほどね、『あのネタ魔法』を使って役に立たなかったから『逃走』で逃げたとソウタもいろいろ大変だったんだね」
とミーナは1人納得したような顔になる。
あれ? 俺、『後は野となれ山となれ』使ったって言ったけ?
正確にはベンケイに使ったんじゃないんだけど
「なんで知ってるか不思議そうな顔をしているね? なんでか考えてみるがいいよ」
と笑いながら歩みを進める。
ん? そういえば俺はあの時あの魔法で…
まさか!!!!
「あのー、ミーナさん。 あれはわざとじゃないんです。 たまたまのまぐれでこうなってしまって…」
「君の変態ぶりには関心させられるばかりだよ。 やっぱりロリコン趣味があるのかい?」
誤解です!!
完全なる!!!
そんな様子を見て軽快に笑うミーナ。
俺は地上に戻ったミーナが、言いふらさないか見張るはめになってしまった。
「やれやれ、口ばかりとはこのことだな、小娘」
そろそろ時期的に夏に入り始めこの頃は暑くなり始めてきたであろうに暑苦しいマントに燕尾服姿の男が目の前のおかっぱの赤目の少女にそういう。
赤目の少女には額から今沈もうとする夕日にも負けないくらい真っ赤な血を垂らしている。 服もあちこちボロボロでこちらも血がにじんでいた。
「くそ、私がこんな奴に…」
息を切らし悔しそうにする少女。
そんな少女に男は
「もう陽も暮れた。 ここからは我の時間である。 今日のところは大人しく帰れ」
「くっ、やられっぱなしで帰れるわけないでしょ!」
少女は禍々しく湾曲した剣を再び男の方に向ける。
少女は焦っていた。 今まで色々なやつと戦っていきたがここまで圧倒された事がなかったから。
男のほうもやれやれといった表情で剣を構える。
すると少女の後ろにゲートが開き中から背の高い男が出てくる。
「なにをやってるんだ、カーリー。 任務の方はどうした」
「うるさいわね! カマエル! 今やってるとこでしょ!?」
カーリーはカマエルと呼ばれる男に怒鳴る。
カマエルはカーリーが相手をしている男を見て、なぜカーリーが手こずっているか理解する。
「はぁ、今日は異世界の少年だったり、魔王のとこの小娘だったり、元同僚だったりよく邪魔が入る。 最後にはお前か、元魔王」
「邪魔とは失敬な。 我は我の愛するシスター・セリアを守るために戦っているのだぞ? それに仕掛けてきたのはそこの小娘だ」
元魔王と呼ばれた男はそう抗議する。
「あんたがとっとと『終末の笛』をよこせばこんなことにならなかったでしょ! 変態吸血鬼!!」
と怒鳴るカーリー。
だが、そんな変態吸血鬼ことルークはカーリーを無視して続ける。
「ほう、お主ソウタにあったのか?」
「会いたくはなかったがな。 それよりもだ元魔王。 カーリーが働いた狼藉は謝罪しよう。 であるからあの教会に眠るという『終末の笛』を我々に譲ってはもらえぬか?」
とカマエルはルークに頼む。
しかしルークは、ははっと笑いながら答える。
「残念だが元天界のものよ、ここにその笛はもうないぞ。 嘘ではない。 我がこの街に来た時には全く気配がなかったのだ」
「カマエル!? こいつ絶対嘘ついてる! ボコボコにして聞き出してやるんだから!!」
そう言って再びルークに向かおうとするカーリーをつかんで止める。
「待て。 この男が私たちに嘘を吐くデメリットがない。 そもそもこの男はどちらかといえば我々側なのだからな」
とカマエルはいう。
「そちら側がどちら側かわからないが邪魔さえしなければ我もお主達の邪魔はしない。 私は美しい女性に囲まれて生活したいだけなのだからな」
と胸を張り答えるルークに特にツッコミもせずゲートを開いてカーリーを引きずり、カマエルは去ってしまう。
「やれやれ騒がしい連中だった。 そういえばあの笛はどこにあるんだろうな」
ルークは腕を組み考え、
「ふむ、調べてみるのも良さそうだな。 そういえばシスター・セリアは知ってるんだろうか、あの笛?」
ルークはとりあえずシスター・セリアがそろそろ帰ってくるであろう教会へ戻るのであった。




