第33話 機械仕掛けの少女に出会うまで!
俺はイヴの道案内であの廃墟から1番近い街を目指していた。
「すげーな。 なんつーかさすが天使というか、まぁ戦ってる姿は天使というか鬼なんだけでも」
「私の性能上あの程度の魔物は問題ありません。 現状マスターであるソウタ様をお守りするのが私の役割ですから」
なんというかイヴは俺が剣を抜く前に俺らを襲おうとする魔物を瞬殺する。どういう原理になってるのかは知らないが腕が肘の少し下から刃物に変わり、襲い来る敵を切り裂いていく。そして戦闘が終わり傷ついたら回復呪文も唱えず傷が自己修復する。 さすが家事手伝いだけでなく戦闘兵器としても使えるように造られただけはある。
てか、ハイスペックすぎて引く。
「では、気を取り直していきましょう。 ソウタ様」
そう言ってずんずんと進むイヴ。
体力まで化け物かよ。
こうして来る敵を蹴散らして(イヴが)俺たちは半日ほどかけて街に着いた。
「これって… まさかベルンの街?」
「はい。 ここはラーマ皇国のベルン領の首都です」
俺の疑問に答えてくれるイヴ。
まぁわけのわからない街に飛ばされるよりかはマシか。
「とりあえず助かったよ。 ありがとうな、イヴ」
「いいえ、私は当然のことをしたまでです」
「じゃあ今度はイヴのマスターを探す番だな。 うーん、この街にいるんだろうか?」
そういえばイヴからそのマスターのこと何にも聞いてなかったな。とりあえずギルドへいく道すがら名前とか容姿の特徴とか聞いて、もしこの街にいるっぽかったらギルドの連中に聞き回ればみつかるかな。
俺は情報収集のためギルドへいく旨をイヴに伝え、イヴはそれに同意してくれる。
そしてギルドへの道すがら気になっていたイヴのマスターについて聞いた。
「探す前にイヴのマスターについて聞いておきたいんだけど教えてくれないかな?」
「はい。それについては構いません。 しかし、現状私のデータにあるマスターの外見及び身分に関する情報は古いデータのため参考にならない可能性があります」
「古い? 確かにイヴはあの廃墟みたいなとこにずっといたんだもんな。 イヴの持っているマスターの情報はどれくらい前の情報なんだ?」
「私がマスターに最後に接触してから10年と12日が経過してます。 ゆえにそれ以前のデータしかありません」
そうなのか。10年もメンテなしで放置されて起きたてであれだけあれだけ戦えるってすげーな。
でもどうせマスターっておっさんだろ?
なら10年そこいらじゃ見た目とか変わらんだろ。
「とりあえずそれでいいから教えてよ」
俺はイヴにそう伝えた。
イヴはそれに答えてくれる。
「私のマスターの戸籍上の氏名はミーナ・ウィルキンス。 現在生存しているとすれば年齢は21。 ラーマ皇国ベルン領所属の国家魔法科学者であり、ベルン領立魔法科学技術開発局、錬金術部副主任であった人物です」
待ってくれ。
ミーナ? その名前には聞き覚えがあるし、見た目はああだが本人や妹のキーナさんの言うことから推測して年もそのくらいだろう。
でも、後に続く肩書きが信じられない。
確かに学者っぽいことはしていたがあの適当そうなミーナがそんな偉そうな感じの人だったの?
それよりも、
「21ってじゃあイヴを造った時ってまだ10とかそのくらいだろ? ありえないだろ!」
俺が驚きを隠せずそういうとイヴは特にそれについて疑問も持たずに
「いいえ、事実です。 マスターは彼女の父親と一緒に6歳の時から研究に携わっていたようです。 当時は神童とまで呼ばれていたそうです。 私のデータは何か参考になりましたか?」
「参考になったといえばなったし、ならなかったといえばならなかったよ。 俺の知っているやつにも同じ名前のやつはいたけどそんな大層なやつには見えなかったから。 とりあえずギルドに着いたから中に入っていろいろ聞こう」
いろいろと混乱はしているが、話している内にギルドに着いたのでとりあえず中に入ることにした。
先陣を切ってギルドの扉を開けると
「あ、あなたは!」
扉を開けて第一声見覚えのある魔法使い姿の女の子が声をあげて駆け寄ってくる。
「探しましたよ! あ、実際さがいてたのは私ではないんですけど、探してました!」
興奮しているようで何を言ってるかわからなかったが俺を探してくれていたことはわかった。
「ああ、君! よかった、無事だったんだね! 僕も心配したんだよ」
と俺に近づいてくるのがもう1人、あの連合パーティの団長と呼ばれたスカしたやつだ。
他にもギルド内にいたメンツ、特に連合パーティにいた奴らが俺が帰ってきたことに安堵して声をかけてくる。
「あ、あのみなさん。 さっきからどうしたんですか? 俺は元気ですし全く問題ありませんよ?」
俺が戸惑っていると団長が俺に教えてくれた。
「君を探していたのは僕らもだけど1番頑張ってるのは君の仲間の2人だよ。あの後僕たちは洞窟の外に逃げたんだけどそしたら中から大きな音が聞こえてね。 びっくりして君の仲間の2人と一緒にあの広間に戻ったんだ。 そしたらそこには爆発した後だけで、誰もいなかったからね。 でもあの2人だけは君が絶対に生きてるって信じて夜も寝ずに探し回ってたんだよ。 いやーよかった、ほんとに!」
それであの後のことがなんとなくわかった。
確かにあの2人にすごく心配かけたな。
「私ルナさんとティアラさんを探してきます!」
そう言って魔法使い姿の女の子はギルドを飛び出していく。それに続いて連合パーティの面々も出て行く。
そして1番最後に残った団長も
「それじゃあ君はここにいてくれ。 僕もパーティの仲間とあの2人を探して呼びに行ってくるから」
と言ってでていってしまった。
「慕われているのですね。ソウタ様は」
と俺の隣にいたイヴがつぶやく。
「俺も驚きだよ」
俺は自分がここまで心配させててたとはと申し訳ないと思う反面、純粋に嬉しかった。
ギルドでしばらく待っているとルナとティアラがギルドのドアをつきやぶらん勢いで入ってきた。
「ソウタ! どこ行ってたの! バカっ!」
「ソウタさん、私、私は、」
と2人は泣きついてくる。
「2人とも心配かけてごめん。 俺も今まで自分がどこにいたのかわかんなくて連絡できなかった」
そして俺は2人が落ち着くのを待ってあの後ことを話した。
「そうだったんだね… でもほんとに心配したんだからね! 私たちがレオたちを上に連れて逃げて戻ろうとしたら、ボロボロのティアラが出てきて、中でどうなってるのか聞いたら大きな爆発があってそしたらそしたら!」
「私もすぐに戻ったらソウタさんとあの敵の姿がなくて代わりに広間がボロボロになっていましたし!」
俺は説明したのにもかかわらず2人に責められている。 ちなみにレオっていうのはあの団長の名前らしい。
あの後みんなで俺の痕跡を探したらしい。 ちなみに『逃走』その魔法の特性上後を探られないようになっているので『逃走』を使ったことはわかったのだが、どこに行ったのかわからなかったらしい。 なので人海戦術で探し回ってくれていたらしい。
「そっか。 俺は町外れの廃墟に飛ばされたんだが、そこであったこいつに助けてもらったんだよ」
俺はイヴの方を見る。
イヴは連合パーティの面々に囲まれてまるで客寄せパンダ状態だ。
「あの『人造人間』のことですか?」
とティアラは聞いてくる。
「ああ、本人曰く『人造人間』ではなく『人造天使』らしいが」
「天使ねー。 おとぎ話じゃあるまいし」
とルナは半信半疑の目をイヴに向ける。
この世界でも天使って空想上のものなのか?
それをルナに聞こうとした時、ギルドに街の衛兵らしい男が飛び込んできた。
「た、大変だ! 街で『人造人間』が暴れてる! ここにいる戦える連中は大至急装備を整え街の防衛を手伝ってくれ!」




