第113話 派遣勇者が異世界で本物の勇者になるまで!
「ふむ、お主らと話すのは初めてじゃな」
頭上には満天の星空、そして周りは見渡す限りの白い砂の砂漠。 そして、その広大な砂漠の中にぽつんと場違いな家具がまるでどこかの部屋を切り取ったかのように配置してある。
そんな異空間でこれまた場違いな巫女服姿の少女がいた。
「私とてこれでも神の端くれじゃぞ? この世界を『観測していた』者の存在くらい気づいておるわ。 見た所敵意はなさそうじゃな」
少女はベッドによっこらせと腰掛け話を続ける。
「おおかた、観測者としてあの後の出来事が気になったのであろう? だが、残念じゃが少年は……ソウタはこの世界にはもういないぞ?」
かつて、一度も名前で呼んだことのない世界を救った男の名前を初めて名前で呼んだ巫女服姿の少女。
「え? どこにいるのか見て見たいじゃと? くっくっく、どこまでも観測者なのじゃな。お主は」
満足そうに笑いながらもぴょんっと立ち上がり目の前に一枚の扉を出現させる。
「みたいのじゃろ? ただし、この世界の神たる私から一つ忠告じゃ。 『汝、この門をくぐる者一切の希望を捨てよ』じゃ」
俺たちパーティ4人はあの後キリに頼まれ、また別の世界に飛ばされていた。
だからと行って何が変わったのかといえば何も変わっていない。
昔と変わらず今日も仲良く魔物狩りだ。
「おい、ルナ! そっち行ったぞ!!」
「わかってるって!! それよりもなんでティアラちゃん1人に前衛任せてるの!?」
「バカっ! あんなのに俺1人で突っ込んだら死にに行くようなもんだろ!?」
「みなさん、真面目にやってください。 特にソウタ様」
「なんで、俺ばっか!?」
「あの、みなさん! そろそろ私、きついんですが!!」
襲いくる大きなゾウの魔物を相手にいつも通り馬鹿騒ぎする俺たち。
あの後ヨハネを倒した俺たちは英雄扱いとなった。
今まで知り合ったたくさんの人たちに祝福され名実ともに本物の勇者となったのだ。
ユーリたち魔王軍は魔界に撤退。
戦争屋は解体され、その中でも元天使だった連中は今はキリの元でせっせと働かされているらしい。
何にせよあの世界は平和になった。
つまり俺は用済みとなったのだ。
だから、俺はあの世界に留まらず別の世界へ行くことにした。
そうなることをわかってたかのように(実際は面倒ごとを拾ってきてそれを押し付けただけなんだろうけど)キリがこの新しい世界に送り出してくれた。
誤算だったのが俺1人じゃなく、ルナ、ティアラ、イヴが付いてきてくれたこと。
こいつらといればどうな世界だって楽しいに決まってる。
さぁ、新しい冒険の始まりだ!
「どうじゃった? なかなかうまくやってたであろう?」
巫女服姿の少女はニヤッと笑いながら話しかけてきた。
「ともあれ、ソウタたちの物語をお主たちが観れるのはここまでじゃ。 異世界にやってきた普通の高校生をめぐる大冒険、 なかなかいいもんじゃろ? まぁ、いつ終わりが来るかもしれんがそれまでソウタは全力で走るじゃろう、その道が続く限りな」
そう言って巫女服姿の少女は先ほどと同じように扉を作りこの部屋と呼ぶべきか空間と呼ぶべきかわからない場所から出て行こうとする。
扉を開き、その向こう側へ行こうとした時いたずらっぽい顔でこちらへ振り向き、
「もしかしたら、またどこかでお主とは会えるかもな。 それじゃ、その時まで達者でな」
そう言い残して彼女は言ってしまった。
fin.
派遣勇者が異世界で本物の勇者となるまで! ご愛読ありがとうございました!
初めての作品で、色々と学ぶことがありましたが、とにかく今はエタらなくてよかったなとホッと胸をなでおろすところであります。
ただ、やはりまだまだというところで特に苦労したのはストーリーやキャラをどうメリハリつけるかや、話をどうまとめるかといったところで思うところがありました。
なので、今はそれらを経験を糧に次回作の設定を深く練って行こうと思います。
繰り返しになりますが今までありがとうございました!!




