第109話 いざ、最終決戦へ!
「てな、案なんだけどどうかな」
俺は船から戻ってきたから早々にみんなの集まった場で先ほどイヴと考えた案を話す。
だが、すぐさま賛同が得られたわけでなくみんな考え込んでしまう。
深い沈黙の後ミーナが口を開く。
「うーん……… 確かに面白い案だと思うけど、問題はヨハネをどうやって追い出すのかだよ」
それに賛同するようにエディも難色を示す発言をする。
「魔法や普通の攻撃が効かないとなると身体から精神だけを追い出すってのは難しいだろう」
「やっぱ無理か……」
考えついた時は確かにいい作戦だと思ったのだが確かに乗り越えなくてはいけない壁が何個かある。
諦めかけたその時ルナがおずおずと手を挙げ発言する。
「あの、ソウタ。 もしかしたらそれできるかも」
「え!?」
「ルナ様どういうことですか?」
俺がおどろき、イヴがルナにどういうことか聞く。
するとルナはポケットから小さなビンを取り出す。
そこのビンには毒々しい色の液体で満たされている。
「追い出すというかあの身体を乗っ取ればいいんでしょ? これならいけるかもしれない」
「…… 『エルフの秘薬』か。 でもこれじゃあ逆にやつを強化するんじゃないか?」
それを見たアリーが当然の疑問をルナにぶつける。
だが、ルナは確かにそうだけどと自分の案を説明する。
「それなんだけど、この薬はただ強化するんじゃなくてリスクがあるの」
「確か、身を滅ぼすとかでしたっけ? それがなぜ?」
そう、以前アザゼルからもらった手紙の中に確かにそのような記述があった。
それに以前聞いた話によると皇都でミノタウルスと戦ったときも使用したあと倒れたという。
だが、それとヨハネを追い出すことに全く繋がりが見えない。
ティアラもそれがわからずルナに聞く。
「身を滅ぼすというか正確にいえば身体を乗っ取られるの。 エルフの中に眠る悪魔に」
ルナはティアラの疑問にそう答える。
「エルフの中の悪魔?」
俺の疑問に頷き、どういうことかルナが話し始める。
例の『エルフの秘薬』というのはそれを服用することで体内の魔力及び身体能力を急激に高めるといういわば秘密兵器のようなものなのだ。
だが、そんなすごい薬はポンポン使えるわけでもなく、副作用がある。
それはエルフの中に眠る殺人衝動や破壊衝動が暴走するというものだ。
エルフは今でこそ人間から見たら多少鼻に着くが基本的に争いは好まない種族である。
だが、かつては違った。
戦闘民族の名にふさわしい暴れっぷりで名を馳せたのだ。
そんなかつての名残である戦闘民族の血が『エルフの秘薬』によって目覚めさせられその人を支配するというのだ。
だからこの薬を使うには強い精神力と弛まぬ努力によってようやく使えるものであった。
そんな劇薬を使いヨハネが使うリンとかいうエルフの娘の中に眠るその血を呼び出し逆にヨハネから身体を奪ってしまえというのだ。
「どうかな?」
確かに本当にそれができるのなら俺とイヴが最初に考えた通りリンの身体からヨハネを追い出すことができる。
だが、
「問題はどうやってそれを使うか」
フーカが難しい顔でそういう。
確かにそれが1番の問題だ。
飲ませるにしろ注射するにしろヨハネに近づかなきゃいけなかった。
それに何よりヨハネには物理攻撃が効かないバリアーのようなものがある。
つまりヨハネに薬を使うのはどう考えたって不可能だ。
普通ならそうだ。
だが、俺には先ほど動画を見続けてある確証があった。
「確かにむずいが、ここは俺に任せてくれないか?」
「任せるとは何かいい案があるのですか、ソウタ様?」
「まぁ俺だけというかちょっと協力を仰ぐ奴もいるけど、おそらくうまくいく」
「なるほど。 それで俺を頼ってきたか」
俺はみんなとの話し合いのあと早速『ある男』連絡を取る。
男はそういうと少し考えるように黙り込む。
俺としても1人より2人の方が安心できるのでもう一度押す。
「ああ、頼めるのはお前くらいなんだ。 いいか?」
さらに沈黙があったのち電話元から小さな笑いが溢れ、
「ふ、 もう一度世界を救える『勇者』になるというのだ。 憎々しいことこの上ないが………不思議とやる気がなくはない」
「それじゃあ!」
「ああ、面白い。 やってやろうか、あのふざけた小娘に虫けらのひと噛みが恐ろしいことを思い知らせてやる」
こうして俺たちのヨハネに対する反撃が始まった。




