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108話 小さな穴を見つけるまで!



俺は例のヒージィちゃんの忘れ形見である旧日本海軍の軍艦、睡蓮

俺はその会議室に来ていた。

あの後、俺とアリー、フーカの三人はゲートをくぐりルナたちがいる人間諸王国連合軍の人たちと合流していた。

とはいえいきなり魔王軍幹部2人も連れて行ったら大騒ぎになりかねないのでなるべく目立たず、一緒に行動をしていることを知っているのはうちのパーティメンバーとミーナ、キーナ姉妹そしてエディさんの6人のみである。

俺たちはお互いどんなことがあったか簡単に説明しあい、お互いの情報を共有した。

もちろん、そのあと例の『終末の笛』もといヨハネについてもどうするのか話し合いをしたのだが良い意見は出ず、また明日諸王国の代表者の人たちと考えようということになった。






















「………」



「イヴ、お疲れ様。 何やってるんだ?」



俺は白い壁に映し出された映像を難しい顔をして睨むイヴに声をかける。



「はい。 私たちが『終末の笛』ーーーヨハネに襲われた時の映像を再度見直しているところです」



イヴは一旦映像を止め俺に向き直ってそう答える。



「そっか。 で、どうだ? なにかわかりそうか?」



俺は続きの再生を促し一緒にその映像を見ながらイヴに聞く。

実際のところ諸王国連合軍はヨハネにコテンパにやられてしまった。

幸いにもこの睡蓮は無事であったがアルシノエの誇る艦隊の1/3が壊滅、ウラルの航空隊も半分が落とされてしまい他の国の部隊も甚大な被害を受けた。

まさに破壊神の名がふさわしい暴れようであった。



イヴは俺の質問に対し首を振り何も収穫がないことを伝える。



「いいえ、今の所これといったところは。 そういえば先ほど送信元不明の映像ファイルを受信しました。 中身は魔王軍とヨハネの戦闘のものでした」



イヴはそう言って今度はその魔王軍との戦闘の映像を再生させる。

そこにはやはりというかヨハネの圧倒的力の前になすすべもなく散っていく魔族の兵士の姿が映し出されていた。



「こっちも手痛くやられたんだなー。 というかよく映像の記録媒体なんて持ってたな、あいつら」



俺はふと疑問に思う。

というかそもそもこの世界で映像を記録、映し出す技術なんてあったのかと驚く。

それについてはイヴが解説してくれる。



「それはおそらく記憶を映像化する魔法を使ったのでしょう。 そもそも映像の記録や再生は魔法の技術を使っていますので記憶を共有し合う魔法を応用して作られたのだと思われます」



やっぱ魔法は万能だな。

ということは透明化の魔法で誰か1人が女湯に潜入

それを同士(とも)と共有。

俺たちみんなそれで親友。

なんてこともできるのか。



「それじゃあ俺のも見れたりするのか?」



「はい、私がその魔法を使えるので可能です。 ただし、ソウタ様がご想像のような犯罪行為には加担したくありませんが」



計画ダダ漏れであった。



「べ、別にそんなことおもってねーし! そ、それじゃあ俺のも渡すよ。 データは多い方がいいだろ?」



「ありがとうございます、ソウタ様」



いたって平たい口調で、先ほどの俺の欲にまみれた計画を聞いた後でも何一つ変わらない態度で俺にいう。

イヴは見た目は女の子だが、その正体は造られた生物なのだ。

なので、そもそも感情というのが薄い………はずなのである。

が、イヴはほかの『人造生物』よりもやたら表情が豊かなのである。

その彼女がいたって平たい口調でいうというのはとても恐ろしいことである。

何も気にしてないのか、それとも呆れて失望しているのか………

前者であってほしいことを心から願った。


















「こうしてみると、というか見れば見るほど弱点なんか見当たりそうもないなー」



俺は誤魔化す意味も込めて話を再び映像の方に戻す。

今度、映り出させれているのは俺とユーリがヨハネとぶつかった時のものだった。

見れば見るほど手も足も出せないことが痛感させられる。



「物理、魔法攻撃の無力化、サイドレンジからアウトレンジまで制圧できる戦力。 まさに無敵です」



「頭痛くなってきた。 一旦休憩いれようぜ」



俺はそう言ってイヴに提案する。

だが、イヴは首を振り、俺の誘いを断る。



「私は休憩を入れずとも働くことができるので不要です。 ソウタ様は魔王と戦いさらにはヨハネとも戦ったのです。 どうぞここは私に任せてゆっくりしてきてください」



「まぁまぁそう言わずに一度頭を冷やすことも大事だぜ? どんな機械でも連続で動いたら壊れちまぞ?」



ここでイヴに何かあったら大変だからな。

ヨハネを相手にするにあたって戦力ダウンは避けたい。

やや間があってからイヴはわかりましたと了解してくれる。



「よし、それじゃあ行こうぜ。 なんでもルナがお茶請け作ってるらしいぞ? なんでもばぁちゃんから教わったやつらしいぞ?」



「ルナ様のお祖母様といえば確かエルフでしたね」



「そうだよ。 エルフといえばティアラの案も結構いいと思ったんだけどなー」



「着眼点は間違えてはなかったと思います。 ですが、やはり詰めが甘いとマスターやアリー様がいうのも無理はありません」



俺たちのいうティアラの案というのは先ほどの話し合いで提案されたものであった。

どういうものであったかというと、ヨハネ自身は現在エルフの少女であるリンの身体を依代として使っている。

なら、今のヨハネにはエルフに効く攻撃が効くのではないかとティアラが提案したのであった。

だが、それはミーナやアリーの意見によって結果的に無しになってしまった。

まぁ2人の意見は当然で確かにこちらの攻撃が全く効かないとあっては弱点を突くも何もない。



「確かに言われてみればだよな。 エルフに結構たくさん弱点があるって聞いた時には行けると思ったんだけどなー」



「はい、確かにエルフという種族には人種と同じ様に弱点は多いです。 ですが、その弱点をヨハネがカバーしているので意味がありません」













まさに鉄壁の城塞であった。

さらにタチの悪いことにその城塞は動き回り防ぎ切ることができない攻撃を打ってくる。

冗談では無くこれが本当の最強の盾と矛であった。



せっかくティアラが攻略の道を見つけたと思ったのに弱点カバーなんて余計なことしてやがって………



ここで俺は何かが引っかかる。

それは喉に刺さった魚の骨のような痒いとこに手が届かないようなもどかしい………









「………」



「どうしたのですか?」



俺が急に難しい表情で考えこんだのでイヴが心配そうに聞いてくる。



「………なぁイヴ、ヨハネはなんでエルフの身体なんて使ってるんだ?」



そうこれが俺の引っかかってる正体。

ふと湧いた小さな疑問。



「? それは依代としてでは?」



だが、それは無敵の城塞に開いた小さな穴。



「いや、そうなんだけどなんでわざわざそんな面倒なことしてるんだ? わざわざ弱点の多いエルフの身体じゃなくてヨハネ自身が戦えばいいんじゃないか?」



「………確かに、それは引っかかります」



「つまりはヨハネはなんとなくでエルフを依代として使ってるんじゃなくて」



「依代がないと力を発揮できないから使ってるということですか……」



「これってもしかしたら弱点じゃないか? まぁどうやってあいつをリンって娘の身体から追い出すかはわからないけど検討してみる余地はないか?」



「ですね」



俺たちに残された反撃の狼煙であった。




























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