第9話 街を出るまで!
昨夜というか今日の朝のことは思い返すとなかなか恥ずかしいのだが、2人ともその後は疲れ切っていたのか一日中寝ていた。 2人が起きたのは夕方だった。
「おはよ、ソウタ。 といってももうそんな時間じゃないんだけどね」
「だな。 おかげで昨日の夜から何にも食べてないから腹減った、 どっか食いに行こうぜ。あと、セリアさん心配してたから大丈夫でしたっていいにいかないと」
「確かにお腹すいた。 そっか確かに私もセリアさんに心配かけたこと謝りに行かないと」
「それじゃ決まりだな」
俺たちはひとまずご飯の前にセリアさんのいる教会を目指すことにした。
朝からずっと心配させてたなら悪いことしたなー
そう思い教会の扉を開けると
「やあ、人間ども。 今朝ぶりだな」
俺もルナも盛大にずっこけた。
「なんで、あんたがいるの!?」
ルナのいうとおりである。 教会にセリアさんに会いに来たのだが、なぜか目の前にはあの変態吸血鬼がいる。 てか、こいつ吸血鬼なのになんで教会にいるんだよ。 ダメだろ。
「確かに普通の吸血鬼は教会など聖別された空間に入ったら一瞬にして灰になるだろう。 だが我はバンパイアロード、弱点が弱点として働かぬ」
俺の顔を見てしれっとそういってくる。
「そんなことどうでもいいよ! な・ん・でここにいるのかきいてるの!」
と、ルナがルークを問い詰めるすると教会の奥からセリアさんが出てきた
「あ、ソウタさん。ルナさん。こんばんは、あのあとは大丈夫ですか?」
「はい、 それよりもなんでこのルークがいるんですか?」
まさか再びセリアさんを狙いに来たのかもしれない、そう思いセリアさんに聞いてみた。
「それはですね、私がこの教会のお手伝いとして呼んだんですよ」
と、答えてくれるセリアさん。
なんでまたこいつに? 手伝いなら俺がするのに
「なんでよ! なんでこいつに手伝いさせてんの!?」
「うるさいぞ、『狂戦士』。実はお前らが帰ったあとシスター・セリアが我の隠れ家を訪れてな。 他の人を襲うくらいなら私でよければいつでも髪をあげるので私の元で働かないかといってな。世の女性の髪を集めることはできなくなったが、シスター・セリアとともに入れるなら是非もない。 喜んで引き受けたのだ」
「ルーク、セリアさんの近くにいるのはいいけど毎回毎回髪の毛引っこ抜いてたらなくなっちゃうぞ?」
「我はそもそもその甘美な香りを楽しむために髪を集めていたのだ。 近くにいるならそもそも髪を集めなくとも香りもその艶やかな髪に触ることもできるだろ?」
「きもっ! やっぱきもっ!! それと私を『狂戦士』ってよぶな!」
とルナとルークのつかみ合いの喧嘩がまた始まった。
懲りないな、こいつらも。
「私としても男手が欲しかったのでちょうどよかったのですよ。まぁルークさんは吸血鬼なのでこうやって夕方からしか働けませんが」
と2人の取っ組み合いを楽しそうにみていたセリアさんがそういう。
「セリアさんがそれでいいっていうなら何も言わないですけど、変なことされたら行ってくださいね? いつでも飛んできますから」
「ふふ、頼りにしてますね?」
と、笑いかけてくれるセリアさん。
何それ反則だろ! なんかもう胸がドキドキする!
「おい、頭のいかれた娘。我とこんなことしてていいのか? お前の連れがシスターに欲情してるぞ?」
「誰が頭のいかれた娘だ! ソウタも私がこの変態を大丈夫してる時になにやってんの!!」
「よよよよよ、欲情とかしてないし!」
と俺も含めてどんちゃん騒ぎになってしまった。
その後、ルナをなんとかなだめてから教会を出て飯屋に向かった。
「全く、私が見てないったらすぐそうやって手当たり次第に」
「だから違うって!」
まだルナはむすっとした様子だがとりあえず許してはくれるみたいだ。
そうこうしているうちに食事が運ばれてくる。
俺たちは今後について話し合った。
「とりあえず、ソウタはこれからどうするの? 故郷の東の島を目指すの?」
「そうだな、大まかな方針としてはそれだな。 それには途中の魔族との戦いは逆らえないよな」
「そうだね。 まぁその辺は私がなんとかしてあげる」
ルナはそう笑いながら唐揚げを頬張った。
俺もルナに頼ってばかりじゃなくて自分でもなんとかしないとな。
そういえば今俺どれくらい強くなってるんだろう?
そう思いギルドカードを見てみると
「おーなかな上がったな」
「ソウタのギルドカード? どれどれ…えっ!? Lv.25!? なんでもうこんなに上がってるの!」
と驚くルナ。
そんなに驚くことなのか?
「冒険者になって1ヶ月も経ってないのにこれはすごいよ! でもなんでこんなに急に?」
「わからないよ、俺は淡々とクエストをこなしていただけだし、確かに予想外の強敵に当たったりとかしたけど…」
俺は本当に覚えがない。 強敵といえばジャックパンサーくらいだがあいつは倒したというより追い払ったので経験値は入ってないはずだ。
カードを見てみると討伐した魔物の欄にバンパイアロードの文字があった。
あの変態吸血鬼…餞別ってこれだったのか。
なかなか粋なことしてくれる。
「まぁなにはともあれ、レベルが上がることはいいことだよ」
「ただ、Lv.25になっても魔法1つも増えてないけどな」
「あ、あはは」
「まぁいいか。とりあえず次の街を目指そう。 今日はその決起会だ! パーっと行こうぜ!」
「そうだね! パーっと行こう!」
勘違いしないで欲しいのがこの世界での成人は15であり、当然17である俺と同い年であることが判明したルナは合法的にお酒は飲めるのである。こうして、俺とルナはこれからの冒険のために英気を養うのであった。
天気は気持ちいいぐらいの晴天。 まさに旅立ちとしては最高のコンディションである。
「さぁ、行くか」
「うん!」
こうして最初の街をようやく出て魔王討伐への第一歩を踏み出すのであった。




