折り紙サンタからのプレゼント
「気をつけてな、今日はありがとう」
「めりーくりすます!」
勇児のめがねが茉莉のめりーくりすます! という掛け声と共にかかげられた腕に吹き飛ばされて、わたしはぶはっと笑ってしまった。けらけらけたけた笑うわたしをみて、綾は安心したようだ。風邪引かないようにね、と微笑んで料理を少しわけてくれた。茉莉が勇児に抱っこされてわたしたちに手を振る。ずっとずっと少女が手を振るのでわたしも腕が痛くなるくらい振り続けた。
街路樹のイルミネーションが明るくなってきたころ、樹はわたしの手を握って帰路とは違う方向へ歩き出した。
「どうしたの」
いつもは歩調を合わせてゆっくり歩いてくれる樹が、ずんずんと先を歩くのでびっくりした。どこにいくの、怒っているの。なにを聞いても人通りの少ない暗い通りに出るまで彼は一言も話さなかった。
「……璃子、聞いてほしいことがあるんだ」
立ち止まって、振り向いて、彼は丁寧に言葉を紡いで言った。
「ごめんね、綾との会話聞いてしまったんだ」
白い息がわたしの頬にかかる。樹は潤んだ瞳でわたしを見つめてくる。ああ、好きだと思った。この人と家族になりたいと思った。
「不安にさせていたね、ごめん。本当はもっと後に言おうと思ってた。それこそ24時ちょうどにね。でも今言う。今すぐ言いたい」
「……」
「結婚しよう」
この言葉を待っていた。待たせたのはわたしなのに待っていたのもわたし。わがままで自分勝手。まるで子どもだ。だからこそサンタさんはわたしにクリスマスプレゼントをくれたのかもしれない。わたしはコートのポケットで眠る茉莉からもらった折り紙サンタを撫でた。ありがとう。最高のクリスマスプレゼントです。