無法者2-2
「あーあ、殺しちゃった。いいの? 捕まっても知らないわよ」
エナがニヤニヤ笑いながら揶揄すると、
「構うもんか。目撃者は誰もいないんだ」
テオは事もなげにそんなことを言った。
二人は山の斜面を走る、人気のない街道の上に立っていた。街道の先には小さな港町があり、そのさらに向こうには地平線まで続く青い海が広がっていた。
「あたしが通報しちゃうかも」
「そうしたら遺品は回収されるだろうな」
テオは足元に転がる二つの死体を見ながら言った。
一人は胸を刺され、もう一人は首を切られている。どちらもまだ出来立てほやほやで、流れた血は白い湯気を立てていた。
「うーん、やっぱりやめるわ。もったいないし」
「賢明な判断だな」
「テオもだんだん悪党が板について来たわね」
エナが嬉しそうに唇の端を吊り上げる。
「どっかの誰かに似たんだろうよ」
「その人はきっと、ものすごい悪人ね」
「ああ、悪魔みたいな奴だったよ」
そこで二人は声を揃えて笑い、
「......さあて、さっさと済ませるとするか」
いそいそと作業に取り掛かった。
「なんだかしけてるな」
死体の懐から財布を抜き取ったテオが、中身を見て愚痴をこぼした。
「非常時に備えて、財産は身につけておく主義だったんでしょ。こっちは中々の成果だったわよ」
エナは両手に載せた指輪やネックレスを差し出してみせた。
「なるほど。良い勉強になるよ」
テオはひとつ頷き、死体を漁りはじめた。ブーツを脱がせ、ベルトからバックルを外し、護身用の剣を奪い取る。
「けど他にもあるはずよ。リスク分散のためにね」
エナは遺品の鞄を物色すると、二重底の下からいくつかの小粒な宝石を見つけだした。
「ほらね」
「お見事」
やがて死体は裸に剥かれ、身につけているのは下着だけとなった。
「これでもう全部よね?」
エナが地面に並べられた金品を見下ろしながら確認する。
「多分......」
テオは頷きかけて、
「いや、まだだ」
首を横に振った。
死体の口を開けると、腕を突っ込み、顎を砕いて金歯を引っこ抜く。
「これで今度こそ完璧だ」
「冴えてるじゃない」
二人は魔法で深い穴を掘ると、二つの死体を放り捨て、これまた魔法で土を被せた。
「思わぬ臨時収入だったな」
テオが相好を緩める。
「死人に口なし、ね」
エナも満足げに呟いた。