珈琲とミルクココア
「あっついー」
青々とした空と眩しい太陽が降り注ぐ昼下がり。
「どーしてこんな暑いかなぁ!
こんなんなら、ずっと雨降ってりゃよかったのにっ」
「やめて。一週間降り続いたんだから、もう充分だよ」
「なーんで自販機、外にあるのかねぇ。うちの学校って」
あーやだやだ、と眩しそうに手のひらで太陽を遮る友人の背中を追いながら、牧友妃は空を見上げた。
空の端に生まれたばかりの入道雲が浮かぶ。
…この間入学したと思ったらもう夏だ。
時間の経過が早く感じる。
「でも、種類あるのはいーよね」
自販機の前まで来ると、中森綾は先ほどとうって変わってとたんに機嫌がよくなった。
その現金な様子に友妃も笑う。
「暑いし、ここは桃天とかにしとく?」
「いや、私決まってるから」
「えー、またぁ?
暑い時にはさっぱりすっきりしたものでしょーよ、やっぱり」
「いや、私関係ないから。それ」
「えー」
ふわり、空気が動いたと思うと友妃の横を男子生徒が二人横切ったところだった。
二人とも友妃よりも背が高い。
チャリンと小銭の響く音がして一人目がジュースを買う。
…あーあ、先越された。
友妃が綾をちらりと見下ろすと、眉間にシワを寄せながら、まだ何を買うか思い悩んでるらしい。
ははっと小さく笑いながらその様子を見守る。
「あっ」
ガコンッと缶の落ちる音と同時に、戸惑った声がそこから聞こえた。
「えー、なに。そんなの飲むのお前」
「……しまった」
どんまーいと言いながらケラケラと笑っているのは、さっきジュースを買っていた男子生徒。
少し茶色い髪の毛が共にふわふわと動いている。
どうやら、もう一人のほうがやらかしたらしい。
なんとなくその二人を見ていると、しゃがんで缶を取り上げた方が、立ち上がった。
その茶髪の彼よりも背が高く、真っ黒い髪の毛がつんつんしている。
そして、くるりと向きを変え…目があった。