表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【空海】深海生物(バケモノ)は船を飲み込む。

作者: 丸井やよい

「『知ってるか?”船長さん”』」


俺を見下ろしながら、ニヤリと彼は笑った。


「『海って、怖いんだぜ?』」

ベルが最期に刺した三叉槍を、自らの腹から抜いて、*****は飛び降り台の先に立つ。


「『ほらほら。馬鹿デカい化け物が口を開けて此方を見ているじゃあないか』」

両手を大きく広げて、哄笑。


一体、こいつは…何を考えているんだ…?

前々から掴めない奴だとは思っていたが、まさか本当に、こいつらは同一人物だったっていうのか…?


「『ニンゲンなんて一飲みだと思うんだよねぇ?ほらぁ、君も見てみる??』」


人間の形はしているが。彼は人間じゃない。

というか。俺は今動けないのに。


「こと…わ………!」「『あぁ!はいはい、分かってるから口に出さなくていいよって!!』」


言った先に、俺の口からは大量の口が吐き出された。

あの時に強く打ち付けてしまったせいだろう。もう長くないのはわかってる。わかってるんだが。


「『でも。残念ながらただの”例え”なんだよね。化け物なんていないよ。』」


ふたたび口を三日月型に歪めたその顔は、何処か彼奴に似ている。

ああ、だから、俺はこいつを殺せない。

同じ顔が、同じ表情が、同じ声が、同じ身体が、………彼奴を思い出させるようで。


「『ま、でも!』」と踵を返し、高く飛んだ彼は、セシリオの上に着地して、目を細めた。セシリオは何の音も発しない。


「『とりあえず海は怖いんだよ。いつ水面下から化け物が現れ、俺らを喰らうのか解らないんだからさ。』」


その”化け物”は、まさしくお前だったってわけだ。


八重歯を覗かせ、彼は鼻の先にまで顔を近付けてくる。


「『勿論、化け物にとって、君も捕食対象だ。糧になるのならなんだっていいんだよ。』」


セシリオからどいた彼は、シュテルネンヒンメルを蹴飛ばし道を作る。

彼女も、何の音も発しない。


「『君達も、僕の悲願の為の犠牲者なのさ。まあ…特殊な記憶持ちである”主人公様”と人形使いくんから食べていきますか。下手したら悪魔に憑かれるから。早めにね。』」


ふぁーあ、と大袈裟に欠伸をし、彼は一瞬だけ表情を眠気に歪めた。



「『さて、……で。君が生き残り?な訳だけど。いつ死ぬの??まだ??????』」


もう声も出ない。血が口内に張り付いて、変な感覚がする。

俺も死ぬのか。みんなと同じように。

………それなら、せめて彼女の願いだけでも、助けて欲しかった。


「『は…ッ!?』」


視界は真っ白にフェードアウトしていく。

照明をあびた役者は、そのまま眠りにつくのか。


「『もう…!!憑かれ……!!ッチ!!!!』」


楽だなぁ。もう…呼吸も浅くなってきた…。


「『てめぇ…!もしかしてリリスか………!!』」


彼が武器を取る音を聴いた。

ああ、心地いい金木犀の香りがする。





それを最期に、俺の意識は沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ