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滅亡8

ナートル

そこの人たちは何を見て、何と戦っているの……?

何を言っているの?

私はこの国の最高権力者。

本気を出せばこの国のすべての人間を黙らせることだってできるのに……。

なのに、私の、国が生きるか死ぬかの話の最中なのに完全に蚊帳の外……。


最初は怯え震え上がり、部屋の隅で縮こまっていただけだがだんだんと慣れてきた。

慣れてくると頭が回るようになってきた。

この一連の事件の首謀者はキーデルとか言うさっき入ってきた男。

最初テロリストが入ってきたときは驚いたが、どうやら彼は悪い人ではないらしい。

両手に剣を握っておいて悪い人じゃないという言い方が悪いけども少なくともこの国にとっては悪い人ではないらしい。ゴルジオとの戦闘で深手を負ったようで動くのが辛そうにしている。

実はこの国にとって悪い人だったゴルジオさんはテロリストに敗れ、地に付している。まだ息はあるようだ。

そしてこの国のために文字通り命を懸けた男が死にその弟子っぽい男がキーデルと距離を置いて向かい合って立っている。しかし戦意はないらしい。握っていた剣は床に横たわっている。


今日一日で目まぐるしく変わっていく状況を整理しているとある考えが脳裏に浮かぶ。

もしかして、私が受け取っていたあの手紙も……。彼がやったのではないか……。

あの時父が出したと言っていた。

だけど、よく考えたら父がスライルさんの代わりに国を治めることを望んでいるはずがない。もしかして父ともども利用されたのではないか……。

スライルさんを大統領職から解職させるなら当然後釜が必要だ。まだ計画の最中だったのだから。

では一連の首謀者としてどんな人が上に立ってくれたらうれしい?

そんなの決まってる。

利用しやすい人間だ。


私は利用されたのだ。

私のこの空っぽの魂を……。



私はまるでマリオネット。

人形使いの思うがままに動き……、

そして、舞台が終わり、役目が終われば倉庫にしまうだけ。

いいえ、荷物になるから舞台が終わった後は、捨てるだけ……。

それがマリオネットの一生……。

目の前で人が何人も死に、自分ももういつ死んでもおかしくない。

それでも泣くことも叫ぶことも許されない……。

それが私の一生……。

哀れなマリオネット……。

それが私。


「最初の計画ではお前らがここまで関わってくるとは思わなかったからこうなるとは思ってなかった。残念だけどさらば友よ!」

キーデルがスライルさんの弟子のそばにゆっくり近寄ると、後ろでテロリストが叫ぶ。

「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ、キーデル!」

「いまさら何を言っても遅いよ。これから俺についてきて一緒に国を滅ぼすか?」

「死んでも断る!」

「そう言うと思ってたから言わなかっただけだ、それじゃあまずはあばよ、フレロレ!」

キーデルが剣を振りあげた瞬間、ぎこちない動きでテロリストがキーデルとスライルさんの弟子の間に割って入る。

「させねぇよ!フレロレは俺が守る!」


……オレガマモル。

私はいつも守られてばかり、父に、バルテニーおじさんに……。

私にはできない芸当だ……。


「フレロレを守る?こいつにそんな価値があるのか?」

キーデルは嘲笑しながらテロリストに向かって言う。

「お前はよくやったよ。これだけ大掛かりなことをやってのけたんだからな……。ただ、それだけが唯一の誤算だな。」

「昔からフレロレフレロレって!こいつのどこにそんな魅力があるっていうんだよ!」

「さあ?俺よりも強いところかな?よくわからんけど魅力ってのはもともと言葉で表すもんじゃないだろ。」

「ふん、死にぞこないが。守るとは言ってもそもそもここからどうするっていうんだ?この部屋にある扉はすべて塞いであるんだぜ。唯一開いているのは地獄につながる扉だけだ!」

「ハハッ、隠し扉っていうのはないと思っている人には見つけられないものさ。」

そう言って彼は煙玉を投げつけた。


「クソ、扉をふさげ!誰も通すな!」

キーデルの声が無常に響く……。


ようやく煙が晴れるとほとんど変わらず、フレロレと呼ばれていた少年だけがいなくなっていた。


「どこだ!フレロレはどこにいった!」

「ここから逃げてもらった。」

テロリストは余裕の笑みを浮かべて窓を指差す。


「こういうときだけはきっちりしてるな。あいつは昔からそう言う目ざとい奴だからな!」

……私にはあの人が自分から逃げ出すとは考えられない。

あの人、私にはない覚悟を決めた目をしていた。

あの人は決して……。



「逃がさん!くまなく探せ!」

キーデルは入口に待機していた部下たちを窓に向かって走らせた。

テロリストは必死に窓から外に出ようとする兵士たちを止めようとするもさっきまでの目を見張るような機敏な動きはもうなかった。


「グレンも一緒に逃げればよかったのにな……。」

「そうしとけばよかったかな……。でももう血を流しすぎた……。」

「まあ、初めから逃がす気はないけどな。グレンもフレロレもこの現場にいた以上地平線の向こうまで追って殺しに行くけどな。」

「地平線の向こうの向こうに隠したから問題ない。俺の本当の仕事はこれで終わりさ!」

「そうか、ご苦労さん。すぐに楽にしてやるよ!」

キーデルがゆっくりとテロリストに近寄る。




彼らの抱えている思いも、彼らが戦っているわけも、彼らの覚悟もまったくわからない。

だけど、私が何もしてなかったことだけは痛いほどわかった。




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