メンデル、自警団本部にて
「まったくなんであんなことしたんだ!」
私はこんなめでたい日になんでこんなにイライラしなくてはならないんだ。
私だってこのお祝いの雰囲気を楽しんでいたいというのに。
それもこれもすべてこの男のせい……。
「だから悪かったって、メンデルさん。昨日つい酔っ払っちゃってさ。」
「酔っ払っちゃってさじゃない!ゴルジオよ。
お前はイーリス共和国自警団の副団長なんだぞ!
お前は本来悪いことをしている奴を取り締まる側なんだぞ!
それをお前、酔っ払った勢いとは言え、飲み屋を半壊にしたりしちゃうんだ……。こんなんじゃ国民に示しがつかないぞ……。」
「だから悪かったってば。弁償もするし、な!もういいだろ!」
こいつ全然反省してないな!
「もういいか決めるのは私だ!
私だって本当はこんなことをグチグチ言っていたくはないんだ!
まったく、もう。前はこんなことなかっただろ!
どうしたんだ、お前のお目付け役は!」
「お目付け役?軍師のスウェービルのことか?奴は戦争が終わった途端どっか行っちまったぜ!」
なんでまた……。
私だってこいつの面倒ばかり見てられないのだ。
「いいかこれから私はスライルさんに誘われて国の中枢で働くことになる。私がいない間はお前がこの自警団の指揮を執るのだ!そんな浮ついた態度では困るぞ!」
なんとかならないのか……。
「だから悪かったって。気をつけますよ。団長!」
「ただでさえお前の体大きくてごつごつしてるから周りから目立つというのに……。」
「メンデルさんだって。大きいじゃないですか!」
「お前ほど厳つくはない!」
「もういいですか?今日俺の部下が最高の酒と女を確保したって言ってたんで……。」
「さっきから私はお前のそういう態度のことを言ってるんだ!まったくもう。」
「はいはい、わかりましたよ。メンデルさんも一緒に行きたいんでしょ。」
「行かんわ!もういい。疲れた。
もう行っていいがくれぐれもまたはめを外したりするなよ!」
「はいはい。」
「はいは一回!」
そう言い残しその巨漢の男は立ち去った。
やれやれ、どうしたものか。
あの男、ゴルジオは1対1の戦いにおいてこの国で奴の右に出る者はいない。
私を含め、並の戦士では束になってもかなわないだろう。
世が乱世ならあの男の強さは重宝したものだが、今の世にその強さは必要ない。
かと言ってこの国の英雄として国民に慕われている以上無下にもできない……。
せめてゴルジオ軍を知略で支えたあのスウェービルという男がまだ軍に残っていてくれれば……。
乱世よりも心労が絶えないとはこれでは私の未来は……トホホ。
私もゆっくりしたいけど、始末書の確認しないと……。
17時からパーティーもあるし……。
今日は建国記念日なのに何でこんな……。
私は一人部屋に残り、その後も黙々と机に向かって作業をする。
膨大な書類と疲労を抱えて……。