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バルテニー、自宅にて

建国か……。

朝食後の苦めのコーヒーをすすりながらふと思う……。

私がこの国に携わって早3年、街も様変わりしてずいぶん賑やかになったものだ。

こっちは寂しくなってしまったが……。

そっと撫でた自分の頭は油で少しベタベタした。


この国に雇ってもらえなかったら今もただの旅商人でいたことだろう。

それだけじゃない。

私ももういい年したおっさんだというのに経済大臣なんて大役を任せてくれるなんて……。

私の商才を、いや、私を買ってくれたスライルさんには本当に感謝している。

私は机の上に置かれたスケジュール帳を開く。

『スライスさん、多忙につき面会謝絶』

……仕方ない。

そういや17時からパーティーにお呼ばれしていたからその時に言おう。

やはり、今日言わないということはこの感謝が偽物だということだ。


さてどうするか。

建国記念日というこの素晴らしい日に家に籠っているというのもなんだかもったいない。

今会いたい人がいるとしたら……。やはり、クードル博士だな。

彼が発明したものを私が街に広める。

それで私の商売は成り立っていた。

彼の発明なくして今の私はない。

スケジュール帳を再び開く。

『クードル博士、多忙につき面会謝絶』

……これは嘘。

だって彼、もう引退したもの。

何に忙しいのやら……。

まったく、あの人は昔から人付き合いが苦手だからな……。

最初に商談を持ち込んだときなんか会話にすらならなかった。


娘のナートルちゃんはあんなに活発なのに、元気すぎてたまにきついこと言うけど。

まあなんにせよ。彼の発明が人々の生活を豊かにしたのは間違いない。

その発明品の流通を一手に任せてくれた彼には感謝している。

10年来の付き合いだし今日は何とかして会いたいな。

いや、研究所に行けば普通に会えるか。

このコーヒーを飲んだら出かけますか。


あの人のあたふたする姿を想像しつつ、私は活気あふれるこの街に飛び出した。


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