表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/85

ナートル、7

「ほ~い!それでは、えーっと、会議、はじめまーす。」

いつも通り会議が始まる。

今日も私は絶好調!


今私が大統領になって国のすべてを決める立場にいるのは実はお父様のおかげだったのだ。

私が産業大臣で毎日研究と国家業務に追われていたころ、父が持ってきた大量のファンレターの中に小さくてかわいらしい手紙があった。毎日毎日忙しくて大変だったあの時の私にはあれは紙ではなく神だった。その手紙を出していたのが敬愛してやまないお父様ことクードルだった。私の身を案じて何か負担を減らす方法がないかと思索し実行してくれたらしい。

自分は一線から身を引いた身だから直接的な手伝いはしたくないと思い、手紙という形でサポートしてくれたらしい。今考えればあの中で私が迷わず選んだあの封筒は私の趣味をよく知っているお父様だからできたのかと思った。

最近までスライルさんの処刑の日取りなどの計画などでバタバタしていてできていなかったのだがつい先日私の大統領就任祝賀会が開かれた。その時酔っ払った父がうれしそうにそう語っていた。

結果はどうあれ、今私は父の期待を応えられている。

私が愛している人に喜ばれる、これ以上の幸せがあるというのだろうか。


「おい、大統領!にやにやしてないで会議を進めてくれ!」

ブロームさんが噛みつくように言った。


スライルさんの処刑の決をとった日からブロームさんはずっとこんな感じだ……。

特にスライルさんの処刑は明後日に迫っているからだろう。

まあ、機嫌が悪いってだけで特に何かするわけではない……。

放っておけばいいのよ、こんなおっさんは……。


最近、街でなんだか国に反乱するとかしないとかそのための反乱軍が組織されたとかされてないとかの噂がある。

スライルさんは周りの人から色々と褒められてはいるけども私にはそんなにすごい人だとは思えない。会議の時に私にグイグイ聞いてくるし、お父様の方が何倍も素晴らしい。

それにスライルさんの処刑はゴルジオさんが勝手に言い出したことだし、私が悪いんじゃない。ゴルジオさんが言わなければ処刑なんて思いつきもしなかった。ゴルジオさんがスライルさんを毛嫌いしているから協力してあげただけ。ゴルジオさんが……。

何にせよ、スライルさんの生き死によりも私が私らしくいられる方が大事なのだ。


そう、ゴルジオさんがいるのだ、私が反乱軍の心配をしても仕方ない。

ゴルジオさんが軍の編成はしてあって、王宮を守っているとは言っていたからここは心配ない。軍とか戦い以外のその他もろもろはバルテニーおじさんがきっとなんとかしてくれるでしょう。


おっと、ブロームさんが気持ち悪い目つきでこちらを見ている……。

しょうがないわね……。

「えーっと、じゃあ改めて何か言いたことがある方!どーぞー!」


チラッと横を見る。

この前の会議で私の立場を強くするために、半ば強引にマーリンを産業大臣のポストにつけたことを少し後悔している。

彼女は私がこのくだらない会議に参加している間私のやりたい研究を進めておいてくれたり、レポートをまとめてくれたりいろいろやっててくれたのに……。

彼女がこっちに来てから研究の進行速度に大きな問題が……。

……ああ、そうだわ!

別にこっちに来ないで研究してもらえばいいじゃない。

それで数の力が必要な時だけ呼べばいいのよ!

なーんだ、なんで今まで気づかなかったのかしら。

つぎからそうしよー。


……。


「さて、気を取り直して、何か意見がある方、どーぞー。」

……誰も手を挙げない。

何よ、早く進めろなんて言っておいて……、本当は言いたいことなんてないじゃない!


というかあのスライルさんの処刑の一件以来、ずっとこんな感じだ。

バルテニーおじさんは何も言わずただ私たちを見ている。

ブロームさんは小言は言うものの意見らしい意見は言わない。

ゴルジオさんは話を振らないと何も話さない。特に今日は聞いてもいないようだ。腕を組んだまま憮然としている。

マーリンは……、言う内容がない。前任者だった私が言うんだから間違いない。

やる意味ない気がする……。


「誰も意見はな――」

しびれを切らし会議絵を終りにしよう話をしようとすると突然窓の外でドーンと大きな空砲が外から聞こえた。そのあとワァーっと大きな歓声が聞こえる。

誰だか知らないけどあんたらじゃないっての!

お祭りなら私が研究か仕事をしてないときにやりなさいよ!


私の真後ろで開いていた窓を閉め、また席について話を進めよう口を開こうとした瞬間、

「誰も何も言わないのなら俺からいいかい?」

と突如背後から声がする。

振り返ると部屋の隅に腰に2本の剣を差した男が立っていた……。


「誰?どうやってここまで入ってこれたの?」

男の姿を見た瞬間、反射的にそう言った。

「俺はこの国のお守りかな。この国の涙に導かれてここまで来た。」

……言っている意味はまったく理解できなかったが、その男が腰に下げた2本の剣の意味は直感的に理解した。


「この国を!この国にこんなことした豚はどいつだァアア!」

男の怒鳴り声がいやに耳に残る……。


何だこの超展開……。

何がどうなってこうなった……。


誰か……、助けて……。


私はただ恐怖に襲われていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ