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キーデル、6

俺の引っ越し祝いはなんだかしんみりしたまま終わった。

酒を一滴も飲まなかったからグレンの姉ちゃんには散々小言を言われたがそんなのどうでもいいぐらい二人はショックを受けていた。

スライル様のためにいろいろ頑張ってきていたのに結果として何も思ったように言っていない。二人は俺と違ってスライル様と一緒にいた時間が長いから少し政治の世界にも使っていたせいだろう。

政治の世界がこんなに面倒くさいとは思わなかった……。


だーーー、もう!

仕事がてんてこ舞いじゃねぇか!

始めは田舎暮らしから抜け出して華やかな都市生活だ。

グレンやフレロレと遊べるぞー!なんて甘いこと考えていた!

ゴルジオの野郎、政治のことなんか何もしないというかできないからすべて俺に回ってくる。そもそも俺はゴルジオ軍の参謀補佐だ。本来なら参謀がするべき仕事なのに……、参謀がギミーでは……。あいつ参謀というかサンドバッグだし……。


さてどうしようか、第一に……

ゴルジオ様の行政方針を決めないとな……。

政治の世界なんてどうでもいいんだよな……。

めんどくさい。

ただそれっぽいことはいつでも言えるようにしとかないとな。

あの会議に俺が参加できればいいんだけどそれはできないから……。


あとグレンとフレロレが辻斬りの真犯人はメンデル様じゃないって言っていたから。

その名目で警備隊を再配属しておいた方がいいな。

小規模だけど。


あっ、メンデル様で思い出した。

あの人がメンデル様に会いたいから手続してくれって言われていたんだった。

手続きをするのはいいんだけど。

牢屋の管理も自警団本部の仕事かよ。

もう、嫌!


というかメンデル様はこれを一人でやっていたのか……。

あの人凄いな……。

俺に全部は無理だわ。

こんなことやる気が起きない。



部屋のドアが開く。

「やあ、キーデルくん!調子はどうだい?」

机に向かってひたすら考え事をしていると、元気な人が元気よく声をかけてきた。

「なんか楽しそうですね、オーネンスさん。」

「ハハハ、すみません。メンデル様の一件はまだ調査中で特に進展がないのですが、ほら、私たち首都勤務になったじゃないですか。これからは単身赴任じゃなくて毎日家に帰れるんですよ!我が妻と私の天使である子供が!もうそれだけで楽しさが全然、もうたまっていたものはすべて吹っ飛びました。」

「……いいですね。羨ましいだけですよ。」

「いいもんだよー。子供は!そうだ、今度うちに来ないか?」

超行きたい。

この堅物と思われていたオーネンスさんをここまで骨抜きにするその子供を一度見たいのと、何よりはこのわけ分からん仕事から解放されたい。

迷うことなんかなく、

「もちろん行きます。」

二つ返事でそう答えた。


そもそも大臣になったのはゴルジオなんだからあいつが頭を使えって話だろ!

うちの参謀も体だけじゃなくて頭を使え!

そもそも会議中に俺は中に入れないんだからなおさらゴルジオが頑張らないとダメだろ!


その後、適当に今後の方針をまとめた紙をゴルジオら幹部数名に押し付け、オーネンスさんの家に行くため、息苦しい本部という名の地獄から他人の家という天国への階段を上りだした。






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