フレロレ、6
「5人会議って本当に5人なんだな……。俺もてっきり補佐とかで参加できると思ってた……。」
「残念だったな、キーデル。俺達みたいな一般人は参加できないんだよ……。ちゃんとした実績がないとな!でも、ただ見上げてばっかじゃダメだよな。そのうち会議に参加できる枠が増えるって話だし、それまでに俺たちにできることを頑張ろうぜ!というかそんなことに驚いたのかよ。もともと俺達には敷居の高い話じゃねぇか!」
「ああ、それじゃない。一番驚いたのは……。スライル様が大統領解職されたぞ……。」
「らしいな……。新聞に載ってた……。」
「もう!俺はゴルジオ様から聞いただけど、間違いない。そう言ってた……。」
今日3人が集まったのはキーデルの引っ越し祝いだった。
グレンは店決めの権利を奪われ、キーデルは祝われる側ということで僕が店探しをすることになっていた。本当は別によく3人で集まっているから別にいいんじゃないと思って中止にする予定だったのだが、今日このスライルさんの解職を知って是非とも国の中枢の話を知りたいと思ってお店を探した。僕たちにはもう国の中枢とのパイプだったスライルさんはいないため事実はゴルジオ様から聞いた話をキーデルにしてもらうしかない。
「はーい!オレンジジュース3つね!あんたたち若いんだからアルコール飲みなさいよね!そっちの方が高いんだから!私の懐が幸せになるでしょ!」
頭巾をかぶった女店員はそう言ってテーブルの上に黄色い液体が入ったコップを並べると上機嫌で立ち去った……。
ごめん、キーデル……。
グレンとキーデルは二人で盛り上がっている間、僕は一人思考を巡らせていた……。
そう今朝の新聞で国民に知れ渡った、スライルさんが解職されたことは……。
国はこれからどうなる?僕はこれからどうする?
そんなことばかり気になって本来の僕の仕事であるトルニエ事件のトルニエ様の周りで起こったことを整理するということが全然できていない。
そっちはもういいしね。
「おい。フレロレ。お前どう思う。これからの国の展望は?」
グレンは手に取ったオレンジジュースを一口飲んで僕に意見を求めてきた。
てっきりスライルさんが解職された原因の話をするのだと思っていたが、確かに国の中枢にスライルさんがいないのならスライルさんのためにしかならない話は必要ない。
国の展望……。
今国の中枢にいる人はスライルさんほどではないとはいえそれなりに実績を積んできた人だ。そこまでわけのわからない展開になることはないと思うけど……。
わからない。突然権力を持った人間がどんな行動に出るのか……。
「良くなるか悪くなるかは正直なところわからない。放っておいたら悪いことにはならないと思うけど、そこに何か欲望とかが加わったらどうなることか……。」
「そうだよな。今はまだ何とも言えないんだよな……。」
ため息交じりにそう言うグレンは少し肩を落とした。
グレンは能天気でポジティブシンキングだけどプライドもあるし責任感もある。決して馬鹿ではない。グレンが目に見えて落ち込むのは珍しいが何か思うところがあるのだろう……。
グレンも少し気になるがやはり僕はスライルさん事件の方が気になる。
「そう言えばキーデル、新聞には載ってなかったけどスライルさんの後任は誰なの?」
「ナートルさん。」
「ああ、それ聞こうと思ってたんだ!新聞に載ってたけどな!なんでナートルさんなんだ!?」
さっきまで落ち込んでいた風のグレンが目を見開いて言った。
「ああ、うちのゴルジオと決戦投票の末そうなったらしいよ。ゴルジオ悔しがってたし……。」
「は?」
グレンはアホみたいな面で固まっている。
無理もない。
僕もてっきりバルテニー様あたりがなると思っていた……。
なんだ、どうなっている?
「キーデル、全部本当のことなんだよね?」
「ああ。」
僕も半信半疑だったけどキーデルは少しも笑ってはいない。
本当のようだ……。
「グレン、やっぱりよくない方に行くかもしれない。」
以前トルニエ様が言っていた。
人を騙すのに二通りの人がいると……
愚者は他人に嘘をつき、
賢者は自分に嘘をつく。
立場や環境が変われば人の考え方は変わる。
僕があの会議の中で見ていた感じではあの場にいた人たちは国のためにと頑張っていたが、本当は自分の本音を偽っていたと考えていた方が良いのだろうか……。
なんにせよ、このままではダメだ。




