ゴルジオ、5
この世界は俺が望むように進んでいく、それが楽しくて仕方ない。
数か月前にこの大陸で起こる戦はすべて終わり、大将軍として世界に名を馳せた俺だが、特にやることがなくなった。
それからは酒だ女だなんだかんだとやりたいことをやりたいようにやるだけの日々。
それ自体は楽しかった。
仲間たちとばかやってげらげら笑って……。
だが、新しい国、争いのない国ができて、明らかに周りは変わった。
俺の得意分野である戦いがなくなった以上俺を必要としない人が増えた。
建物壊したり、遊びに出だしたり、好き勝手が許されなくなっていった。
俺の自由が奪われていった。
このまま、俺は徐々に消えていくのだろう。
そう思っていた。
いや、そう思わないように、そう考えないように酒や女を使ってやりたいようにやっていたのかもしれない。
そんな俺が今、
何だかよくわからないうちにトントンと進み、
この国を自由にできる椅子を争えるまでになることを誰が想像できたというのだろうか。
何だかよくわからないうちに参加することになったこの5人会議だが、いつの間にか最終決戦を迎えている。
最初に何だかいきり立っていた禿げたおっさん、あの人がてっきり大統領になるのかと思っていたらそうじゃないらしい。
隣の小物感漂うおっさんもさっきまで何やらほざいていたが、ガンつけたら静かになった……。
こいつも敵じゃない。
残ったのは小娘ただ一人。
ただこいつはガンつけても、脅してみてもなかなかどうして引かない。
言っていることはこの中で一番中身がないのに……。
「俺がやるって言ってるだろ!小娘にはまだ早いんだよ!」
「あなただってまだこの会議に参加して日が浅いじゃない!そんなんじゃ、国民を導けないでしょ!その点私なら経験があるから問題ないわ!」
「お前みたいな小娘についていくやつもいないだろ!その点俺には万の大軍を率いたこともあるから適役だ!」
「その時は目的が単純明快だったからじゃない!これは戦とは違うのよ!答えのない道をあなたがどうして導けるのよ!」
……俺が大声を張り上げれば勝手に俺のところに椅子が転がり込むと思っていたのだがこの小娘……、なかなかやりおる。
何かを背負っているのか……。
とは言っても俺も引く気はない。勝てばメンデルが牢を出てもここに居続けることができる。そうすればあんな田舎の警備なんてしなくて済む。ここには酒も女上等なものが揃っているしな。めんどくさいことは……、まあキーデルあたりにやらせればいいだろう。
このトントン拍子で俺に都合よく事が運んでいるのは、これは俺に大統領になれと言う神からの暗示に違いない!
こういう時は何をやってもうまくいく。
「もういいです。これは多数決をとりましょう!私とゴルジオさんの決選投票です!」
小娘が提案する……。
多数決なんて久しぶりだ。
「面白い!」
どうせ俺が勝つに決まっている。
こんな小娘に国を託すなんて正気の沙汰じゃない。
確かに俺に喰ってかかる態度はすごいけどな。
そこのオヤジはひと睨みでもう何も言えなくなってるんだから。
ナートルとか言ったか……。
「とは言っても……。」
「このままでは票が割れるかもしれないだろ……。私の票はバルテニーさんに預けるよ。それでいい……。それでいいから早く終わって……。」
ナートルが何かを言いかけ、それを見て察した小物が泣きそうな面で言った。
それを聞いた禿はじっと考えてこむ。
どうせ俺を選ぶことになるんだからとっととしろよな!
長い沈黙の後、やがて禿が口を開いた。
「今回は……、ナートルちゃんに大統領になってもらおう。彼女の方がここに詳しいからね。何より私としても彼女の方がサポートしやすい。」
おや、どうやら俺は大統領にはなれなかったらしい……。
メンデルが出てくるまでの期限付きだがここでの生活を楽しむことにしよう。
もしかしたらその間に大統領の椅子を奪い返せるかもしれないしな……、なんかこいつバカっぽいから……。




