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スライル、5

お前はあの時……。

……うるさい!

あの決断は本当に正しかったのか……。

……黙れ!

お前を……。

……、もう……、やめてくれ……。


「スライルさん……、スライルさん!」

意識の外から呼びかけるようなバルテニーさんの声が聞こえ、ふと我に返る。

「大丈夫ですか?しっかりしてください!」


……別に寝ていたわけではない。

ただ最近ふとした瞬間に意識が抜けるような……、そんな感覚に襲われる……。

……あいつが、

……あいつの呼ぶ声が、

毎日、絶えず、無限に……。


今はしっかりしなくては……。

「すみません……。ええっと今は何をしてたんでしたっけ?」

「今は5人会議の最中ですよ!」

周りを見回すと確かにいつもの会議室だ……、いや、あれ?

「なんでそこにゴルジオさんが?」

「何言ってるんですか!メンデルさんが辻斬りの容疑がかかって今拘束されてるから代理で来てるんですよ!さっきも言いましたよ!」

「そうでした……、……そうでした。」

だめだ……。しっかりしなくては……。

……。

なんで私はこんな……。


先ほどまで少しいらいらした様子だったバルテニーさんが一息つくとあきらめたような顔をした。最近不甲斐ない私の代わりにこの会議の進行をしてもらっている。

いつもはしっかり行ってくれているのだが、今日はいつもと違うな……。

そう思っていると彼の口からとんでもない言葉が飛び出た。

「前回も言いましたがやはりスライルさんには休養が必要です!私が最近のスライルさんの様子をまとめた資料を用意しました。これを見ればわかりますが、最近のスライルさんは目に余る行動が多いです。スライルさん、少し休暇をとってはいかがですか?」


確かに自分でもわかっている。私が疲れていることに何かにつけてボーっとすることが多いことも。

でも、それでもこの役職は降りられない!

私は誓った。この世界を素晴らしいものにすると。誰もが笑って過ごせる素敵な国をつくると!トルニエに、イーリスに、共に戦い散っていった戦士たちに……。


「私は休みません。私がやらなくてはならないことがまだ沢山あるんです!」

誰が休むものか!

私がこの世界をつくるのだ!


バルテニーさんはハァーっと息を吐くと覚悟を決めた表情をつくる。

「面と向かってこんなことを言うのは正直恥ずかしいのですが、あなたが作ったこの世界は素晴らしいものだ。あなたのことを尊敬している。しかし、今のあなたにはかつての魅力がもうない。あなたにはあのころのあなたに戻ってほしい。そんな願いを込めて、今回、私は正式にスライルさんの大統領解職請求をします。」


「なっ!?」

解職請求?

私を?

何を世迷言を……。

私がどんな状態であっても私の代わりに、私ほどこの国を思っている人がここにいるとは思えない。


まあ、それにそう思っているのはおそらくバルテニーさんだけ……

せっかく作ってきたこの資料も結局は無駄。

もっと国のためになることをしてくれればいいのに。

彼には彼なりの知見からこの国を引っ張っていってもらおうと思っていたのに。

この人を誘ったのは失敗だったのかもしれない……。

この解職請求が終わったら逆に私から解職請求してやろう。


「それではこのまま僭越ながら私がこの議題について進めたいと思いますがよろしいでしょうか。」

「どうぞ。」

特に何も言わずそのまま話を進めさせる。

私の勝ちが決まっている戦いだ。

お前の解職の前祝いにこの茶番劇に付き合ってやろう、バルテニー!




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