キーデル、3
「――ってわけなんだけど、どうだ、キーデル。力を貸してくれないか?」
急に呼び出されたから今日飲みに行くのかと思ったけど、違った。
グレンたちはやっぱり面白いことを考えるな……。
「もちろんだ。」
俺はグレンたちの提案に即答する。
俺たちが主体的にトルニエ事件の捜査をする……。
それができるのにやらない手はない。
何より話を聞いただけだと結構突拍子もない話なのに、グレンが言うとそれができない気がしない。
それに俺も困っていたところだ。
トルニエ様が反乱なんてしょうもないことするはずないのに、スライル様も他のみなさんもすっかりこの事件の捜査に参加する気がなくなってしまって……。
あの人のもとで様々なことを学んだ、学校でも戦場でもそれ以外の日常でも、あの人はいわば父親みたいな人だ。
すべてを解決して早く俺の恩師を牢から出してあげたい。
そのために俺ができることは何だってする。
「それで具体的にはどうするんだ?」
唯一曖昧なままだった捜査方法について言及すると、それはと言ってフレロレが答えた。
「トルニエ事件で不可解な点は多い。僕が思うこの事件のキーパーソンはトルニエ様とゴルジオ様の二人だと思うんだよね。この二人には謎な点がある。」
「というと?じゃあまずトルニエ様の方は?」
「まず、トルニエ様の話を聞いた限りでは、家の近くで油断してたら襲われて、気づいたら反乱軍の中にいた、って話だったよね。」
「だいぶ雑だけど、そんな感じだ。」
「僕のイメージだとトルニエ様は結構鋭い人だと思うんだ。そんな人が何もできずにこんなことになるかな?まあ調べてみないと……、今ははっきりと疑問を言葉にできないし。トルニエ様は僕が調べるよ。トルニエ様に対してこの中で一番個人的な感情が少ないからね。」
今までスライルさんが調べてわからなかったことが、フレロレにどうにかなるとは思えないけど、俺はトルニエ様には父親のような感情があるし、グレンには詳しくはわからないけど師匠の恨みがある。確かにそれがいいな。
「一人につき一人が調べるのか?」
「うん。まあ、キーパーソンは二人なんだけどね……。キーデルはゴルジオ様を担当してほしいんだ。なぜあの時ゴルジオ様は北区にいたのか?」
「それは前にも言ったけど、あの人は遊びに行っただけだから!」
「うん、そうだったね。報告会ではその辺突き詰めてほしいんだけど他にもゴルジオ様が普段何をしているのか、どんなことをよくするのか。」
「それで?」
「それでゴルジオ様に変な動きがないか監視してほしい。この事件はトルニエ様が牢に入るところで終わりというものじゃないと思うんだよね。」
「俺もそう思う。」
やはりそう思うのが普通だよな。
「そして、グレンは反乱がおこったという南区の現場とトルニエ様が襲われたという西の湖を探るっていう分担なんだけどいいかな?そこで何か手がかりになりそうなことがあれば持ち帰ってほしい。」
「了解!」
グレンは親指をつきたてる。
「なにか質問とかある?」
フレロレがおどけた顔で聞いてきた。
「特にないけど。そういや、グレンの旅費とかはどうするんだ?」
グレンにそんなにいろいろ行くだけの蓄えはないだろう。
「それは俺らでこれからスライルさんにお願いしに行ってくる。」
とドヤ顔で答えるグレン。って!
「まだ、お願いしてなかったのかよ!それが通らなかったらすべてなかったことになるぞ!」
「でも確実にお願いを通して見せっから、この件は頼んだぜ、キーデル!」
「お前がそう言うんならわかったよ。長い付き合いだ。任せろ!」
二人は笑顔で立ち去った。
さてと二人から任されたのはゴルジオ様の監視な……。
そう言えばメンデル様のところから新しく配属替えで送られてきてたな……。
名前は確かオーネンスとか言ったか。
あいつと一緒にこの仕事ができれば……。
とっつきにくそうだけどこれもすべてはトルニエ様のため、頑張りますか……。




