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グレン、会議場のドア前

建国記念の日から一か月……。

この一か月で街並みはだいぶ変わった。

街には背の高い建物が増え始め、燦然とした太陽と人々の笑顔はいつ見ても眩しい。

人の声が聞こえない日はないくらい街は活気づいていた。

このままだと来年にはきっと想像もつかないことになっているだろう。

俺は目覚ましく成長していくこの国の第一人者の身を守る仕事をしている。

これ以上に幸せな仕事があるだろうか……。


俺は会議室のドアの前に寄りかかり、ぼんやり街を眺めている。

寄りかかったドアの向こうからはこもった声が聞こえてくる。

奥の会議室ではスライルさんと5人の大臣たちがこの国の方針を決めるための話し合いをしている。

フレロレは警備という名目で会議室の中にいて、俺はドアの前で来るかもわからないというかいるかもわからない敵に備えてドアに寄りかかって外をぼんやり眺めている。

フレロレがいれば「グレン、まじめにやりなよ」とか言うのだろうが、ここまでくる人間はそうそういない。

まず、ここは王宮の4階だ。

あまりに怪しい奴は王宮に入る前に捕まるし、外壁を登ろうにもこの王宮はよく目立つ。

王宮と関係ない人でも誰かが気づくからここに来る前にとっ捕まるだろう。

ここに誰かが襲い掛かってくることはまずない。

狙うなら街に出たときや風呂に入っているときや寝ているとき、一人でいるときなどでこのタイミングで危険を冒してまでやってくることは考えにくい。


それに万が一そんな変態が来たとしても俺は自分で言うのもなんだけど結構腕が立つ。この国最強と謳われた戦士に戦い方を教わり、未だかつて負けたことはない。どんな奴が来ても追い返せるだろう。師範にここまで成長した俺の姿を見せられないのが残念だ。3年前のガルネシアの奇跡の時に死んでしまったから……。

……湿っぽい話はやめておこう。今は前を見据えていることが師範への手向けだ。


ここに刺客が来ることはないにしても最近は物騒だ。

昼間は活気づき、人が集まるようになったと同時に闇もまた徐々に大きくなってきている。

ここ最近、この国の権力者が次々闇討ちに遭っている。

狙われているのがスライルさん始め5人の大臣のような大物ではなく、そこそこ程度の力しかない人物というのがなんとも言えないのだが…、この一か月で5人も殺られている。その姿を見た者はいないため、手がかりが全くなく、治安を守る立場であるメンデル様は毎日イライラしている。

ドアから聞こえてくる声はおそらくメンデル様のものだろう。

今は小物ばかり狙われているようだが夜は特に気を付けないと……。

それまでちょっと休憩……。


空に浮かぶ雲のようにただのんびり流れる時間に身を任せていると……、



突然、事件は始まった。


誰かがどたどたと階段を上ってくる音がする。

襲撃か?やっと仕事か!?

いや、ここまで気配消すのが苦手な奴に襲撃は無理だ。

じゃあなんだ?


突如、踊り場から姿を現したのはなんと見知った風貌の男、キーデルだった。

俺の姿を見つけるとそいつはものすごく慌てている様子でばたばた駆け寄ってくる。

キーデルは普段は冷静な男だ。こいつがこんなに慌てているなんてよっぽどのことがあったのだろう。


「キーデルどうした、そんなに慌てて。何かあったのか。」

「あのあのあのあの、あれあれあれあれだよあれ、グレン、あれだ。」

思った言葉が出てこないことに苛立っているように小刻みに壁をたたくキーデル。

とても冗談を言っているようには見えない。

「とりあえず落ち着け!深呼吸しろ。」

キーデルは大きく深呼吸すると少し落ち着いたのか、妙な動きは止まったがまだ眼球が右に左に行ったり来たりしている。


「落ち着いてからでいい。何があったか、ゆっくり話してくれ。」

キーデルはもう一度深呼吸をすると泳いでいた二つの目玉がピタッと俺の方を向き、そして、言った。

「実は――」


「なんだって!」

キーデルが言った言葉に俺は耳を疑った。

まさかそんなことが起こるなんて……。


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