二人っきり
あの出会いから数ヶ月が経った…
あれから彼女と何度かオフ会で会う機会があったので、その度に色々と話そうと思っていた。
でも彼女は人気者だったので、中々じっくりとは話す時間は取れなかった。
それに彼女はお酒が大好きで…オフ会の後半になると絶好調に酔っていて、じっくり話すって雰囲気では無くなっていた。
(…ま、しょうがないか…そのうち、ゆっくり話せる時間が取れるさ)
そんな事を考えながら、毎回のオフ会を楽しんでいた。
そんなある日、偶然にも二人っきりになる時間が出来た。
俺はその日たまたま仕事帰りだった為、車でオフ会の会場に行ってた。
それをメンバーに言ったら、「家まで送って!」と言われ…数人を送って帰る事になった。
メンバーを一人、また一人と順番に送っていったら…最後は彼女と二人っきりになった。
最初はその日のオフ会の話とかをしていたけど、段々と会話が途切れてきて…少しの間、お互いに黙ってしまった。
(どうしよう…何か喋らなきゃ…)
内心ちょっと焦った俺は、会話のネタを必死で頭の中で考えていた。
「…ねぇ?聞いていい?」
そんな必死になっていた俺に彼女は問いかけてきた。
「え!?な、なに!?」
突然の問いかけに俺はちょっと動揺して、恥ずかしいけど声が上ずってしまった。
そんな俺を見て彼女はくすっと笑いながら話してきた。
「あのね…私の事、どう思う?」
「えっ!?」
突然の問いかけに、俺はびっくりしてしまった。
それを見て、彼女はまたくすっと笑って話を続けた。
「私の事、騒がしい酔っ払い女って思ってない?」
(そ、そういう意味か…)
別な意味を考えていた俺…きっと顔が赤くなっていただろうなぁ…なんて考えながら、俺は出来るだけ平静を装って返事をした。
「ん?そんな事はないよ。周りを楽しく盛り上げてるから、いいんじゃないかな?別に酔って絡んでる訳でもないし」
「ほんとにぃ~~~?ほんとはそんな事思ってないんじゃないのぉ?」
彼女はちょっと上目遣いのやんちゃ顔でこっちを見ながら聞いてきた。
そんな仕草にちょっとドキッとしながら俺は会話を続けていた。
「そんな事無いって。いっつも周りの人を楽しませようとしてるでしょ?凄いと思うよ。」
事実、オフ会には多い時は10人以上集まるのに、その全員を楽しませようと喋ったり、時には他人の会話にツッコミを入れたりする彼女を俺はいつも感心していた。
「お~~~よく見てるじゃない!流石だねぇ~~~」
彼女は笑いながら答えてくれた。
「でもさ…ちょっと無理してる時もあるんじゃないの?」
「…え?」
「なんか時々、ふっと表情が暗くなるって言うか…寂しげな時があるからさ…もしかして、無理してるのかなぁ…なんてさ」
その言葉の後、彼女からの返事が返ってこなかった。
(あ…ヤバイ…もしかして余計な事でも言っちゃったかな?)
俺はちょっと焦って、話題を変えようと必死に次の話題を頭の中で考えた。
「……ほんとに…よく見てるんだね…」
彼女はフロントガラス越しに見える、流れる街路灯を見ながらポツリと呟いた。
そんな彼女の横顔は、いつもの明るい顔では無く…時々見せていた、あの寂しげな表情だった。