出会い
「初めまして…でいいのかなぁ？」
彼女はちょっとバツの悪そうな顔をしながら話しかけてきた。
そこで俺は彼女に初めて出会った。
でも…俺は数年前から彼女を知っていた。
あれは何年前になるんだろう？
俺は偶然、彼女が開設していたホームページを発見した。
そこに掲載されてた日記には日々の色々な出来事を楽しそうに書き綴っていたし、交流用に設置されてた掲示板もいつも楽しい仲間達との書き込みで賑わっていた。
その素直で明るい表現で書かれている文章を見て…俺は何となく好感を持ったので、その掲示板に参加してみた。
初めて参加した俺に対しても、彼女は他の人と同じ様に楽しいコメントを返してくれた。
それからは掲示板やメールのやり取りで、文字での会話を楽しんでいた。
何度かやり取りしていると「今度、皆でオフ会でもしたいね～」と彼女は言ってきたので、
「いいね～同じ地域だから、絶対に参加するよ。もしそこで会えたら…俺の大好きな言葉を君に送るよ」と返事していた。
でも、それから少し経った頃…ただ一言「疲れた」とだけ書かれた日記が更新された。
その後…
ホームページの日記も更新されなくなり、
掲示板の返信も無くなり
メールも宛先不明で返ってきた。
そこで彼女との繋がりが途絶えてしまった…
それから数年後。
たまたま登録したＳＮＳサイトで同じ地域の人を検索してみた。
「あ！このハンドルネーム…もしかして！？」
そこにあった名前は、間違いなく彼女のハンドルネームだった…俺はすぐにメールを送った。
【突然で失礼します。あたなのＨＮに見覚えがあってメールしました。もしかして、昔ＨＰを開設してませんでしたか？】
しばらくして、彼女から返事が返ってきた。
【確かに以前ＨＰを開設していましたが…なぜ知っているんですか？】
俺は確信した。
（間違いなく、彼女だ！）
広大なネット空間の中で再会出来るなんて、こんな偶然もあるんだなぁ…って、ちょっと驚いてしまった。
そして今夜…彼女が参加するオフ会に俺も参加した。
挨拶の後、彼女はこう言った。
「…ごめんね、私…あなたの事はなんとなくしか覚えてないの」
俺はポツリと呟いた。
「…やっぱり」
これが初めての「出会い」だった。
