続く悪魔
逃げて逃げて逃げて……………。
途中、綺羅さん の悲鳴らしい声が聞こえるのを空耳と思った。だって、ありえないですもの。
振り切って何キロだろう。もう家は見えなくなってしまった。しかし…
「あ…ネツ み〜つけー」
ダッシュ!ダッシュ!!ダッシュ!!!
「どうしたの〜、ネツ〜?ジョギングはもういいんだよ〜」
「そうよ、ネツ。こっちにおいで〜」
「一緒に笑顔になろうよ〜」
完全に狂った 綺羅さん と かの が、並んで道ずれを増やそうとしている。
「来るなーーーーーーー!!!」
「「「ネツうぅぅぅぅ!!!」」」
ギイヤーーーーーーーー!!!
あ、もう振り切る自身がない。でも、この距離を保ってれば問題なんて……
ガシッ!
「………つ〜かまえた♡」
「「………………いらっしゃい……仲間の輪へ」」
恐ろしく笑顔な かな と、完全に何か見えてるような顔をした 綺羅さん と かの が後ろにいた。よくあるよね、後ろの正面、だ〜あれ?
アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
記憶はない。ただ、腹がやけに下痢っぽくなっていた。
トイレ地獄から解放された俺は、取り敢えずあの紙のことを思い出す。あれは一体なんなのかはわからない。
「一体誰があんなものをー」
…私だけどね〜
「!?」
周りを見る。しかし、あるのはトイレと長い廊下、そして時々通るメイドしがいない。
…探しても無駄だよ〜
声からするに、10代の女の子だと思う。
…おっ、すごい……ほぼ正解だね
どうやら心を読むことができるらしい。
…そうだよ〜……探偵に向いているよ〜、君
探偵になれるほどの知識はないさ。まして記憶がはっきりしてないのに…
…それはそうと、あれ…決めてくれた〜?
『あれ』とは、『選択肢』のことだろう。
…さすが〜、正解だよ〜
「さっきからうるさい」
…そりゃ済まない……でも周りには聞こえないから気をつけて
そう、周りから冷たい視線を感じる。
…で?
もちろん答える義理などない。
…よっ、カッコイイ!!
そりゃどうも。
…まあ、決めないといけない時に決めるといい…おっと、時間だ
「ち、ちょっとまて!」
もう、奴の声は聞こえなくなっていた。しかし、なんだったのだろう?
「名前くらい教えろよ…」
ポトッ
紙が俺のつま先に落ちた。しかし、何処から?
『板井 瑞花
15歳
女
趣味:ギャルゲー
電話番号:XXX-09X4-XX09』
いや、『ギャルゲー』は趣味じゃないだろ!てか、何故に番号付き!?
(『選択肢』決めた?)
「あんなの、決められるか!」
と、名刺を投げたが、着地する前に消えた。
のちに、名刺は俺の胸ポケットの中にしまってあったことを知る。
この日、もう一つ事件が残っていた。
「キャアァァァァ!!!!!」
悲鳴は俺の部屋で…えっ?俺の部屋?
俺の部屋に到着!よくあるセリフの準備完了!
「どうした!?何があった!!」
「キャァァァァァァァ!!!!!!!」
バシン!!
意識が戻るのに数分とかからなかった。
バチン!
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
「驚くの遅い!」
と、何故かここにいる、さっきの声の張本人、かな がいた。
「何俺の部屋に入ってるんだよ!?」
「あんた、居候でしょ!!」
そうだった、居候だ。
「で、居候の俺の部屋になんかようか?」
「え、ええ、その通りよ!」
威張るなよ。居候といえ、男の部屋だぞ。
「で、この状況は?」
と、この抱きつかれてる理由を聞いている。仄かに当たる感触から、理性を保ちながら…
「え、何が?」
と、この『状況』の内容に気づくまでに、理性が飛ぶ一歩手前で察してくれた。
「きゃあ!!」
と、飛び出た。
「…で、何があったの?」
「えっと…ご…」
「ご?」
「ご…ご…ご……ごぎ…ごぎb」
「もういい、わかった」
すなわち『G』だろう。ロボットの『G』ではなく。
「で、どこにいる?」
「そこっ!!」
と俺の机を指差す。
あれ、今光ったぞ。扉を開け、救援を呼びたいが、外に出られたら最後だろう。扉は閉めるべきだろう。
「どうかしましたか!?」
「いま、開けないでください!『G』がいますので」
それだけでメイドは納得したのだろう、開けなかった。
それから『G』撃退会議が開かれた。もちろん、二人で。
「あれ、あと何匹いー」
「やめてーーー!!」
と叩かれた。
さあ、捕まえる時が来た。
「いいか、近づくなよ」
「いいから早く取ってよ!!」
と、そっと近づく。
あと3メートル。
あと2メートル。
あと1メートル。
よし、あと30セン…
…邪魔って、ここぞとばかりの時くるよね〜
「はあ?」
「どうしたのよ、ねー」
「オネー様ァァァ!!」
ドガシャン!
厳重にロックしてあった扉を壊して入ってきた闖入者。もちろん『姉LOVE』かの だ。
「この薄れ泥水ボロ雑巾がァァァァァ!!」
とキック。
「この…」
腐れシスコーーーーーン!!
ゴスッ!
ぴゅうぅぅぅぅぅん
ドシャッ!
グチャ!
グチャ?
…あ〜あ、きったね〜
はあ?
「ネツ、だいじょー」
という かな と、哀れな目で見るシスコンがそこにあった。
「ティ、Tシャツ…」
そう、そこにはあの『グチャ!』の意味まだがあった。もちろん、得意なわけでもなく…
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
そりゃ絶叫するさ。