怖いこと
ひとまず菓子でいいか、とある程度多めに買ってかな達と合流した
「…やっぱりホラーが一番だと思うんだよ!」
「はいはい、分かりましたから」
まさか かながホラー好きとは思わなかった。この熱弁そろそろ10分立つぞ
「……よく耐えれるな、かの」
「こんなのお姉様の魅力の一つですから!」
「そうか。さすがシスコン」
「『愛してる』とも言えます!」
「あっそ」
それから かのは かなの話に入っていった
さすがにいろいろ聞いていたけど、まあ女子って普通に《ラブコメ》とかの恋だ愛だとかいう映画が好きじゃないのか?まあ人それぞれなんだけどな
「ふぉふ、ふぉはふぇひ……なんだい君、『そんな馬鹿な』みたいな顔して」
帰ってきた俺たちは、板井が何か食っているところで驚愕している。だって、明らかに今作ったとばかりにある野菜炒めや肉料理やら、どれも明らかにスペックが高い物尽くしだ
「…まさか、お前が作ったのか?」
「失敬な。私をなんだと思っている?これでも家の中でなら家事全般は出来るぞ。いつか専業主婦になるために!」
こいつの野望はすぐに潰えてほしいが、何よりこのスペックは……
「そういやあのメイドと執事兼料理人が見当たらないんだが––––」
「「お願いします!俺(私)達の一週間の料理を作ってください!!」」
「土下座!?」
かなはびっくりしているが、流石にかのも同じことを思ったのか、すごく深々と土下座した
「……ははーん」
少し冷めた目で見ていた板井も、かなを見て理解したらしく
「よし。利子なしで請け負うとしよう!」
「「ありがたき幸せ!!」」
「納得いかなーい!!」
一人残して、こうして同盟は結ばれた
風呂上がり、俺たちは借りてきたビデオを見た。タイトルは『芝子 4D』なんてものだ。なんかつまらなそうなホラー映画だな。ぱちモン臭がする
「………ひっ…」
「………」
「……ふぁっ……!」
「…………」
「…………ほぇっ!」
「あのさ」
「ひっ!……なに?」
「そのさ……さすがに離れてくれない?近い」
「い、いやよ!」
「あっそ」
「……ひゃあ!」
「…………」
「………ひぇっ!」
「…………」
……現状を説明しよう。俺はかなに抱きつかれている。右腕が動かせない。そしてほのかに当たる……うんないな
とにかく、吐息が近い!腕柔らかい!凄くやばい!
「……ホぁっ!」
「…あのさ、お前ホラーが好きじゃなかったのか?」
「す、好きだよ!」
「じゃあさ、なんでくっついてくる?」
「す、好きと怖くないは別物!!」
「さいですか……」
どうやら別物らしい。好きなのに怖い……難ある性格してますな。あ、だから《複雑怪奇》になったのか!……なーんてな
かのは序盤でノックダウン。どうやら耐性はないらしい。板井は……ノックダウンだが絶対意識あるな。さっきからクスクス笑っていやがる
「………ふあぁ……」
しっかし、この映画以外と長い。それに驚きはあるがあまり怖くない。まだあの時の方が怖かったくらい……
『「ナンデタスケナカッタノ』」
(!?……違う、俺は助けた––––)
「キャーーーー!!」
「うぉ!……耳が…」
一瞬、映像の髪長な女のこのセリフが、どうしてか焼け爛れた綺羅さんでリフレインしてきた。しかし至近距離で叫ばれてすぐにそちらに戻された。ある意味安堵していた自分がいた
かなは思いっきり俺に抱きついてきて、少し俺は焦る。さすがにこれはまずい
「……なあ、見るのやめるか?」
「……まだ…あと少し」
「了解」
降参だ。さすがに本人が潤んだ目なのにまだ見る意思がある以上は付き合うしかないだろう。本人に自覚なく能力使われちゃ厄介だしな……
あれ?そういやこいつって能力使えるのかそもそも
確か度々の綺羅さんがイタズラでは火の玉とか色々やっていたよな。あと日だってマグマを––––
……ちょっと待て。『火の玉とか』?そういや俺っていつからいるんだ?どうして火の玉とかが思い出せるんだ?俺は数日であの事件が起きたし、それまでは寝たきりのはず。じゃあこの記憶は……
『………ーー!』
『分かっている!こいつは危険だ!!』
『……貴方、そんな戯言がまだいえるんだね…!』
『……酷いよ…思い出して……『お兄ちゃん』』
『…わたしはいつだって…どこにだって迎えに行くよ……たとえわたしが世界の敵になってもね』
『『お兄ちゃん』、わたしの名前を、◯◯を覚えてて––––』