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SELECT REMEMBERS 【修正前版】(旧「remember」)  作者: ヨベ キラセス
第一章 覚醒
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特殊な症状

「お〜い、ネツぅ〜、起きなさいよ〜。ランニングするよ〜!」

「……あと…五分だけ………」

 という一言を受け入れてくれなく、

「セイッ!」

 の一言で布団を没収された。

「あんたね〜、何にもなかったような顔しているよね。あんたが今、どんな状況かわかっているの?」

『どんな状況か』の意味が、この時間のことでないのはわかっている。

「ああ、分かってるつもりさ……分かってる…分かってるさ………」

 と、自分に言い聞かせるように言った。

「あー、もう!こんなんで大丈夫なの…たくね〜……まあいいや。早く来なさい、いい?答えは聞かないけどね」

 と、反論する間もなく、ここ二階から下へ降りて行った。



 俺は『洲崎スザキ 熱也ネツヤ』と言うらしい。俺は今、三日前からの記憶を忘れている。俺は少し離れた道路で倒れていたらしい。運が良かった事に、車が通らない時間だったらしい朝方であった。意識のない俺を、早朝ランニングを趣味にする『染崎ソメザキ かな』(つまり、さっき起こしに来た少女)に、通りがかった時に俺を助けてくれた。今でも恩を感じてはいる。それは一生思い続けるだろう。なぜなら、助けてくれたばかりか、彼女の家で看病してくれて、その日の昼間に目覚めた時、すぐに医者に見せてくれたことにより、『あの症状』の状態を遅らせてくれたからだ。



「遅いよ、ネツ!もう十分も経ったのよ!」

「仕方ないだろ、かな。ここって広すぎるんだからさ!」


『染崎 かな』

 それは株で成功した、『染崎ソメザキ 綺羅キララ』により、広大な土地を買い、豪邸を建て、成功を呼び続ける、あり得ない女性の娘である。そして、かな の父は……


「置いてくよ〜。ビリは途中でアイス奢りなさいよ〜」

「…はあ!?聞いてないぞ、そんな約束!」

「だって、答えなんて聞いていないわよ」

 と、もう百メートルも走っている かな を追った。


「…金持ちのくせに」

 と、いやいやアイスを渡して、かな に聞こえない声でつぶやく。

 かな は、『金持ちのくせに』などの言葉がタブーである。彼女はそういうことを散々聞いていて、傷つき続けた結果、『金持ち』と聞くとすぐに激怒し、それが親でも暴れ出すらしい。実際、目覚めた初日の病院で、戻って来た時、角で大暴れしていて、その後に理由がそれだからと、綺羅さんに聞いたからだ。


「全く、俺が病院の時くらいな〜」

「病院?」

 と、かな は聞き返してきて、ビクン!と背筋を伸ばした。

「い、いや、なんでもー」

「…病院……病院………あ!!もしかして、あれのことじゃ…」

 と、赤くなった彼女は、そっぽ向くが、赤くなっていくのが分かる。赤くなる理由は不明だが、ヤバいことは確かだ。アイスを可及的速やかに処理した。

「お、俺、もう食い終わったから走ってるぞ!」

「あ、待ってよ!」

「さっき待たなかったろが!」

 と、染崎邸に向かって走った。



「熱也様、お下げしてもー」

「あ、お願いします」

 と、染崎家専属メイド長の『ツカ 宇佐美ウサミ』さんは、食器を片付けて行った。

「あ、宇佐美さん、『吉原さん』一同に『美味しかったと伝えてください!」


『吉原さん』とは、この豪邸の料理長である。名前は『吉原ヨシハラ 鈴木スズキ』と言っていた。ただ実際には、彼にだけは会っていない。


 料理人は彼を含め五人である。ちなみに、メイドも五人である。

 宇佐美さんは、振り返り、笑顔で一礼後、姿を消すように部屋から出た。

「あ〜、美味しかった!」

「本当にね〜」

「ご馳走様でした」

 と、俺と かな、綺羅さんは言った。しかし

「えーっ!なんか物足りない〜!」

 と、正反対のことを言ったものがいた。かな の妹、『染崎 かの』だ。


『染崎 かの』、彼女は高級なものでも、気に入らなければわがままを言う少女だ。しかも……


「こらー、かの。わがまま言わないの」

「だって、お姉様。事実、ここにこの男がいる地点でー」

「かの!」

 と、叱った かな に、

「…すいません……」

 と言った かの だが、それでも かな を慕っている。いや…大好きなのだが、限度がない。下手すると、姉妹で、同性で結婚しかねない。まあ、かな は無いだろうが……

「…そんなお姉様が好きィィィィィィィ!」


 毎日鍛えてた かな と、ダラダラな かの から予想されるのは、


 ピョォォォォォン!


 ガスッ!


 ドタン!


 であり、リアルで再現された。地面でうずくまっているのは、もちろん かの の方だ。

「お姉様ぁぁぁぁぁ……」

 の、泣き言葉に、

「フン!」

 で返された かの は、石のように固まった。しかしすぐに回復し、

「ですが、そんなお姉様がスキィィィィィ!」

 とほざくだろう。

 綺羅さんは、笑っぱなしだ。

「ねえ、ネツ」

 と、満足な、少しひきそうな顔の かの を無視して かな は聞いてきた。

「あなた、このあと暇?」



「ここが、倒れてたあなたがいたところだけど、どう?」

 と聞く。

「……いや、さっぱりだ」

「そう……」

 と、落ち込む。

「何お前が落ち込むんだよ」

「だって……」

「初日に言ったろ、『そいつの状況で、そいつ自身が』」

「『示した感情が正しい』、でしょ。分かってるわよ」

 と、暗い顔を明るくした。

「ごめんね、なんか」

「だから、その上でー」

「『すぐ謝ることをするな』、でしょ?」

「『せめて俺だけでも』、もな」

 と、話してしていた。

「でも、まさか、ここで『病気』が治るとは……」


『病気』とは、ある時期から突然流行した、『アルツハイマー病』を発生させる菌であり、『流行性アルツハイマー病』と呼ばれ、菌には『ハイマー粒子』と呼ばれている。しかし、その頃には、『アルツハイマー病』自体を治療できる方法が発達していて、記憶まで戻るので、何とか平和を保っている。それを開発したのは……


「…かな の親父さんには、感謝しているよ。治療で治したいんだからな。もちろん、一番の恩人はお前だけどな」

「なに恥ずかしいこと言ってんのさ、ネツ!?」

 と、赤くなった かな に買ってきたジュースを渡す。

「でも、記憶は戻らない、か。済まないな、こんなよそ者が、居候をすることになって。記憶が戻らないだけなのに……」


流行性・・・アルツハイマー病』は基本、記憶は戻るのである。しかし、俺は例外だった。今の状況が証拠である。戻り出すのは最後に消えたとこからだが、今だこうなった理由が分からない。


「べ、別に、迷惑じゃないよ。逆にありがたいくらいよ。だって、広すぎる家の一室がうまったんだから」

「…そう言ってくれると、嬉しいよ」

 それは正直な気持ちである。

「ゆっくりと思い出せばいいんだよ。時間だって、高校生なんだから、まだまだこれからじゃー」

「それじゃあ時間がないんだ!!」

「「!!」」

 と同時に顔を見合わせた。


「「えっ!?」」

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