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セイクリッド・ブレイカー  作者: あすぎめむい
第1話 始まり VS先陣の聖騎士
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フェイズ3

「僭越ながら私、梓 千尋がジャッジをしよう」


 ジャッジと簡単に言うと審判である。大会で問題が起こった時や難しい裁定を持ったカードを使用するときの解決にジャッジが呼ばれることがある。普通この場では必要ないのだが……、できるだけ本格的にしたいのだろう。


「まずは分かっているよな? 夢咲君」


「梓さん、いちいち言わなくていいから。花崎さん、勝負を始める前にまずは『挨拶』をする」


「挨拶?」


「そう、勝負の始める時は『お願いします』、全ての勝負が終わった時には『ありがとうございました』。これはほぼ全てのプレイヤーが自然にしているんだ」


「ほ、ほぼ全ての人が、ですか……?」


 おお、花園さんが驚いている。まあ、そうだよな……。


「そうだ。トレーディングカードゲームは子供の遊びだって言われることが多いけど、実はちゃんとした『知のスポーツ』なんだ。バトルスペースに座った全ての人が、性別や年齢に関係なく……自分の持っている知識や経験を出し切って戦う……だからこそカードゲームは楽しいんだ」


「『知のスポーツ』、ですか……」


 少しは俺達のことを、分かってくれただろうか……。


「さあ、まずはデッキ……山札をシャッフル……混ぜるんだ。こう、トランプのようにデッキを混ぜる」


 花園さんはおどおどとした手つきでデッキを混ぜる、初めてにしては結構上手だな。


「次はお互いのデッキを渡して大雑把でいいので混ぜる」


 俺は花園さんからデッキを受け取り実演する。デッキを三つの束になるように適当に分け、順番を変える。


「なんでそんな事をするんですか?」


「反則防止のためだよ」


「私、反則なんてしませんよ?」


 いや、そんな悲しそうな顔をしないでほしい。


「花園さんが反則をしない人だということは見たらわかる。でも、対戦相手の中には反則をする人もいる。俺は花園さんにちゃんと勝負を楽しんでもらいたいから」


 実際、反則云々で嫌な思いをしたことがたくさんあるのだ。それでも続けているのは、単にカードゲームが楽しいから。


「は、はい」


 俺の言いたいことが花園さんにも伝わったようだ。


「そしてデッキを机の右側に置く。そしてデッキの上から15枚のカードを机の左に置く、これが俺たちの体力になるんだ。最後にじゃんけんなんだけど……花園さんが先行になると説明が難しくなるから、今回は俺が先行をやるよ。そしたら花園さん、次は分かるよね?」


「挨拶、ですね」


「そう、じゃあ……」


『お願いします』


 その二人の声で勝負は始まった。






「お互いに4枚引いて……俺の先行から、まずは『ドローステップ』の説明。ドローステップでは、そのターンの人がデッキの上から手札が5枚になるように引くんだけど、先行の最初にはそれが出来ないんだ」


「どうしてですか?」


 良い質問してくるなあ、この人。とても教えやすい。


「先行は有利なんだよ。例えば、野球で一回表に1点を入れたり、サッカーで最初にボールをとれたら有利だろう?」


「確かに……、そうですね」


「で、次は『出撃ステップ』だ。だけど今はすることがないので飛ばすぞ? そして『メインステップ』」


「教えてくれないんですか……」


 花園さんが少しがっかりしたような感じになる……。


「ちゃんと後で説明するから、急かさないでくれ……。話を戻して『メインステップ』は基本的に4つのことができる。1つ目はユニットのセット」


 俺は花園さんに《竜王 メイルシュトローム》のカードを見せる。


「このカードをこの机の自分からみて手前のところ……『待機ゾーン』にセットするよ。この行動は自分の番なら何度だってできるけど、あまりやりすぎると痛い目を見るから。もう一枚、《桜の町の歌姫》をセットする。他にも、スキルカードの使用、エリアカードの配置、攻撃があるんだけど、今は説明ができないから、また数ターン後に」


「あの……スキルカードやエリアカードって何ですか?」


 花園さんは律義に手を挙げて質問をした。


「それには私が答えようか」


 話に割り込んできたのは梓さんだ。


「このカードを見てくれ」


 そう言って見せたのは《加速する想い》と《鼓動する大陸》という二枚のカードだ、梓さんは《加速する想い》を指差し。


「これはスキルカード。このカードゲームをしているプレイヤー本人が行動以外で唯一場に干渉できる、魔法や技術のようなカードだ。使用するにはコスト……は後で夢咲君が説明すると思うが、を支払って使い捨てで使用する」


 次に《鼓動する大陸》を指差して。


「こちらはエリアカード。コストがいるのはスキルカードと一緒だが、こちらは山札の前にある『エリアゾーン』に置かれ、一番上のカードは永続的に自分の場に影響を与え続ける」


「と言う訳だけど……花園さん、分かった?」


 見てみると花園さんの頭から煙が出てきているように見えた。


「頑張って覚えます……」


 本当の初心者には覚えるのが沢山だからなあ。一度TCGのルールをどれか一つさえ覚えてしまえば後は簡単なんだけど。


「じゃあ、最後の二つ。『ソウルステップ』から。ここではユニット一体につき一枚、手札のカードを『ソウル』としてユニットの下に置くことができるんだ。この『ソウル』というのは文字通りユニットの魂。これが無くなった場のユニットは存在を維持できなくなって、『捨て札ゾーン』に置かれるんだ。僕たちはこの『ソウル』を媒介に、ユニットの効果やスキルカード、エリアカードを使うことができるんだ」


「ユニットの魂を使って、スキルを使うのですか……何だか恐ろしいですね」


「まあ、そうだね。でも、ソウルが無くなったからって死んでしまう訳じゃない、彼らの本来居るべき場所に戻るだけだから……というのが公式の設定」


「死んでしまわなくて良かったです」


 花園さんがほっとしたような顔になる。なんかユニット一枚一枚に感情移入できる人って久しぶりだなあ。皆いつか『そういうものだ』と慣れていってしまうから……。俺も忘れないようにしないとな。


「俺はメイルシュトロームと歌姫に一枚ずつソウルを置く。そして最後、『エンドステップ』。特にやることはないんだけど、これが終わったら相手の人に番を渡すんだ。さあ、花園さんのターンだ」


 花園さんのターン。彼女は一体どんなカードを使うのだろうか。

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