フェイズ1
『セイクリッド・ブレイカー』
最近世界で流行りだしたカードゲームだ。
俺、夢咲 爽もそのカードゲームにハマった一人だ。
俺は数少ない友人を集め、競い合い、そして――。
「……はぁ。正直、面倒だなあ」
今日から俺は高校生なのだ。
俺がこの高校を選んだ訳は家が近いことと、校風が自分好みだったからだった。
入学式を終えて、自分のクラスに仕方なく向かおうとした時、一人の女の子とすれ違った。
制服を見る限り、俺と同学年。背は高校生として……というか中学生としても低く茶色の髪は少し長めだ。
気になったのは彼女が大事に抱えていた、『みき』と書かれた小さな箱。ちょうどカードが入るくらいの大きさだった。
この容姿、どこかで見たことあるような……。
「ま、気のせいか」
同じ学校ならまたどこかで合えるしな。俺はそのまま自分のクラスへ向かった。
先ほどすれ違った女の子の名前は花園 みきというらしい。
俺と同じクラスだったのだ。
彼女は数日でクラスに打ち解け、マスコット的存在になっていた。
どうしても入学式の日に持っていたあの箱が気になるのだが、俺と彼女に接点など無かった。
一方俺は……。
「結局、誰もカードゲームをやっていない、か……」
俺は肩を落とした。
「おいおい、爽。なんでそんなに落ち込んでいるんだ?」
このクラスで初めての友人の勇気が訊いてくる。
「俺はカードゲームはできないけど、きっと誰かはやっていると思うぞ」
この数日間話して分かったのだが、彼は苦学生らしい。流石にカードゲームに誘うのは気が引けた。
「ありがとな、勇気。気長に探してみるよ」
突然、勇気は声を落として聞いてきた。
「ところで、さっきから花園さんが、お前をちら見しているんだが……?」
俺は花園さんの方を見てみたが、彼女は女子たちと雑談を楽しんでいた。
こちらなど気にしていない。
「気のせいだと思うけど……?」
「……まあ、いっか。そんで、部活は俺は普通に運動系にするがお前はどうするんだ?」
「ああ……、もちろん『TCG同好会』。……昔のちょっとした知り合いに誘われて」
「爽の知り合い、ねえ。まあ機会があったら俺にも紹介してくれよ」
その後も他愛のない話をした後、授業のチャイムが鳴った。
「ここか……」
放課後、俺は学校の端にある部活用教室の前にいた。ドアには『TCG同好会』と書かれてある。
今日は仮入部の日、他の男子は運動系の部活を見に行っている。この部屋の前にいるのは俺だけだ。
ドアノブを握るのにいくらか躊躇った後、決心して俺はドアを開けた。
「あの、梓さんはいま――」
「え? ……夢咲さん?」
……目の前にいた花園さんと目があった。