修正版フェイズ3~6 その3
「私の番ですね。デッキから手札が五枚になるように引いて『出撃ステップ』です。《青い魔女の騎士 サファイア》を出撃させます」
《青い魔女の騎士 サファイア》 色:黄 所属:セイクリッド・ナイト/ウィッチ コスト3 パワー1
効果:[通常(自分のメインステップのみ)] コスト1 この効果のコストを自分の待機ゾーンにある、所属:セイクリッド・ナイトを持つユニットにソウルとして置く。
場に弱気そうな青い魔女のカードが現れた。
「では、……『メインステップ』? です。まずは、《青い魔女の騎士 サファイア》で《桜の街の歌姫》にアタックです。サファイアのパワーは1なので、《桜の街の歌姫》のソウルを1枚捨て札します」
サファイアの攻撃で歌姫のソウルは残り一だ。
「花園さん本当に初めて?」
「初めてですよ? ……お姉ちゃんがやっているところは少しだけ見たことがあったけど……。えっと、続けます。メインステップなのでキャラのセット――」
そう言った途端、彼女の手が止まる。なぜか花園さんはカードを胸の前に両手で持ち、瞳を閉じる。
「ん? どうした――」
「――《聖騎士 セイクリッド・アリス》をセットします」
カード名を聞いた瞬間、俺は思わず椅子を蹴飛ばして席を立ってしまった。梓さんがニヤニヤと笑みをこぼしている。
「どういうことだ!? なんで、なんで花園さんが市場に流通していない(・・・・・・・・・・)《聖騎士 セイクリッド・アリス》を持っているんだ!?」
花園さんは何が何だか分からないという様子でおろおろとしている。
「私、ただ……このデッキ、あの……」
彼女の言葉が支離滅裂になっていた。
「どういうことだ。梓さん!」
振り返ると……、梓さんが、これでもかという、面白いいたずらを見つけたような笑みで。
「気づかないか? 彼女……花園さんのデッキのほとんどが前の|日本一決定戦個人戦優勝者が使用したカードだ」
梓さんを無視して花園さんの方を向く、なぜ初心者が誰にも真似できないはずの前環境最強デッキを持っているんだ?
「嘘だろ……、花園さんどういうことだ?」
「私にも分かりません……、夢咲さん、梓先輩、話についていけないので教えてください」
「花園さん、《聖騎士 セイクリッド・アリス》は完全限定生産のカードで、とある理由で伝説のカードになっているんだ」
「どういう伝説なんですか?」
「ああ、《聖騎士 セイクリッド・アリス》が配布された大会全ての優勝者が女性なんだ。そしてその後、《聖騎士 セイクリッド・アリス》全てが行方不明になっっている。誰も使えなかったんだ、前の日本一決定戦までは……」
花園さんは勝負を中断して俺の話に聞き入っていた。
「そこに現れた、セイクリッド・ナイト使いの女性。彼女は伝説となってしまった《聖騎士 セイクリッド・アリス》を駆使して日本一になった。……というより、誰も対策を取れない初見殺しだった」
「……なんでここにあるのかは今は置いといて、勝負の続きをしませんか?」
「そうだな、今は目の前の勝負に集中しようか」
そうは言っても、俺の手の震えは止まらなかった。怖いわけじゃない、俺も一度あの人に負けている。
花園さんがもしこれから、あの時の……、あの人以上に強くなったら。
机の下で握った拳が汗ばむ。
「夢咲君も男の子だな」
梓さん誰に言うということもなく、そう呟いた。
「続けます。私は《青い魔女の騎士 サファイア》の効果を1回使用して、サファイアのソウル1枚をセイクリッド・アリスに置きます。そしてエリアカードの《宝玉の円卓》を配置します。……夢咲さん、これで合っていますか?」
「ああ、合っている。続けて大丈夫だよ」
「えっと、『ソウルステップ』ですね。ルビーに3枚ソウルを置いて、後、エリアカードの効果でアリスにデッキの上からソウルを1枚置きます。これで私のターンは終わりです」
「デッキから手札が5枚になるようにカードをドロー。そしてメインステップ! 歌姫でサファイアを攻撃!」
歌姫のパワーは1、攻撃で《青い魔女の騎士 サファイア》のソウルは残り1になる。
「俺はもう1体の《竜王 メイルシュトローム》をセット、そして『ソウルフェイズ』、手札4枚を今出した《竜王 メイルシュトローム》に、《龍水の滝》との効果でさらに最初の《竜王 メイルシュトローム》にソウルを置いてターン終了だ!」
これで次のターンに俺の切り札を出すことができる。
「夢咲君の準備が完了したか……。だが、花園さんも夢咲君も大型のユニットが控えている。勝負はここからだな……」