二人の男
やっとか書けたぜ!
「クソッ!来るな!」
迫り来るゾンビを拳銃で応戦する世紀末の漫画に出てきそうなほどいかつく薄汚れた男。どうやら背後からやって来るゾンビに気がついてないようだ。
「ぎゃああああ!」
「マイク!」
「「ありえねー」」
画面越しに二人の男が見ながらぼやいた。
旧型の液晶テレビでゾンビ映画を見ていると常々思うが腐敗臭とかで気づくだろ!と内心ツッコミを入れてしまう。
小太りで前掛けをかけた男が椅子を傾けながらペットボトルジュースを飲み干してゲップをしている。これが、俺、名前は吉本 清って言ってな、この店の店長をやっている。
今じゃこんなだらしないなりしちゃいるが、元自衛官何だぜ。大学卒業後に自衛官候補生として入隊した、ここまでは良かった。
曹候補生の試験に合格できず6年がたちに任期満了で退職した。俺がここに来たのは職もなくフラフラしていたのを21年前に先輩のつてでコンビの店長をさせてもらっている。
俺はこの甘い言葉に二つ返事で答えた結果、島送りにされちまったわけだ。T島の開拓時代からチェーン店として店を構えた。
最初の頃は鬼忙しくて毎日ストレスで死にかけたが、最近ではめっきり客がこなくてやる気も出ない。
すでに今日半日、客らしい客は来ていない。来るのは釣りをしに来るじいさん達。昔は開拓に力を入れたが今じゃを過去の栄光に浸るじいさん達ぐらいである。
本土やその他の島は携帯電話やインターネットが当たり前になったがこの島では固定電話や新聞等が主流だ。
14,5年前のことだろうか。自衛隊のネットワークにハッキングを仕掛けたものが現れた。それ以来この島では島の中心に立てられた電波塔から特殊な電磁波が島を覆うように出しており、インターネットや携帯電話はおろかも電話の子機すら使えない。使えるのは電磁波に対応したテレビと固定電話のみだ。
話をもどそう、消費期限ギリギリのパンや惣菜を貪っている白髪混じりの短髪の男、伊久 未来、小学校から自衛隊生活、さらに言えばこの島に流されてまでの長い付き合いだ。こいつと俺と育った家庭環境が違うものの何か引きつけ合うものがあるようで何らかの形で出会いと別れを繰り返してる。
こいつは俺と違ってできる男だ。
こいつの家は貧乏でハングリー精神が半端じゃなかった。運動もできる、頭も決して悪いほうじゃない。
親父がDVをしていたせいでそのせいか俺が何度も挑戦して合格できなかったレンジャー徽章を手に入れやがった。さらに現役の曹長である。
俺が店長でこいつが曹長ってシュールすぎるネタも数年前から飽きたネタである。
可愛い奥さんと四人の子供に恵まれて順風満帆の生活。大して俺には妻子はおろか彼女いない歴が自己年齢で更新し続けている。ついでに今年で魔法使い歴20年だぜ!おい!
悔しいけど俺はいつもこいつの陰にいる・・・悲しくなるから考えないようにしよう。俺はある程度幸せだ。
2038年7月30日T島西の島南方のバロウズマートT島店
次回の更新は、半年後ぐらいかな?細かく刻みながら毎月一話かけたらいいなと考えいます。