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「柚葉~っ、聞いてー!!」
「ん~?どうしたの、みーちゃん」
昼休み。
給食の片付けもすっかり終わった教室で、ボンヤリ考え事を
していると、昼休み始まりのチャイムが鳴ったとき、
教室から急いで出て行った、みーちゃんが戻ってきた。
「さっきね、三木君に告白したら……OKもらっちゃったの~っ」
「おー!!良かったじゃん!!」
みーちゃんはニコニコと満面の笑みで、キャーキャー言っている。
……こんな光景を、入学してから今日まででいったい何回見たこと
だろう。
みーちゃんはずいぶんな恋愛体質で、すごく惚れやすく、イケメンなど
にもすぐ食いつく。
だけど、一回一回の恋は長いと言えるものはなく、早いときは付き合ってから
2週間で別れたこともあった。
そんなみーちゃんの今度のお相手の三木君は、隣のクラスの人で
これがまた結構なイケメン。
3日前くらいから、みーちゃんは気になってたらしく、
すぐ告白して、すぐOkをもらってきた。
(好きになってすぐに告白に移せるっていう、行動力には
脱帽するけど……)
「それでね、今度バスケの試合があるから、応援に来てくれ
だって!!チョー嬉しい!」
「おー、いいじゃんいいじゃん」
「で、1人で行くのもあれだし……柚葉、ついて来る気ない?」
「え~、嫌だよー。カップルの邪魔したくないし……」
(どうせ、僕がいても2人の世界に入るくせに……)
ハッキリ言って、こういう誘いは苦手だ。
恋をしている女の子って、すごくキラキラしてて良いな~って
思うけど、僕をそれに巻き込むのはやめて欲しい。
「え~!!ついてきてよぉ」
と、みーちゃんが言うと同時に予鈴が鳴った。
みーちゃんは納得がいかないような顔をしていたが、
渋々自分の席へと向かっていった。
のんびりとした、社会科教師の声が教室に響きわたり
昼下がりの教室がゆるい雰囲気に包まれる。
この教師の声はたいへん独特で、ひどく眠気を誘う。
チラリと辺りを見回すと、居眠り男子が3人(あ、女子1人)。
真面目に授業を聞いている人は、何人もいなさそうだ。
かく言う僕も、あんまり真面目に聞いているとは
いえないと思うけども。