第1話 この人は、誰なんだ?
原リクは、どこの教室にもいるような目立たない高校生。
漫画をこよなく愛する陰キャオタク。
毎日のように漫画を読み、物語を考え、アマチュアの漫画原作やライトノベルを書こうとしたり、アニメを観たりしている。
その中でも、彼が一番好きなのはやっぱり――漫画だった。
しかし、ひとつ大きな問題がある。
リクは女の子と話すのがとても苦手だった。
静かで平和、だけど少しだけ寂しい。
そんな高校生活を送っていた。
しかし、ある夜。
彼の運命は変わる。
帰り道でリクは、夜道で一人泣いている謎の大人の女性と出会った。
どこか悲しそうで、世界に絶望しているような表情の彼女は、
去り際に小さなお菓子をリクへ渡す。
そのお菓子を食べた日から――
リクの中で何かが少しずつ変わり始めた。
今までなかったはずのもの。
女の子と話す勇気。
リクは少しずつ人と関わり、女の子たちの悩みや恐れを知りながら、
自分の「青春」をやり直していく。
だけど、ひとつだけ問題がある。
リクは、あの夜に出会った女性のことを忘れられない。
彼女はいったい誰だったのか。
なぜ泣いていたのか。
そして――あのお菓子の本当の意味とは。
もしかするとリクは、
人間ではない誰かに恋をしてしまったのかもしれない。
これは、少し臆病なオタク少年と、
世界を見守る謎の女性が繋ぐ――
不思議で優しい学園ラブコメ。
= この人は、誰なんだ? =
あの夜、僕は広島の街を、肩をすぼめ、思考を漂わせながら歩いていた。空虚な人生のメランコリー……なあ、それは本当に、抱えるのが難しい重荷なんだ。正直に言って、「永遠の童貞」であること、女の子たちに存在すら認識されないような奴でいることには、もう疲れ果てていた。うどん屋から出たばかりで、熱い出汁の味がまだ舌先に残っていたけれど、僕はいつもの家路を辿っていた。
僕は高校一年生。クラスの中で完全に浮いているわけじゃないけれど、いわゆるスクールカーストの中では、ただの**「モブ」――背景の一部に過ぎない。女子たちは僕を明らかな軽蔑の目で見ているか、よくても、夜の寒さよりも突き刺さる「同情」の目を向けてくる。僕の「コミュ障」**もまた、乗り越えられない壁だった。自己啓発本を読み漁り、鏡の前で会話の練習もした……けれど、「本番」になると、いつも臆病風に吹かれてしまい、天気の話すら切り出すことができないんだ。
自己嫌悪に溺れながらジャケットを整えていた時、奇妙な光景が目に入った。街灯の青白い光の下、歩道の端に一人の人物が寂しげに座っていた。隙のない黒いスーツを着て、顔を完全に隠すような帽子を被っている。ぶつぶつと独り言を言っているのか、それとも……泣いているのか? この距離では、夜の霧のせいで確信が持てなかった。
心臓の鼓動が早まるのを感じながら、僕は近づいた。冷たい光の下、それが「人」であることは間違いなかった。それにしても、こんな時間に、こんな格好で、こんな表情をしている人間が他にいるだろうか? 距離を縮めるにつれ、最初の恐怖は現実のショックへと変わった。その人は、本当に泣いていた。
しかも、僕にとって事態はさらに深刻だった……それは、女性だったんだ! 肩にこぼれる髪の毛と、スーツの生地の下にある繊細な体のラインで分かった。
どうする?! どうするんだ、陸?!
何か声をかけるべきか? 最悪の場合、何が起こる? 何が僕を止めているんだ? 学校での僕の最大の恐怖は、無視されること、恥をかくこと、あるいは女子のグループで笑い者にされることだ。もしそんなことが起きたら、翌日教室に足を踏み入れる勇気なんて、きっと僕にはない。でも、ここは……夜の道で、僕一人だ。この人のことは知らない。家もすぐそこだ。この暗闇の中で、一体どんな悪いことが起こるっていうんだ?
勇気が必要だ。ただの質問じゃないか、陸。たった一つの、質問だ。
僕は残された自尊心の欠片をかき集めた。彼女はそこにいて、頭を下げたまま、静かな通りにすすり泣く声を響かせていた。
「こ、こんばんは……あ、あの……な、なにか困ってることが……あ、ありますか? お、お手伝い……できますか? 僕は……原陸といいます」
言えた! ついに、僕は女の子に話しかけることができたんだ! その瞬間、誇らしい気持ちが全身を駆け巡った。答えが返ってくるのが怖くて、青菜に塩みたいに震えていたけれど。時間は引き伸ばされたように感じ、一秒一秒が永遠のように思えた。そして、泣き声が止まった。
「こんばんは……私は大丈夫よ。ありがとう、原くん。名前は星神沙那というの。今はただ、少し寒くて……。私が抱えている他の痛みは、そうね、私自身にしか癒せないものだから」
彼女の声を聞いた瞬間、僕の中の混乱はすべて消え去った。彼女は絶対的な平穏、どこか超自然的なオーラを放っていた。彼女の顔はまだはっきりとは見えなかったけれど、僕の意識は一つのことに集中していた。僕は本能のままに彼女に近づき、隣に腰を下ろした。
「こ、これ、僕のジャケットを使ってください、星神さん。大したものではないけれど、今の僕に提供できるのはこれくらいだから。……あの、よければ僕の家に来ませんか? すぐそこなんです。僕の両親と一緒に、ここよりは力になれると思います」
僕は話していた! 自然に話せていたんだ! 鏡の前での練習が、ついに実を結んだようだった。けれど、内側ではボロボロだった。背中を冷や汗が伝っていた。
彼女は顔を上げた。細い輪郭に、小さな目。けれど、あまりにも……深くて、胸が痛くなるような美しさを持った女性だった。彼女は涙を拭うと、優しい微笑みを浮かべ、ジャケットを受け取ってスーツの上に羽織った。
「あなたはとても親切ね、知っている? いくつなの?」
「じゅう、16歳です、星神さん!」
僕は飛び上がるように答えた。声は思っていたよりも大きく出てしまい、まるで兵士の叫び声のようになってしまった。
彼女は笑った。初めて、その顔に心からの笑顔が灯るのを見た。
「そう、原くん。このジャケット、数日後に返してもいいかしら?」
思考が真っ白になった。完全に忘れていた。ジャケットを貸せば、当然返してもらわなければならないということを! アニメの主人公のような「正解のセリフ」なんて出てこなかった。代わりに、僕はパニックに陥った。
「ど、どうやって?! いや、その……どこで僕を見つけるんですか? それとも僕があなたを見つけるの? どこで? 住所も知らないし、それに……」
彼女は僕の言葉を遮った。愛おしそうに、僕の腕を掴んだ。その感触は軽かったけれど、全身に電気が走ったようだった。
「大丈夫、私があなたを見つけるから。……さあ、手を出して」
手を出して? 何のことだ? 文脈もなく、唐突な要求だった。けれど、僕は迷うことなく彼女に手のひらを差し出した。彼女はその上に、手作りの菓子を置いた。青みがかった、少し透き通るような菓子で、包装紙はどこにもなかった。
「家に帰ったら食べてみて。私が作ったの。きっと気に入るわ……。それと、怖がらないで。原くん、あなたの『恐れ』は私にも見えているけれど、あなたはとても優しい魂を持っている。私たちが生きているこの世界には、あなたのような人が必要なのよ。これは私の感謝の印。ジャケットは、必ず返しに来るわね」
言葉を失った。足がゼリーみたいに力が入らなくなった。人生でこんなに褒められたことなんて、誰からも、どこでもなかった。僕はただ、男物のスーツに僕のジャケット、そしてあの奇妙な帽子を被って歩道に座る彼女の姿を、ただ呆然と見つめていた。
彼女は僕の魂を読み取るかのようにじっと見つめ、こう言った。
「怖がらないで、安心して食べていいのよ。次にジャケットを返しに来る時は、もっと持ってくるわね。とても美味しいの。でも、次に会った時には、あなたの口からどれだけ美味しかったか聞きたいわ。いいかしら?」
彼女は立ち上がった。僕は恐怖と、今まで感じたことのない高揚感の間で揺れ動きながら、凍りついたままだった。彼女はもう一度僕の手に触れ、こう言った。
「行くわね。お帰りなさい、原くん。お菓子を食べるのを忘れないで」
彼女は背を向け、闇に沈んだ道を歩き始めた。僕は何とか送っていくと口にしようとしたけれど、彼女は顔だけをこちらに向け、微笑んで手を振っただけだった。彼女には何か厳かな、神聖なものさえ感じられた。まるでミステリアスな天使のようだった。
止まっていたことにさえ気づかなかった呼吸が、ようやく正常に戻った。衝撃と混乱は消え、代わりに圧倒的な気恥ずかしさがこみ上げてきた。あんなに上手くいっていたのに……最後で固まってしまった。自分の手を見ると、青みがかった長方形の菓子があった。それをポケットにしまい、僕は足を早めた。広島の夜風は、本当に切り裂くように冷たかった。
家の玄関に着き、入り口の黄色い明かりの下で、僕はポケットから菓子を取り出して見つめた。
本当に、これを食べるのか? もし毒だったら? もし具合が悪くなって病院行きになったら? なんで包装がないんだ?
食べるべきか、食べないべきか。
僕はドアの前で、世界が息を止めたかのような静寂の中、その神秘的な青い長方形を見つめたまま立ち尽くしていた。
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この物語を読んでくださって、本当にありがとうございます。
私はブラジル人の作家で、現在も日本語を勉強しています。そのため、文章の中に日本語の表現や書き方の間違いがあるかもしれません。もしそういう部分があれば、心からお詫びいたします。
それでも、読者の皆さんに楽しんでもらえる物語を書けるよう、これからも一生懸命努力していきます。
私は日本の文化と日本の皆さんにとても大きな敬意を持っています。
皆さんは本当に素晴らしいです。
読んでいただき、ありがとうございます。




