エピソード《2》「ミヒちゃんが来た。」
「ピンポ~ン」
「少々お待ちください。」
「サワダ・ヨシキさんですか?」
「そうですが。」
「ペルファムS3000のお届けです。」
「ミヒちゃんだ。」
「こちらにスマホをお願いします。受け取りの確認です。」
「いいんですか、胸のところですけど。」
「はい、どうぞ。」
「では。」
「上がってもよろしいですか。」
「あ、上がるのね、どうぞ、どうぞ。」
「よろしくお願いいたします。私が、ペルファムS3000です。初期化するために、私に名前を付けてください。」
「初期化ね、名前は、ミヒちゃんがいいな。ミヒちゃんは一人で来たの?」
「はい、私は、配送先に指定された住所に、最寄駅から自ら歩いてきました。素敵な名前をありがとう。」
「そうなんだ。」
「はい、工場から出荷されると、私は、自ら情報を集めて、届け先まで、移動するように設定されています。」
「ミヒちゃん、よろしくね。」
「ミヒですね。右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「胸のここかな。」
「手のひらの生体認証になります。」
「じゃ遠慮なく。」
ピッ
「気持ちいいです。」
「オ~ィ、気持ちいいんだ~。」
「初期化しました。私をミヒと呼んでくださいね。ご主人様。」
「よくできているなぁ。」
「よくできているというご感想ありがとうございます。ご主人様とお呼びしてよろしいですか。」
「ご主人様かぁ。」
「『ご主人様』でよろしければ、右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「ご主人様じゃなくて、ヨシキがいいなぁ。」
ピッ
「ねえ、ヨシキさんの仕事は何。」
「仕事は、ユーチューバーなんだけど。」
「ヨシキさんは、ユーチューバーですね。それは、頼もしいです。」
「あのさ、ヨシキさんじゃかた苦しいので、ヨシキで。」
「かしこまりました、ヨシキ。」
「私は、コンビニと連携していますので、買い物をすることができます。何か、食べたいですか。何か、飲みたいですか。納品されて30日間のお買い物は、ポイントが10倍になります。」
「買い物してくれるんだね、とりあえず、今はいいかな。」
「コンビニは、いいということですね。ヨシキ。」
「そうね。」
「登録されているクレジットカードでコンビニ決済できますので、いつでも言ってくださいね。ヨシキ。」
「わかりましたよ。」
「ヨシキの音声を認識しました。右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「胸のところね、はい。」
ピッ
「さてと、ミヒちゃん、疲れていると思うので、少し休んだらいいんじゃない。」
「ヨシキ、電源について、マニュアルの35ページに記載されていますので、読んでくださいね。」
「オッケー。」
「ヨシキが、こうしてほしいって言えば、それに従うわ。」
「じゃあ、ベッドの上でくつろいだらどうかな。」
「そうするね。ヨシキ。よいしょ、よいしょ。」
「おいおい、パンツ丸見えだよ。」
「ヨシキは、エッチなの。」
「いや、そういうんじゃなくてさ。普通普通。」
「男の普通って、普通じゃないよね。ヨシキ。」