エピソード《1》「ユキちゃんが来た。」
「ピンポ~ン」
「はい、は~い」
「サカモト・ユウヤさんですか?」
「ええ、何?」
「ペルファムS3000のお届けです。」
「おっ、来たね。」
「こちらにスマホをお願いします。受け取りの確認です。」
「えへ、そこ胸じゃん。」
「はい、どうぞ。」
「え、じゃあ。」
「上がってもよろしいですか。」
「はいはい、どうぞ。」
「よろしくお願いいたします。私が、ペルファムS3000です。初期化するために、私に名前を付けてください。」
「あそうなんだ、君がペルファムかぁ~。よくできてるねぇ。
ん~そうか、名前か、考えていなかったけど・・・
ところで君は一人で来たの?」
「はい、よくできているというご感想ありがとうございます。
私は、配送先に指定された住所に、最寄駅から自ら歩いてきました。
素敵な名前を付けてくださいね。」
「自分で来たんだ。」
「はい、工場から出荷されると、私は、自ら情報を集めて、届け先まで、移動するように設定されています。」
「名前は、じゃあ、ユキちゃんが、いいかな。」
「ユキですね。右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「おほほ、そこ、パイオツだってーの。」
「手のひらの生体認証になります。」
「じゃ遠慮なく。」
ピッ
「気持ちいいです。」
「あえ~~~、そうなの。」
「初期化しました。私をユキと呼んでくださいね。ご主人様。」
「うぉ、すげえなぁ。おい。」
「ご主人様とお呼びしてよろしいですか。」
「あそうねぇ、ちょっとあれなんで、『ユウヤ』でいいかな。」
「『ユウヤ』でよろしければ、右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「また、それなんだ。じゃあ。パイパイに。」
ピッ
「ねえ、ユウヤの仕事は何。」
「仕事?仕事は、そうだなぁ、どう表現したらわからないので、え~、会社経営者でいいかな。それと、まだ、初対面なので、ユウヤさんがいいなぁ。」
「ユウヤさんは、会社を経営しているんですね。それは、頼もしいです。」
「あのさ、やっぱユウヤさんじゃなくて、ユウヤでいいよ。」
「かしこまりました、ユウヤ。」
「私は、コンビニと連携していますので、買い物をすることができます。何か、食べたいですか。何か、飲みたいですか。納品されて30日間のお買い物は、ポイントが10倍になります。」
「う~ん、いや、とりあえず冷蔵庫に入っているし、いいかな。」
「コンビニは、いいということですね。ユウヤ。」
「うん、まあね。」
「登録されているクレジットカードでコンビニ決済できますので、いつでも言ってくださいね。ユウヤ。」
「オッケー、オッケー。」
「ユウヤの音声を認識しました。右のコンソールデバイスにタッチしてください。」
「あ、それね、じゃあ。」
ピッ
「あ、えーっとさ、ユキちゃん、少し休んだら。」
「ユウヤ、電源について、マニュアルの35ページに記載されていますので、読んでね。」
「まいいか、距離感がよくわからんけど。」
「ユウヤが、こうしてほしいって言えば、それに従うのよ。」
「そういうことか~。あのさ、とりあえずベッドの上でくつろいでよ。」
「じゃあ、そうするね。ユウヤ。よいしょ、よいしょ。」
「パンツ見えてんじゃん。」
「ユウヤは、エッチなの。」
「そ~んなこたぁ~ねえけどなハハ。普通だよ。」
「男の普通って、普通じゃないよね。ユウヤ。」