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第七章 記録の継承
私は羊皮紙にペンを走らせ、インクを垂らしながら彼女のすべてを記する。
彼女の笑顔、涙、怒り、孤独。
そして誰も知らなかった、彼女の優しさを。
それを新聞に載せてもらうと、数日後、若い少女が屋敷を訪れた。
「ヴェルナ様のことを教えてください。私は彼女の物語を小説にしたいんです」
私は彼女にヴェルナ様の日記を渡す。
「一つだけ条件があります。ヴェルナ様のことを“悪役”として描かないこと。彼女はただの少女だったと、書いてほしい」
少女はうなずく。
「はい。わかりました」