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第六章 執事の決意
ヴェルナ様は昏睡状態になる。
医者たちは「回復の見込みは薄い」と言った。
王家は彼女の婚約を破棄し、家は没落の道を歩み始める。
失意の中、私は彼女の部屋の机の引き出しを開けた。
中には日記が一冊だけ。
小さな花の刺繍が施されている表紙を開くと、最初のページにこう書かれている。
私は悪役になりたくてなったわけじゃない。
ただ誰かに愛されたくて、認められたくて必死になっただけ。
でも世界は私に“悪役”の役を押しつけた。
ならば最後までその役を演じよう。
そうすれば、少なくとも誰かの記憶には残るだろうから。
私はその日、決意した。
物語を書き換える。
真実を誰かに伝える。
たとえ私が“邪魔者”と呼ばれても。