表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の執事  作者:
5/8

第五章 崩れる世界


 王宮の舞踏会の夜。

 ヴェルナ様は白いドレスを翻しながら、会場へ入った。

 けれど人々の視線は彼女ではなく、グレース殿下に集まっている。

 そんなこと気にも留めず、ヴェルナ様は給仕からグラスを受け取り、注がれたシャンパンに口をつけた。

 その瞬間──彼女の手が震えだす。


「アレクシス……私……声が出ない……胸が……」


 みるみる内に彼女の顔色が青ざめていった。

 毒だ。

 倒れるヴェルナ様を私が受け止めると、舞踏会場に居る人々は騒然とし始める。

 グレース殿下がこちらへと駆け寄り、涙を流してヴェルナ様を抱きしめた。


「ああ……ヴェルナ姉様! どうして……!」


 じつはグレース殿下は、ヴェルナ様とは幼い頃から姉のように慕っていたのだ。

 だから、私にはその涙は本物に見える。

 だが、誰もがこう言った。


「またヴェルナ嬢が同情を集めようとしている」

「演技だ。注目を集めたいだけ」


 私は叫びたかった。


 違う!

 彼女は──!


 だが、声は出せなかった。

 物語はすでに彼女を「悪役」と定めている。

 真実など、どうでもよかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ