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影の執事  作者:
2/8

第二章 記憶の断片


 ある雨の夜、私は彼女が屋敷の裏庭で泣いているのを見かけた。

 十五歳のまだ少女と呼べる年頃。

 雷鳴が空を裂き、彼女は膝を抱えて蹲っていた。


「どうなさいました? お嬢様」

「……お父様がまた婚約を決めたの。それもグレースの兄君とよ。政略婚。私の意思なんてどこにもない」


 彼女の声は雨に掻き消されそうだ。


「でもお嬢様は王太子殿下のことを……」

「好きだった? そうね。好きだったわ。でも貴族の娘に恋愛なんて贅沢よ。ましてや王家と敵対する家系の娘が、王太子に想いを寄せることなんて──罪よ」


 私は黙って傘を差し出した。

 彼女はそれを受け取りもせず、ただ雨空を見上げている。


「アレクシス、あなたは私のことをどう思う? 悪役令嬢? 傲慢な貴族の娘?」

「私は、お嬢様がお嬢様であることをただ信じております」


 彼女はその言葉にわずかに笑った。

 悲しげな、でもどこか救われたような笑みだった。


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