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5. エピローグ
数ヶ月後。
晴れ渡る空の下、ワタシは玄関の前に立っていた。
「博士、やはりお手伝いしましょうか?」
手すりに捕まり、姿勢を整えながら博士は言う。
「だい…じょうぶ!今日までいっぱい練習したんだから」
機械で作られた脚。
彼女は今自分の力で、自分の”脚”で歩こうとしている。
「いくよ…」
ゆっくりと手すりから手を離し、立ったままの姿勢を維持する。
そして一歩、また一歩とワタシの方へ脚を進める。
「博士、もう少しです。ここですよ」
「うん…うん!」
向かってくる博士を受け止めようと、ワタシは腕を大きく広げる。
「あと……少し!」
残り3歩、外の世界への出口は目前。
「うんしょ!」
残り2歩。
「よいしょ!」
残り1歩。
その時、博士が脚をピタリと止める。
「博士?」
「アダム…」
「……やはりまだ外の世界に出るのは」
「そうじゃ……ないの」
息を切らしながら彼女は言った。
「あなたに…言わなきゃいけないことがあるの」
「え?」
次の瞬間彼女は地面を蹴り、ワタシに抱きついてこう言った。
「お出かけしよう!二人で!!」
fin