第3話:月の塔を登れ――記憶の書と、かつての私
今回は「月の塔」で、かぐや姫の記憶と向き合う試練です。
第3話:月の塔を登れ――記憶の書と、かつての私
「見えてきました。あれが“月の塔”です」
ミツキが指差した先に、月面には不釣り合いなほど巨大な塔がそびえ立っていた。まるで地球に向かって手を伸ばすように、静かに、しかし確かに存在している。
「……あれ、登るの?」
「はい。塔の最上階には“月の書”が保管されています。それは、かぐや姫――あなたの前世の記憶を封じた書物です」
「前世の……私?」
「記憶を取り戻すことで、地球への帰還方法が明らかになるかもしれません」
私は深呼吸をして、塔の入り口に足を踏み入れた。
塔の内部は、まるで時が止まったように静かだった。壁には月の民の文字が刻まれ、階段は重力の影響か、ふわりと浮かぶように登れる。
「……なんか、懐かしい気がする」
「それは記憶が呼び覚まされている証拠です」
階を登るごとに、私は断片的な映像を見るようになった。
――白い衣をまとった少女が、地球を見上げている。
――月の民たちが、地球との交信を断たれ、絶望している。
――そして、少女は一人、地球へと旅立つ決意をする。
「これ……私?」
「はい。あなたはかつて、地球と月の架け橋となるために旅立った“初代かぐや姫”です」
「でも、どうして……また月に?」
「それは、あなた自身の記憶に答えがあります」
最上階にたどり着くと、そこには一冊の本が浮かんでいた。表紙には、月の紋章と、私の名前――“竹野かぐや”が刻まれていた。
私はそっと手を伸ばし、“月の書”を開いた。
次回予告
記憶が蘇るとき、真実が明らかになる。
かぐや姫はなぜ地球を離れ、なぜ再び月に転生したのか――
次なる試練は「月の記憶を受け入れよ」。