第1話(続き):月面で目覚めた私と、謎のウサギ型AI
第1話(続き):月面で目覚めた私と、謎のウサギ型AI
「酸素の確保って、どうやって?」
私は辺りを見回す。灰色の岩、クレーター、そして遠くに光る何か。
「まずは、近くの“月の泉”を目指しましょう。そこには酸素を生成する“ルナ・モス”が生息しています」
「モスって、苔? 月に苔が生えてるの?」
「はい。月の民が遺したバイオテクノロジーの産物です。光合成で酸素を作り出します」
私はミツキに導かれ、重力の軽い月面を跳ねるように進んだ。地球では考えられないほど体が軽い。まるで夢の中を歩いているようだった。
「……あれが“月の泉”です」
クレーターの底に、淡く光る水面が広がっていた。水の中には、青白く光る苔のような植物が揺れている。
「このルナ・モスを採取し、あなたのスーツに組み込めば、一定時間酸素を供給できます」
「スーツって、これ? ただの白い服かと思ってたけど……」
ミツキがスーツの胸元を開けると、内部には小さなバイオカプセルがあった。そこにルナ・モスを入れると、スーツが微かに光り始めた。
「これで、しばらくは呼吸が可能です」
「……すごい。なんか、SF映画の主人公みたい」
「あなたは主人公です、かぐや様。地球に帰るための物語の」
私は深呼吸をした。月の空気(?)が、ほんの少しだけ、甘く感じた。
次回予告
次なる試練は「月の影を越えよ」。
そこには、かつて地球を憎んだ月の民の亡霊が眠っているという――。