剣聖? いえいえ、剣を杖代わりに使っているだけなんですが――
その日、俺――リオ=グランティスは、魔術師として人生最大の分岐点を迎えていた。
「お前さぁ、魔法って、なんかこう……地味じゃね?」
そう言い放ったのは、俺の師匠、アリステア=フェンブラム。
王都でも五指に入る魔術師なのに、なぜかいつも笑いながら無茶ばかり言ってくる変人である。
そして、俺は今、その変人の前で困り果てていた。
「師匠……何度も言ってますけど、魔法は繊細な術式構築と精神集中が――」
「いや違うって。お前の魔力さ、繊細に扱ったら逆に不安定になるんだよ」
「だからって剣で魔法を撃てって、無茶すぎません!?」
俺の手には、長剣。
本来なら剣士が使うはずのそれを、師匠は「杖の代わりに使え」と言い張ってきた。
「いいじゃん、剣で魔法撃つとか。浪漫!」
「師匠、それはロマンであって、理論じゃない……」
だけど、アリステア師匠は真剣な顔で言った。
「リオ、お前の魔力は普通じゃない。杖じゃ流しきれない。だから“出力制御”のためにあえて鉄を通せ。剣身が抵抗になって、魔力が安定する」
「……それ、学会で発表したら怒られるやつでは?」
「うん。だから発表してない。お前だけに教える、禁断の奥義だ」
禁断って自分で言ったなこの人。
でも――俺もわかっていた。
普通の魔法の打ち方では、俺の魔力は制御できない。
それでも諦めきれず、俺は魔術師を目指してきた。
「剣を杖に……か」
重みのある剣を両手で構える。
魔術師が扱うにはあまりに武骨で、不格好な代物。
だが、確かに手の中に収まるそれは、杖よりも――何かしっくり来る感触だった。
「いけるかもな……」
そして、次の瞬間――
「《フレイム・ブラスト》!!」
俺は咄嗟に剣を振り下ろした。
ズガァァァァァン!!
周囲の地面が爆発四散した。
魔法が、剣から放たれた――それも、明らかに規格外の火力で。
「う、うそだろ……マジで撃てた……!」
剣の先から吹き出した火柱は、訓練場の模擬岩を余裕で粉砕していた。
それは、確かに“魔法”だった。
「……これ、魔術師として誤解されないですかね?」
俺は――“剣で魔法を撃つ魔術師”としてやっていく。
そしてこの選択が、後に王国中の魔術師や剣士、貴族や王族までも巻き込む大騒動になるとは――このときの俺はまだ、知る由もなかった。
「お前さぁ、魔法って、なんかこう……地味じゃね?」
そう言い放ったのは、俺の師匠、アリステア=フェンブラム。
王都でも五指に入る魔術師なのに、なぜかいつも笑いながら無茶ばかり言ってくる変人である。
そして、俺は今、その変人の前で困り果てていた。
「師匠……何度も言ってますけど、魔法は繊細な術式構築と精神集中が――」
「いや違うって。お前の魔力さ、繊細に扱ったら逆に不安定になるんだよ」
「だからって剣で魔法を撃てって、無茶すぎません!?」
俺の手には、長剣。
本来なら剣士が使うはずのそれを、師匠は「杖の代わりに使え」と言い張ってきた。
「いいじゃん、剣で魔法撃つとか。浪漫!」
「師匠、それはロマンであって、理論じゃない……」
だけど、アリステア師匠は真剣な顔で言った。
「リオ、お前の魔力は普通じゃない。杖じゃ流しきれない。だから“出力制御”のためにあえて鉄を通せ。剣身が抵抗になって、魔力が安定する」
「……それ、学会で発表したら怒られるやつでは?」
「うん。だから発表してない。お前だけに教える、禁断の奥義だ」
禁断って自分で言ったなこの人。
でも――俺もわかっていた。
普通の魔法の打ち方では、俺の魔力は制御できない。
それでも諦めきれず、俺は魔術師を目指してきた。
「剣を杖に……か」
重みのある剣を両手で構える。
魔術師が扱うにはあまりに武骨で、不格好な代物。
だが、確かに手の中に収まるそれは、杖よりも――何かしっくり来る感触だった。
「いけるかもな……」
そして、次の瞬間――
「《フレイム・ブラスト》!!」
俺は咄嗟に剣を振り下ろした。
ズガァァァァァン!!
周囲の地面が爆発四散した。
魔法が、剣から放たれた――それも、明らかに規格外の火力で。
「う、うそだろ……マジで撃てた……!」
剣の先から吹き出した火柱は、訓練場の模擬岩を余裕で粉砕していた。
それは、確かに“魔法”だった。
「……これ、魔術師として誤解されないですかね?」
俺は――“剣で魔法を撃つ魔術師”としてやっていく。
そしてこの選択が、後に王国中の魔術師や剣士、貴族や王族までも巻き込む大騒動になるとは――このときの俺はまだ、知る由もなかった。
第1話「師匠の無茶振り『剣で魔法を撃て』」
2025/07/01 08:10
第2話「剣を杖代わりに、学院入学」
2025/07/02 08:10
(改)
第3話「『剣士』扱いでからかわれる日々」
2025/07/03 08:10
第4話「魔術の授業で事故レベルの爆発」
2025/07/04 08:10
第5話「嫌われ者扱いと孤立」
2025/07/05 08:10
第6話「合同演習試験、上級生の視線」
2025/07/06 08:10
第7話「“落ちこぼれ”が一矢報いた日」
2025/07/07 07:10
第8話「学院上層部の動きとスカウトの影」
2025/07/08 08:10
第9話 平民のくせに
2025/07/09 08:10
第10話 学園から退学させられ追放される
2025/07/10 08:10
第11話 旅立ちの魔導刻印剣《フェル=グレイヴ》
2025/07/11 08:10
第12話「自由都市の朝と、新しい名乗り」
2025/07/12 08:10
第13話「剣士、代理加入」
2025/07/13 08:10
第14話 雷閃の剣聖の誕生
2025/07/14 08:10
第15話 雷閃の剣聖、都市に響く
2025/07/15 08:10
第16話 リオ、レッドドラゴンとの死闘
2025/07/16 08:10
第17話 テッサロ王国の王ピレウス三世、リオを欲する
2025/07/17 08:10
第18話「使者となるは、かつての異端」
2025/07/18 08:10
第19話「師弟の再会と、届いた影」
2025/07/19 08:10
第20話「劣等生のくせに――」
2025/07/20 08:10
第21話「奢りの代償、そして蠢く災厄」
2025/07/21 08:10
第22話 ヴァルト=シュナイダー断罪される
2025/07/22 08:10
(改)
最終回 リオ、すべてを解決する。
2025/07/23 12:55