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闇短編シリーズ(※バッドエンド注意)

三日月夜

作者: 南田 此仁

 常識、倫理、道徳、何もかも都合のいいこじつけに聞こえる。意識の端にちらつくすべてが目ざわりで、耳ざわりで。

 けれど君の愛する世界なら、それは大切なものだろうと思えたんだ——。



 おかしいだろう。

 朝日も月光もうんざりするほど目にしてきたというのに。

 ふらりと出かけた夜の散歩で、君と出逢って初めて『光』を見た気がしたんだ。


 あの日から——君の光は、俺の世界のすべてになった。




「この花は月下美人っていうの。私、この花が一番好きよ。静かに夜に寄り添っているみたいで」

 ああ、ならば踏み潰さぬよう、君のように大切にしよう。


「気持ちのいい夜ね。満月の夜は聖なる力が満ちるのを感じるわ」

 そうか、君を笑顔にできる満月とはなんと素晴らしいものだろう。


 君の魂は何よりも美しく、清浄で、近寄りがたいほどに眩しくて。

 そんな君の愛する『世界』もきっと、美しいものなのだろうと信じて疑わなかった。




 愚かな俺は気付かなかった。


 俺を魔王と呼び畏怖する人間たちが、聖女を生贄(いけにえ)に選んだことも。

 素晴らしい夜の記憶を抱いて眠る間に、俺の棲み処目掛けて崖の上から彼女を投じられたことも。


 物音に気付き目を開けたときには、すべてが終わっていた。



 ——そして、すべてを終わらせた。







 ああ、世界は君のために存在したのに。


 果てのない静寂。

 月下美人と見上げた夜には、二度と満ちることのない月が(わら)っていた——。





活動報告にイメージ画をアップしました。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 600字ないのに濃密……! [一言] グッと胸を掴まれグラグラ揺らされました。
[一言] ちゃんと欲しいもの聞かないから…(இ௰இ`。)人間酷い
[良い点] うわあああ、めちゃくちゃ好き! 切ない……切なすぎる……。 めちゃくちゃよかったです。
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